「君がおくる恋文小説」

アシカ@一般学生

読書感想文 「君がおくる恋文小説」

読書感想文 「君がおくる恋愛小説」


 僕が、この夏に読んだ本は、相沢サナエが書いた「君がおくる恋文小説」である。一言でこの本の感想を言うと、これは果たして小説なのかである。

 僕は本が嫌いである。ましてや、恋愛小説なんてもってのほか。どんな本を読もうか迷って毎日のように学校の図書館に入り浸っている時、あるクラスメイトに勧められたから読んだだけである。

 話は逸れてしまったが、何で僕がこの本に対してこのような感想を抱いたかと言うと、なんだかこの本は作者自身が誰かにあてたラブレターのように感じたからである。

 まず、この本についてざっと説明しよう。何にも興味を持たない冴えない主人公の男が、学校の図書館で不思議な少女と出会う。その少女は、周りを一切気にすることなく黙々と本を読んでいた。ただ本を読んでいる姿に主人公は魅力を感じ、近づき段々と距離が近づいていくといった内容だ。

 どこにでもある普通の恋愛小説だ。

 なのにどうしてここまで有名な作品になったのか僕にはわからない。夏休みに入る前のクラスメイトもこの本の話題で持ちっきりだった。クラスの女子たちは「私は、電車の中で読んでて、一目も気にせず電車内で泣いちゃった」とか「私もこんな恋愛してみたい」とか「良いよね、これが青春よね」とか言っていた。僕にはその気持ちが全く分からなかった。一方、男子も「俺も恋愛してぇ」とか「俺、夏に好きな子出掛けて、彼女作る」とか男子らしい馬鹿なことを言っていた。僕はどうしてこの小説がここまで人の心に響いたのかわからない。この本を勧めてくれたクラスメイトも「あんたも読んだ方が良いよ」って言って僕に貸してくれた。普段、本を読む姿なんて想像もつかないくらい外で遊ぶのが似合っているクラスメイトが勧めてくれた本だ。僕が本にはまるきっかけに成るかもしれないと思い、読み始めてみたが、残念ながら僕にはこれの良さが分からなかった。

 この小説のキーアイテムは、「交換日記」である。今の時代交換日記なんてしてる中学生はいないだろう。この小説のヒロインは耳が聞こえない。その為、当時まだ携帯が普及していなかった時代、手話をしらない主人公が彼女と話すための手段として交換日記が行われる。お互い他愛のない話ばかりしていたが、実は主人公とヒロインはどうにかしてお互いを喜ばせたい、日記を途切れさせたくないと一晩中内容を考えている姿が、読者にドキドキを与えたのだろう。これのおかげで、クラスでは密かに交換日記が流行ったほどだ。携帯で連絡をすれば良いのに、わざわざ紙の日誌で連絡を取るとは、どんだけこの小説に影響されているのだろうか。勧めてくれたクラスメイトも「あんたは国語の成績が悪いから、誰かと交換日記でもして文章力でも高めたら」と言ってきた始末だ。その本人は「私は、面倒だからやらないけど」なんて言っていたから、今度勝手に日誌を送ってやろうと思う。

 最後に、この本のヒロインは事故死してしまう。耳が聞こえなかった故に起こってしまった事故だ。主人公は、ショックで立ち直れない日々が続くが最後に彼女へ当てたラブレターを書いて終わるといった結末だ。僕が恋愛小説を好きになれない理由の一つは、ヒロインだけが不幸になってしまうことだ。もっと障害を乗り越えて二人仲良く暮らしましたとかで終わっても良いのに、なぜかヒロインだけ事故死とか病死とか不幸になる。僕はそれが許せないのだ。この本を送ったクラスメイトも「確かに、それはわかるわ」と言っていた。

 僕は、少し気になって作者について少し調べてみた。作者は、多くの恋愛をしてきた模様だ。作者の結婚回数は多く、「魔性の作家」と言われているらしい。しかし、この本を最後に執筆活動も終えてしまっている。理由は、よくわからないが、電撃引退だったらしい。ネットでは、作者の夫に何かあったのではないかと考えられている。その為、最後にこの小説をその人へ当てたのだと考察されていた。この考察も、読者の心を鷲掴みにした。その結果若い人を中心にこの小説を好きな人に送ると恋が叶うとか「擬似ラブレター」として好きな人へこの小説を送るといったことが流行った。僕は、本を読むこと、また本を持っていることをファッションとして取り入れていることに虫唾が走る。大体、小説を送られる人の気持ちも考えて見てほしいと思う。結構迷惑な行為だ。だから僕は、いつも僕を馬鹿にしてきたり、からかってくるクラスメイトに今度、この本を送り返してやろうと思う。それも借りていた本ともう一つ新しく買った同じ本だ。きっと彼女は僕から本を送られきて迷惑をするに違いない。彼女の「あんた本当に馬鹿なんだから」と言っている姿が楽しみだ。

 総じて僕は、この本が面白いとも思わないし、恋愛小説を好きになることが出来なかった。僕がまだ恋愛に不慣れなせいもあるかもしれないけれど、恋愛小説はどれもありきたりで面白くないからだ。きっと僕に恋愛感情を抱いている女の子がいたとしたら、もしかしたら僕のこの本に対する感想は変わっていたかもしれないと思った。

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