文房具コーナーの試し書きのなか、たったひとつの「ことば」。ペンの試し書きをするための場所。だから、そのことばはそれ以上でもそれ以下でもないだろう――。そうやって見過ごしてしまいがちな誰かのことばを、主人公・花は見つけてしまった。だからペンを取った。
この物語は、日常生活のほんとうにささやかな一場面から物語はスルーする。
返事が返って来た。綺麗な文字に滲む思い。一体、どこの誰? どんなひと? 年齢は? 正体はわからなくても、そのひとが書き残していくことばと、主人公が書き残していくことば。ことばが交差していく先に待っている人とは――。
繊細な心、ピュアな感性。
ボールペン一本で変わる世界。
この小説の「ことば」は画面を越えて、読んでいる者の胸のなかに優しく飛び込んできます。
ひとはひとりで生きているんじゃない。きっと読んだひとの明日また前を向いて生きていくための栄養になる物語だと思います。
未読のかた、よろしければ、さみしさを感じたときに、明日がちょっと怖くなったときに、優しくなりたいときに、読んでみてください。おすすめします。