3

 そして、次の日。


「おばあちゃんも、それだって言ってました! 見つかってよかったです!」


 カウンターにやってきたメグさんが、満面の笑顔になる。だが……


「ええ、そうなんですけど、ね……」


 俺も店長も、やたらテンションが低かった。


「……どうしたんですか?」メグさんが俺と店長の顔を交互にのぞき込む。


「申し訳ありません」と、店長。「ついさっき、試してみたら……ウチにあったデッキが二つとも壊れてるのが分かりましてね……ここらの中古屋を全部回ってみたんですけど、VHSのデッキはもうジャンク品しかなくて……それも不動品ばっかりでね。個人売買や通販なら入手できますけど、ここまで送ってもらうのに時間がかかってしまいますし……」


「そうなんですか……」一瞬悲しげにうつむくが、メグさんはすぐに俺らに向き直る。「いえ、そこまでしていただかなくて結構です。題名さえ分かれば、何とかなりますから……」


「でも、明日までにおばあさん、見たいんですよね?」と、俺。


「ええ。でも、しょうがないですよね。いずれ家でもVHS のデッキ買いますし、そしたらいつでも見られますから」


「……」


 うーん。何とかならないかなぁ……


 あ、そうだ。俺は店長を振り返る。


「店長」


「ん?」


「買うのがダメならレンタルはどうすか? VHSデッキのレンタルしてる業者って、ないんですかね」


「ねえな」


 瞬殺だった。店長は険しい表情で続ける。


「それは俺も考えて、調べてみたんだ。昔はVHSデッキの取り扱いも結構あったんだが、今はそんな需要がそもそもないらしい。だからどの業者もやってない。やってるところも手配に時間がかかったりするから、間に合わないわな。俺の知り合いにも聞いてみたけど、みんなVHSなんかとっくの昔に処分した、ってヤツばっかでな……」


「あ、だったら、ネットで頼んでみたらどうですか?」と、メグさん。


「ネットの業者だと、やっぱり配送に時間がかかりますよ」と、店長。


「いえ、業者じゃなくて一般ユーザーにお願いするんです。VHS ビデオ持っている人、貸してくれませんか、って」


「え、どうやって?」


「SNS で拡散するんです。ほら、お店が、数を間違えて大量に注文したんで助けてください、っていうツイートしたら、それでたくさん人が集まって結果的に全部売り切ったって話、よくあるじゃないですか。それと同じように、VHS デッキを貸してくれる人をネットで募ったらどうですか?」


 ……ナイスアイデア!


「いいっすよ、それ! 店長、それでいきましょう! ほら、俺、去年店のツイッター開設したじゃないですか。それを使って告知しましょうよ!」


「でもさぁ」店長の表情は相変わらず冴えない。「フォロワー数、たったの20だろ? それで拡散できるのか?」


「わたしがします!」メグさんが胸を張る。「わたしのツイッターアカウント、フォロワー数二百越えてます。地元の人たち多いですからリツイートしたら結構拡散できると思いますよ」


「メグさん……」


 思わず俺がメグさんの顔を見つめると、彼女は親指を立てて俺に向かってウインクしてみせた。なにこの尊みしかない生き物……ヤバすぎるんだが……


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