落ちる私は後悔だらけ

九十九語 矢一

第1話

今、私は空中にいる。

人が飛べるわけもない。飛んでいるのではない。落ちているのだ。


どうやら足を滑らせてしまったらしい。

マンションの40階からの落下だ。きっと一溜りもないだろう。


やり残したことが沢山あるというのに、私は死ぬのか。


まだ昨日のプ〇キュア見てないよ。追加戦士の変身気になるじゃん。


今日の晩ご飯はカレーだっけか。こんなに金持ちでマンションの高層階に住んでいるのにカレーなのかと思うかもしれん。だがな、母のカレーは絶品だ。


先輩に想いを伝えていないじゃないか。死んでもいいから気持ちは伝えたかったな。どうせなら今ここで叫んでもいいな。


いや、やめておこう。マンションから落ちながら気持ちを伝えるなんて馬鹿げたことをしたくない。気持ち悪いだろ、それ。


なんだ、私の人生。こんなものなのか後悔しかしてないじゃないか。なんか神に負けた気がして悔しい。これも後悔に追加だ。


さて、そろそろ地面が近づいてきたな。どうか歩行者には当たりたくないな。私のうっかりで人殺しなんて可哀想だ。そんなことしたらまた後悔が増えてしまう。


おいおい、そこの歩行者が見てるのプ〇キュアだよ。追加戦士の変身シーンだよ。最高だよ。見れたよ。音聞こえないけど。


あ、もう幸せです。


私の意識はそこで絶えた。

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