外がまだ明るいから……
蒲倉との過ちを四羽に知られてしまってから、1週間とちょっとが経った。
あれから四羽とは音沙汰なく、蒲倉とは相変わらずの日々を送っている。
音沙汰はなくとも校内で四羽とすれ違う瞬間はあった。が、すれ違うだけ……目すらも合わせてくれなかった。
変化と言われればそれくらい。学校生活にまでは影響なく、平和に過ごせている事に胸を撫で下ろしている。
四羽と蒲倉のどちらか、もしくはどちらもが過ちを言いふらす……そんな最悪の事態に発展していないからだ。
この先も絶対ないとは断言できないから、油断はできないけど。
「――また明日。蒼紫くん」
「ああ」
そんな今は放課後。胸の前で小さく手を振る蒲倉に俺は短く返し、玄関扉へと手を伸ばす。
「――そう言えば、あの日と同じで雨ですね……今日」
思い出したように言った蒲倉の声にドキリとする。
「……だから、何?」
俺は顔だけを振り返らせ、努めて冷静な態度で蒲倉に聞き返した。
「いえ、何でもないです。それじゃ」
蒲倉が口にしていた〝あの日〟。あの日以降、彼女とこうして一緒に帰る事が多くなった。
『これからは蒼紫くんと毎日一緒に帰りますね!』
『ま、毎日はさすがにちょっと……ほら、蒲倉の帰宅時間にも影響するし、親御さんだって心配するでしょ?』
『私の事なんてそんな……気にしなくていいですから』
『いやいや、ホントに大丈夫だから! 後で問題になられたりしても面倒だから――』
多くなったで済んでいるのは説得のおかげだ。それがなかったら学校がある日はすべて、蒲倉と帰宅する事になっていた。
そりゃ、きっぱり断るのが一番だけども……できれば苦労しないって話であって。
「はぁ……風呂入ろ」
と、俺は強引に切り替え、家の中に。
靴を脱いで鞄を置いて、手洗いうがいよりも先に浴室へと足を進める。
外がまだ明るい時間帯に入る風呂は久しぶりだ。
で、こういう時、いつも思い出すのは子供の頃の冬――雪が降り積もった幻想的な冬だ。
四羽と雪遊びを楽しんで、帰ったら既にお風呂が沸いていて、冷え切った体を芯から温めてくれて、指の先がちょっぴり痛んだりして。
あの幸せな思い出が甦り、冬が待ち遠しくなる。
でも、実際は冬を迎えても『寒い寒い』と文句しか言わないんだけども……。
ピンポ――――ン。
「…………ん?」
来訪を知らせる音が、懐かしさに浸る俺の足を止めた。
女神とまで呼ばれているクラスの女子に好かれてしまったのだが、ヤンデレ要素が満載でもう限界 深谷花びら大回転 @takato1017
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。女神とまで呼ばれているクラスの女子に好かれてしまったのだが、ヤンデレ要素が満載でもう限界の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます