第3話 外伝 ボーソー族

移民暦AE (anno exodus) 1263年

 ふり仰ぐと太陽があった。その向こうには少し雲があった。

「あっちは曇りか」

 天気予報では晴であった。気象庁の出す天気予報は昔は100%当たっていた。もっとも予報ではなく天気情報であった。

 ところがそれでは生活に潤いがないとか、つまらないとかの意見が出て70ー80%の確率で天気を知らせる天気予報になった。たまに大外れもある。また一応天気図も示されるので天気を当てる楽しみも復活した。子供の頃ジイさんから聞いた話である。

 ここ数年、雨は滅多に降らなくなった。水道の出も悪い。水が不足しているらしい。

 リサイクルセンターに集まってくる廃品から部品をくすね大昔緑の大地を爆走していたと言われるバイクを作り出した。ハンドルがあり二輪で爆音を轟かせ走るということ以外は歴史に残るバイクとは全く別物ではあった。

 擬似爆音とともにバイクを飛ばしてきたが、頭の上を見るとすっきりした気持ちがまた淀んでくる。いくら前を見てもはるかに見える地平線などはなく、おぼろに立ち上がる壁があるだけであった。目に見える道は平でも、東西南北どこに向かっても最終的に壁があり、その壁は確実に弧を描いて上に曲がっているのであった。壁沿いにいくら走って周回するだけであった。もちろん一周するには時間がかかるが、それでも感覚ではただ単に檻の中をぐるぐる回るサーカスのバイクの気分であった。

 バイクを止め、足をつき、擬似爆音を響かせながら吠える。

 「くそ、いくら走っても同じだ。この閉じた世界は。無限の地平線目指して走りたいぜ」

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砂の移民星 Exodusふたたび SUGISHITA Shinya @MarzJP

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