第17話 8月が終わり
8月31日まで大盛況だった夏のVRMMO。夏休みが終わったと同時ではなかったが、8月31日24時にサービスが終了した。その後、プレイヤーの元にメールでとあるお知らせがあった。指示通りにプレイヤー名とパスワードを入力すると、限定通販サイトに入ることが出来た。駄菓子や地域ならではのもの、旬や名物などが取り揃えていた。しかも本来の市場の価格よりも2割引というものもあった。
豊富な品揃えだ。ガーネットは迷う。だからこそ仲間の2人にチャット電話で聞いているのだ。ゴロゴロとベッドで寝っ転がりながら、何を購入したかを聞く。最初はタワーから。
『俺はバーベキューのを頼んだな。あとは個人的な好みとか夢子のリクエストとかな』
各自自由に買い物。タワーは子供がいるため、野菜や肉など……というよりバーベキューセットをガッツリ購入したみたいだ。和牛と呼ばれる肉。かぼちゃや人参や玉ねぎなど野菜類。高級ソーセージ。マシュマロ。食べ物だけではなく、木炭も用意されている。アウトドアを楽しむ人なら即買いする内容だろう。
「あー納得だわ。ベランダでやる感じか」
ガーネットは脳内でタワーの家族がワイワイとベランダでバーベキューを行う様子を描く。
『そうなるな。だがあと少しで落ち着くみたいだから、夢子(リアルタワーの奥さん)の実家が持つ別荘でやろうかと思ってるよ』
いいなと思いながらもガーネットは、
「リア充滅べ」
と反射的に言った。それはロイヤーンも同じだったようで、声が重なるように聞こえた。タワーは豪快に笑いながら、彼らしい発言をする。
『はっはっは。その時はお前たちも誘うから』
お誘いに弱い2人は即座にお礼を言う。
『あざっす。ああ。そんで俺なんだけど和牛お肉なんだけど、ステーキにするよ。ミディアムレアにしとこうと思う。それと駄菓子セット』
ロイヤーンは和牛の肉と駄菓子。
「なんで駄菓子」
ガーネットの突っ込みにロイヤーンが楽しそうに理由を答える。
『大人買いしたかった。以上』
「それだけ?」
『うん。まあ自由に選んどけばいいんじゃね?』
お気楽なロイヤーンの声。ガーネットの眉間に皺が生まれる。
「だから悩むんだよ。1人暮らしだから、大量には買えねえだろ?」
『あの時みたいに家族に送っときゃいいじゃん。駄菓子、一部だけだけど、甥っ子にあげたぜ』
ロイヤーンの台詞でそういう手もあったかと感心するように言う。
「なるほどな」
『そろそろ。干す時間だから、ここで失礼するぜ。練習に遅れるなよ。じゃ』
ロイヤーンがチャット電話を切る。
『俺もそろそろ切っておこうか。またな。ガーネット』
「ああ」
タワーも切った。ガーネットは端末機器を使い、通販サイトにアクセスする。たまにこちらから何かを贈ろうと、旬のものや高級食材を買っていく。その時の顔はとても穏やかな笑みだった。
何故たくさんの企業が集まり、夏限定のVRMMOを配信したのか。ネット住民は論議を交わす。落ち着いた後の経済を回すためか。少しでも稼ぐためか。ただのお遊びとしてやっただけか。それは運営しか分からないだろう。しかし大盛況だったことに変わらない。多大な影響を与えたのも事実だ。そういった意味では成功したと判断してよいだろう。
そして数週間後、ようやく外出が出来る情勢となり、ガーネット達はタワーの奥さんの実家が持つ別荘でバーベキューをやった。ゲームで出会ったアロハシャツ達と遭遇し、規模が大きくなり、賑わったと参加者が日記に書いていたとか。
夏限定VRMMOへ いちのさつき @satuki1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます