第6話 後藤さんの場合
季節は3月。寒さも徐々にやわらぎ、桜の花が、ぽつりぽつりと、つぼみを付けだすころ。
梶谷さんと、僕は、いつものように、就労支援に向かっていた。
「いや~、やっぱりドラクエはⅢやろ~。」
「そうですね。ぬわーーっっ!!のシーンは熱かったですね。」
テーテレッテッテッテン、テーテレテッテッテテーン!
頭の中に、軽やかに、メインテーマが流れつつ、とりあえず、僕はボケてみる。
「ちゃうよ~。僕が言ってるのは、Ⅲの話やで~。氷属性の方やで~。」
「あ~、そっちだったか~。」
と、多少テンポのあった会話をしながら、就労支援に到着する。
朝の清掃訓練をやっていると、「ピンポーン」と玄関のチャイムがなる。
「こんにちは〜、今日は、よろしくおねがいします。」
と言いつつ、長身の男性が、部屋に入ってきた。
「こんにちは〜。後藤といいます。よろしくおねがいします。」
何でも、グラフィックデザイナーをしているらしい。
へ〜、新人さんか。
と、僕は、多少、鼻を高くしつつ、経歴を聞いてみた。
「どちらに、お勤めだったんですか?」
「あ、僕はね〜、○○○ってとこだよ~。」
ふ、ふ〜ん。
なんと、地元どころか、日本全国で、通用するくらいの大企業務めの方だった。
いや、まだだ!
「へ、へぇ〜。すごいですね~。学歴とかを、伺っても?。」
「あ、う〜ん〇〇大学ってとこ。この辺で、知っている人いるかな~。」
ぐ、ぐふぅ。
いやいや、お兄さん、
感想としましては、大抵の人は、知っていると思いますよ、というくらいに、顕名な、ところでした。
こうして、しっかり、自己紹介を終えたところで、後藤さんが、仲間に加わりました。
だんだん、ステータスの高さにも、なれてきた頃、あることを聞かれました。
「章君は、何か、資格を持っているの?」
「いや〜、簿記とか、MOSとかは、一応、取得しましたね~。」
そうなんだ、と相づちを打ちつつ、後藤さんが、あるものを取り出す。
免許証なようなものだった。
「僕は、学生時代に、いくつか取ったんだけどね~。章くんも、機会があれば、国家資格に挑戦してみるのが、良いかもしれないよ~。」
聞くところによると、国が、認定しているので、信用度が高いらしい。
う〜ん、どうしようかな~。と思っている間に、なんやかんやあり、後藤さんは、卒業してしまった。
最後に、トランペットで、ドラクエのテーマを、演奏してくれたことが、印象的だった。
僕が、レベルアップする日は、いつか、来るのだろうか。
シューショク難! スペアまりも @morohaduke
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