第7話:再び魔法がかかる時
澪は自分の家に帰ってしまった。恥ずかしさからか思いっきりキレて帰って行った。
澪の性格を考えると、一度言ったことを絶対に曲げたりしない。もう終わりと言ったら、終わりなのだ。今からさらに謝りに行っても、恥ずかしさからキレ散らかして仲直りなんてできる訳がない。
俺は床に落ちた食べかけのエクレアを恨みがましく眺めながら、どうしてこうなったのか考えていた。
*
1時間ほど考えて俺は立ち上がった。そして、そのまま隣の澪の家に行った。幸い澪のお母さんが家にいたので、玄関は開けてもらえた。
「武くん! よかった! 澪ったらね、泣きながら帰ってきたと思ったら、そのまま部屋に入ってしまって……」
「すいません。俺とケンカみたいになってしまって……仲直りに来たので、あがっていいですか?」
「もちろん! どーんとやっちゃって!」
なにをどーんとやるのか!? まあ、澪のお母さんの了承を得たので、堂々と家にあがり、澪の部屋に直行する。
当然、ドアにはカギがかかっているのだが、非常用に外からでもコインで開けられるようになっている。普通はトイレとかに使われているノブが澪の部屋には付いていた。
(ガチャン)ドアを開けて澪の部屋を覗く。案の定、室内は真っ暗で、澪はふて寝していた。
「澪……」
俺の呼びかけにピクリと反応したが、それ以上動かない。よほど恥ずかしかったらしい。そりゃあ、ここしばらく俺に甘えまくっていたから……
俺が甘えっ子は嫌いだと誤解していたみたいだから、ずっと隠していたのだろう。そのせいか、澪にとって甘えることは物凄く恥ずかしいことだったらしい。
何を言っても一切聞いてくれないし、動いてもくれないやつだ。長い付き合いが俺にそう伝えている。
「あなたは
澪がピクリと反応した。
「この催眠術に『暗示を解くキー』はない。一生かかったまんまだ。この催眠術は解けない」
澪がもぞもぞ動き始めた。そして、少し芝居じみた感じでうつろな瞳で目を開けた。あの時の俺のように……
一つ違うのは、澪の顔が真っ赤だということくらいだろうか。
【短編】ツンな幼馴染が俺が寝ている間に「私を好きになる」と催眠術をかけて来たのだが 猫カレーฅ^•ω•^ฅ @nekocurry
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