二次創作 インビジブル

@yuuki9674

第1話

「マルゴ、君らしくもない。僕が複数の人間とラブアフェアを楽しむスタイルなのは君もご存じだろう?」

「うまいこと言うわね。一人の人間とまともにやりとりする誠実さがないだけでしょ。

 自慢するようなことかしら。

 かれは真面目な青年よ。巻き込むのはどうかしている」

真面目ねえ。

ボルンは、チョコレートボンボンをなめながら、ウィスキーを流し込む。

銀紙を眺めながら、そろそろモーツアルトのチョコも買い足したいなと、ボルンは考える。

「君のお気に入りのアドニスも逮捕されて大変だな。退学処分かもしれない。

 無事釈放されたら一緒に酒でも飲んで、モーテルで君の好きなマリファナでも教えてあげればいい。

 気分も晴れるし、人生の幅も広がる。マリファナとナイトクリームを同時に楽しむのは君も好きだったじゃないか」

「…何年前の話をしているの。もう二度とやらないわ」

嫌だと言ったのに、無理やり教えたのは誰だ。毒づきたくなるのをマルゴは堪える。

「代償は?今更、君の体がギブアンドテイクの対象になるとでも?」

からかうような一瞥をよこすボルンにマルゴは歯ぎしりしたくなった。

「そうか。取引か。わるくない。君、確か中国語もたしなんだね」

「旅行で北京に数回いった程度よ」

「十分だ。今後、中国の外交官のシェンリーと食事をとろう。マルゴ、君も同席するんだ」

「…なんのために」

「なあに。ちょっと少し仲良くなって、奴の出入りするレストランやバーを教えてくれるだけでいい。

 きっとチャイナお得意のフルコースを教えてくれるさ」

「チャイナドレスでカエルの脚の肉でもつつき合うのかしら」

「どうだろう。チャイナドレスのわざとらしい光沢は、君の日焼けした肌には合わない気もするけどね」

なめるような眼でボルンがこちらの脚をながめてくる。

「チャイナかぁ。どうだろう。あちらでは飲尿プレイを楽しむっては本当なのかな。もし分かったら報告してもらいたいな」

にっこりとボルンは微笑む。

忌々し気にマルゴは眉を上げる。

良い顔をするなぁとボルンはさらにニヤニヤする。

ボルンが口から出まかせをいって遊んでいるだけなのはマルゴも重々承知だ。

「素敵な服を新調しよう。5番街に新しい店が出ていたことだし。

 食後にイタリアンドルチェとカクテルを楽しもう。久しぶりじゃないか」

ニヤニヤするボルンを前にマルゴは吐き捨てる。

「あなたお得意のゲームってわけね」

「邪推は良くない。久しぶりにワインを楽しもう」

マルゴは黙って煙草を吸いだす。

細い指先によく似合っていると、ボルンは指先を眺める。

「電話をかけて来るわ」

逃げるように、マルゴが部屋を出る。

「すぐ戻っておいで」

ボルンの声を無視して、マルゴは部屋を荒々しく閉めた。


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