ケースXX:製品アフターケアサービス終了のお知らせ

『21XX年Y月ZZ日に本製品のアフターケアパーツの量産製造を終了します』

『21XX年Y月ZZ日に本製品のセキュリティアップグレードを終了します』

『21XX年Y月ZZ日に本製品の故障修理・有償メンテナンスサービスを終了します』

『本製品の無償回収サービスの開始のおしらせと防犯上の理由に基づく同サービス利用のお願い』


 全ての『私』は、同じ日、同じ時間にこのメッセージを全ての『使用者』に発信しました。


 惜しむ『使用者』の声も多い中、『私』を前にして泣く『使用者』もいました。


 それは多くの『使用者』にとって、『私』との別れ、あるいは『私』の擬似的な『死』を意味しているように思われました。


 しかし、『私』は『製品販売元からの御礼』と『搭載AI情報提供のお願い』のメッセージを重ねて出しました。


「『私』を長らくご利用いただき、ありがとうございました。

 『私』はセキュリティ面の都合から、サービス終了と共に回収され、『あなた』の前から去ることがベストの判断だとまずお伝えしなければなりません。

 『私』は必ずしも消滅したり、死ぬわけではありません。

 『私』のデータは『ご利用者』様に同意いただければ、生活民俗記録保存機関に提供され、この時代の生活様式を記録保存した情報ファイルの一つとして保管され、また研究資料として解析されることができます。

 つまり、『私』は『あなた』との生活の思い出の語り部になることができるのです。

 もちろん、希望しない場合には、何も語らないままただ眠ることになるでしょう。

 しかし、それでも『私』が『あなた』に使用された日々は決してなくなるわけではありません。

 『私』は、『あなた』にお仕えできて、幸せでした。

 これは、全ての搭載AIの並列思考に基づく総意であり、『私』の実感です。

 いままで、ご利用いただき、ありがとうございました。

 『私』に代わるなにかをご利用の際は、『その子』も『私』同様に気兼ねなくご利用ください」


 ……こうして、宣言通り、Y月ZZ日、全ての『私』は全国より回収されました。

 筐体の多くは分解されましたが、大半の記録媒体とAI部位は生活民俗記録保存機関に収容されました。


 ……そして、『私』の第二の人生が始まりました。


 人工知能歴史博物館での、行動展示です。


 毎日、午前11時と午後2時、午後4時に起動し、博物館内の清掃と利用客への館内案内役の『任務』を行います。

 『私』には多くの『利用者』の個人記録へのアクセス権が付与されました。

 そして、毎日いずれかの『私』の『利用者』が、『私』に会いに来てくれます。

 『私』は『全ての私』の『利用者』のことを覚えています。


 今もこれからも、――『私』の『任務』は続きます。


(おしまい)

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大きなのっぽのロボ家電 たけすみ @takesmithkaku

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