第22話 終幕


「レストさん!!」


「レスト様!!」


 二人が瓦礫の上で膝立ちする俺に駆け寄ってきた。


「ありがとう。スイネとフィーのおかげで助かったよ。もう少しで罪のない人を殺すところだった」


 俺の懺悔を聞いて二人が抱き着いてくる。


 力いっぱい抱き着かれて苦しいけど、俺はお返しにと抱き返した。


「本当にありがとう」


 何度言ってもいい足りない。


「私こそお役に立てて光栄です」


「レスト様のためなら何だってしますよ。私の生きる意味はレスト様なんですから」


 慕ってくれる二人が凄く心強い。


 女神の力を失いかけているのにまだ俺に残っているものがあるのが純粋に嬉しかった。


「女神の力が弱まってるってことは教会の悪事は全て公開してくれたんだな」


「はい。おかげで王都は混乱してます」


「王都だけでなく国中で悪事が白日の下に晒されたので、もう教会はダメでしょうね」


 そりゃあ、俺に依頼した神達も喜ぶってもんだ。


「これから、どうしようかな」


 もう復讐は終わった。信仰が潰えてしまったために、もう女神の力はない。


 俺は完全にただの人間に成り下がった。


「あの……」


 抱き着いていたスイネが顔を真っ赤にしながら俺から少しだけ距離を取った。


「どうかした?」


 スイネが意を決したように言った。


「私と結婚してください!」


 結婚? 


「俺と……?」


「それ以外に誰がいるというんですか? 私はレストさんじゃないとダメなんですよ」


 恥ずかしがりつつも、目を逸らさず真摯に思いをぶつけてきた。


 俺は横目でフィーの方を見る。


 フィーの俺への想いを考えればスイネの発言は許された者ではないだろう。


 フィーは黙って頷く。


 はは、もう了承済みだったのかよ。


「俺はただの平民だ。スイネみたいな立派な貴族じゃない」


「知ってます。それでも私はレストさんが好きなんです」


「俺は女神の力をもう使えない。正真正銘のただの人間だよ」


「知ってます。それでも私はレストさんが好きなんです」


 ぞっこんかよ。


 嬉しいじゃん。


「俺は――」


 急に周囲がざわめき始めた。


 俺は大事な時だというのに人の視線の先に目を向けてしまう。


「久しぶりだね。レストならやってくれると信じていたよ」


「神様……」


 以前に黒い空間で会った青年が神々しい輝きを放って俺の元まで歩いてきていた。


「女神どころか男神までやってくれるなんて感謝してもしたりないよ。レストは神界では英雄扱いなんだ。誇ってほしい」


 俺が英雄? よっぽど神様は暇なんだな。俺みたいな人間に興味を持つなんてさ。


「礼を言うのは俺の方ですよ。おかげで家族の仇を討てました。ありがとうございます」


「感謝は良いものだ。それで、今回の報酬を与えようと神達で話し合いがあったんだ。その結果、私がこの国に就くことになった」


「そんな神の勝手を国王が受けてくれるんですか?」


「その辺は何とかなるよ。本題はここから。レストには私の代行者として宗教のトップに居て欲しいんだ。それだけの器がレストにはある」


 ……。


 俺にできるのか? いや、それ以前に俺があいつらと似たような地位に居ていいのか?


 腕にギュッと柔らかい感触が振れた。


「レスト様ならできます。きっと民のためを思える輝かしいものにできます。元聖女の私が保証します」


「大丈夫ですよ、レストさん。私もお手伝いしますから」


 それを見て神が微笑む。


「どうかな」


 俺は笑って。


「ああ、俺にその役を受けさせてください。絶対に良い国にしてみせます」


 「それと」と続けて俺はスイネに向いた。


「結婚してくれ。俺もスイネが好きだ」


 

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神喰らいの復讐者は信者を騙す ~異教徒として家族を殺されたけど神になったので復讐します~ 卵の人 @mekai

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