第37話 完結
俺達はヨツキと本当の最後の挨拶をしていた。
「今後はどうする予定なんだ?」
「そうですね。せっかくの自由ですから貴方達と同じ様に旅をしてみて、広い世界を見てみようと思います」
「そっか」
「また、どこかで」
「⋯⋯ああ」
「⋯⋯さようなら、ヨツキさん」
俺達はとある場所に向かって進んで行く。
俺達がヨツキへの返事に間があったのは、もしも目的が終わった後、俺達がどうなるか分からないからだ。
生きる目的が出来るか分からないからだ。
俺と同じ考えを、サナもしているようだった。
俺達が向かったところはクラン、アルティメットバハムートである。
その近くにキンジロウさんが居た。目立つので人に囲まれている。
「やぁ、ユウキ君、サナちゃん」
「うげぇ」
「⋯⋯」
サナがすぐさま俺の背後に隠れ、嫌な顔をする。
それに対して涙目のキンジロウさん。
「どうしたんですか?」
「いや、そろそろ行く頃合いかと思ってね、別れの挨拶をと思って。あの狂人を止めてくれて、本当にありがとう」
頭を下げるキンジロウさん。
「サナがやったんですよ。サナに下げてください」
「サナちゃん⋯⋯」
「嫌だこのおじさんなんか怖い!」
「ふぇ!」
「失礼だろ!」
チョップする。
「ひぷっ。ごめんなしゃい」
「可愛い」
「やっぱ無理ィ!」
そんなこんなで、俺達はクランに入る。
クランに加入するつもりは無い。来た理由はここでしか無いサービスを受ける為である。
ここには飛竜車と呼ばれる飛竜を使って他国へと送ってくれるサービスがある。
空を移動するのでとても速く、危険も少ない。
この付近には飛行生物の魔物は少ないからだ。
俺達の目的地は豊穣の国【カリメア】だ。
山を超えた先にある農業が発展し、豊富な作物が手に入る国だ。
この国とは対極に位置すると言って良い。
森に囲まれた自然溢れる国である。
料理が美味いらしい。
「そこに、居るんだね」
「あぁ。俺達の旅も大詰めだな」
乗るのには金貨30枚必要だった。
簡潔に言おう、流石は殆ど貴族様達が利用するだけの事はある。
移動速度に期待しながら、俺達はカリメアへと向かった。
そして三十分後、俺は狙撃銃を構えて空飛ぶ魔物の鳥に向かって放っていた。
「お客さんありがとうございます! なんでこんなに魔物が多いんだよ!」
飛竜を手懐ける事に成功している唯一のクラン『AB』の運転手が泣き言を言う。
泣き言を言いながらも、飛竜を正確に操りながら、魔法を飛ばしている。
「6時の方向に2体! ⋯⋯重なった!」
「おっけー!」
魔力を流して弾丸を放つ。
体を貫いて、貫通し二体の鳥型の魔物を落下させる。
素材が⋯⋯言っている暇は無さそうだ。
「数が多すぎる。今度はセミオート式狙撃銃の用意も必要だな」
「でも、カリメアって優秀な鍛冶師居ないって聞くよ? 農業が発展している代わりに⋯⋯あ、4時の方向に亜種だよ! 赤色の鳥だね。硬そう⋯⋯」
「おっけー⋯⋯嘘、躱された」
それから激戦を繰り広げながらも、ようやく攻めて来る魔物がいなく成った。
流石に休憩の為に地に降りた。
「いや〜本当に助かりましたよ」
「なんで急にあんな魔物の数が?」
「多分ですが、時期ですかね。今の季節って徐々に寒く成るじゃないですか? それで、暖かい方向に行くんですよ。それにかち合ったって感じです。災難でしたね」
ワッハッハっと笑う運転手。俺とサナはジト目を向ける。
「な、なんですか?」
「「それ先に言ってくださいよ」」
「さっき思い出しました!」
そして、三時間掛けて目的の国に到着した。
そのまま国に入る。
「「おおおおお!」」
目に入る作物の数々。
他にも牧場があったりする。中心の街へと向かって歩いて行く。
流れる風が心地よく感じる。
どこに目的の人達がいるか分からないので、一応商業ギルドに向かう。
あそこなら少しばかり情報がある筈だ。
「あ、全員名前知らねぇ」
「私もぉ。国名言う?」
「やめとけ。生き残りと知られる訳にはいかん」
取り敢えずギルドに向かう⋯⋯既に夕日が登り始めている。
先に宿を取る。
「宿安いね」
「ホントな」
それから食事で有名な所を宿の店主に聞いて、向かう。
その途中でとある人物に出会った。
「ゆ、ユウキ君」
「⋯⋯」
俺の名前を知っている奴は前の国で二人見掛けた。
もしかしたらその類かもしれないが、それにしては表情が変だ。
感動を全面に出している。俺に向かって走って来る。
咄嗟に技を使って受け流そうとすると、それをさらりと防がれた。
「もしかして、第二王女様!」
「アヤですよ! ユウキ君、お久しぶりです!」
「ちょっと! お兄ちゃんに近寄らいでよアヤ様!」
「久しぶりねサナ」
「えぇ、お久しぶりです」
二人共睨み合いを始める。それを宥めて、家に案内されるので付いて行く。
そこには王族と一人の使用が居た。
「生きていたんですね」
「はい。第一王女」
「君達の目的は何となく分かるよ。来たまえ。君達の目的はこの先に居る」
この場に居ないのはたった一人、陛下のみだ。
案内された奥の部屋にはベットに横になり、細くなっている陛下が居た。
「ん? ライハ、の、子か」
「お父様⋯⋯」
「陛下、お久しぶりでございます」
「何、が聞きたい? やは、り。ライハ、の事、か?」
「⋯⋯」
俺とサナは目を合わせる。俺達の目的は、何故戦争をしたか。
「戦争の理由を」
「それは私の口から」
アヤ様が口を開いて説明してくれた。俺達の国の事を。
俺達の国は見せしめに使われたらしい。
そこには大義も何も無い。ただの餌として使われた。
ざっくりまとめたら、こうである。
「そう、ですか」
「⋯⋯」
陛下は黙って俺達を見て来る。その顔の感情は分からなかった。
だが、多分だが、ライハ兵長の事を聞いてくると思ったのだろう。
⋯⋯でも、俺達の目的はもう終わった。
俺達は家を離れて晩御飯を食べて、観光地でのんびりしている。
「これからどうすっかなぁ」
「そうだねぇ」
剣の道を進むか銃の道を進むか魔法の道を進むか。或いは全てか。
強さを目指す⋯⋯必要はあるのだろうか?
俺達は戦う兵士ではない。
「なぁ」
「これは第一王子」
「君達に依頼をしたい」
「はい?」
「お兄ちゃん流石に失礼」
「おっと」
「いや構わん。我々は既に失墜している。今更そんな態度は不要だ」
「そうですか。それで、依頼とは?」
「君達は冒険者なんだろ? 俺は、父様の病気を治したい。その為の薬が必要だ」
「⋯⋯」
「内容はエリクサー⋯⋯万能回復薬と呼ばれるアイテムだ。見つかったと言う情報はあくまで噂程度。噂の出処はダンジョン都市。報酬は⋯⋯未定だな。攻略の為のサポートは行うつもりだ」
俺とサナは見つめ合う。どうする、かと。
ダンジョン都市。依頼。
サナは笑う。俺も笑う。
決まりだ。
「「分かりました。その依頼、お受けします!」」
滅んだ国の元軍人兄妹冒険譚〜魔王レベルの魔力保有者は自由に異世界冒険を満喫する〜 ネリムZ @NerimuZ
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