ギガカード

結騎 了

#365日ショートショート 215

「ギガを他人に移せたら楽だと思わない?」

「ええっ、どういうこと」

「ほら、今どきスマホを持ってない人なんていないじゃない。ギガは生命線でインフラなのよ。みんながそれに価値を感じてるんだから、取引をギガで出来たら楽だな、って」

「……なるほど。相手にも等しく価値があるものね。ギガを払って誰かに仕事をお願いするとか?」

「そうそう、まさにそんなふうに」

「でも、ギガを相手に移動させるのって難しくないかしら。相手がいつも端末を持ち歩いているか分からないし。というか、そもそもギガを移すって技術的に可能なのかしら。目に見えないものだし、取引の信用も……」

「そこで、いいアイデアがあるのよ。ギガカードっていうんだけど」

「ギガカード?」

「例えば私は月に20ギガの契約なんだけど、これを10ギガはスマホ、残り10ギガはギガカードの形で貰うの。普通の、紙製のカードね」

「それで?」

「相手にギガカードを使って払うのよ。受け取った人は、後でそのギガカードを使ってキャリアに申請すれば、端末にギガが付与される仕組み」

「それなら10ギガじゃなくて、1ギガとか、5ギガとか、細かく分かれていた方が使いやすいんじゃない」

「確かにそうね。あと、ギガカードを預かってくれる施設も欲しいわ。家に保管しておくのは、やはり不安になるもの。預けつつ、定期的に引き出しに行けたら最高ね」

「でも、ギガカードといっても紙製なんでしょう。コピーできちゃったらどうするのよ」

「それについても妙案があるわ。コピーしたらすぐ判別できて、それでいて簡単に真似できないデザインにしちゃうのよ」

「ええっ、どうやるの」

「肖像画を載せるのよ」

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