第8話 今夜は一緒に……ダメかな?

   *(河川敷)


(ウサギ、走り回る)


ウサギ:(手を振る)

「壮〜!」


壮:(手を挙げる)

「おう!」


壮(心の声):

「秀には、いつ打ち明けようか……。

今は彼女とラブラブで他が見えていないんだか、最近SNSの方もあいつの反応全然ないから、そのうち報告しとくか」


ウサギ:(楽しそうに笑って走り回る)


壮:

れとした笑顔だな。ホントに走り回るの好きなんだな。動物のウサギみたいに」


ウサギ:

「ここ、広くていいね! たくさん走れたよ〜!」


壮:

「ああ、良かったな!」


   *


(壮のアパート)


ウサギ:

「夕ご飯は何かなぁ」


壮:

白飯しろめしと、昨日バイト先でもらった冷凍食品の白身魚のあんかけと、サラダとカップスープと……くらいだな。


なんか物足りないから、ウインナーでも焼くか」


ウサギ:

「ボク、お料理やってみたい!」


壮:

「え、お前、料理とか出来んの?」


ウサギ:

「ううん。やったことないから、壮が教えて」


壮:

「そうくるか。じゃあ、ウインナー、一緒に焼くか」


ウサギ:

「テレビで見たことあるよ、エプロンっていうのをするんでしょ?

あれ、かわいいよね〜」


壮:

「エプロンなんか俺はしないから、うちにはないけど……」


壮(心の声):

「メイドさんみたいなひらひらエプロン、ウサギなら似合いそうだな……」


壮:(目をらしながら、下心を隠すように何気なく)

「ああ〜、今度、エプロンも買いにいくか」


ウサギ:

「ホント? わあ、嬉しい!」


壮:(笑う)


(フライパンでウインナーを焼く)


壮:

「ああ、菜箸さいばしが難しかったら、こっちのフライ返し使っていいよ」


ウサギ:

「ホントだ! この方が使いやすいね!

ウインナーが焼けてきて、美味しそうなニオイがしてきたよ」


壮:

「ウサギって草食動物だけど、今のお前は肉も食べられるのか?」


ウサギ:

「うん。美味しそうって思えるから大丈夫」


壮:

「そっか。念のためサラダもあるからな。買ったやつだけど」


ウサギ:

「うん! 野菜は大好き!」


(座卓にウインナーの皿も追加する)


壮:

「それじゃあ、いただきます」


ウサギ:

「いただきます」


(もぐもぐ食べる)


「美味しいね! 初めて自分が作ったものを食べたよ。ウインナーってこんなに美味しいんだね!」


壮(心の声):(ほっこり)

「ウインナー焼いただけで、そんなに喜ぶなんて」


ウサギ:

「このフォークっていうのを使えば、まだおはしに慣れてないボクでも、食べやすいよ。


このスプーンっていうのでスープをすくって飲むのかな? テレビで見たよ」


壮:

「そうそう。うちで練習しとけば、また外に行った時にもうまく使えるようになるしな」


ウサギ:

「これも美味しいね! ……あ、これも!」


壮(心の声):(ほっこりしながら)

「女の子と、この部屋で夕飯なんて……よく考えたら初めてじゃないか。

清夏は外がいいって言うから外食ばっかりだったけど。


こんなふうに、ささいなことで美味しいって、にっこりしてもらえるのって、新鮮だなぁ」


(食べ終わる)


壮:

「シャワー、先入っていいぞ」


ウサギ:

「シャワー……」


壮:

「あ、そっか! ウサギ時代はシャワーなんてしなかったもんな。ウサギは自分で身体キレイに出来るし」


ウサギ:

「うーん……」


壮:

「しまった、男物のシャンプーしかないな。ウサギは髪綺麗きれいだから、女子用のシャンプーの方が良かったのかな?

それとも、メンズでそれらしいやつでも探すか。

とりあえず今日は、今あるやつを使うしかないな」


ウサギ:

「うん! いいよ」


(風呂場)

(*エコー)


壮:

「ユニットバスだから狭くて、悪いな」


ウサギ:

「ううん、大丈夫。それよりも、どうして腰にタオル巻いてるの? 壮もボクも」


壮:

「それは聞くな」


ウサギ:

「?」


壮:

「いいか、そこの椅子に座って、まず頭全体をシャワーで濡らして」


(シャワーの音)


ウサギ:

「あははっ、なんかおもしろーい!」


壮:

「ふうっ、嫌がらなくて良かった!

シャンプーは、こうやって頭につけて」


ウサギ:

「わっ、なんだかあわあわになってきたよ!」


壮:

「髪長いからこれじゃ足りないな。シャンプー付け足さないと。結構、量使うな」


ウサギ:

「すごいすごーい! 泡がこんなに!

(キャッキャはしゃぐ)


ねえ、壮、見て見て! こんなに泡が出来たよ!

(両手に乗せた泡を、後ろにいる壮に見せる)

さわるとなめらかで気持ちいいね!」


壮:

「そうだな。(笑う)

ああ、目に入ったら痛いからな、入らないようにするんだぞ」


ウサギ:

「じゃあ、目をつぶってるね」

(キャッキャ笑う)


壮:(笑って)

「じゃあ、シャワーで流すぞ。喋ったら口ん中入っちゃうから黙ってろよ」


ウサギ:

「うん、わかった」


(洗い終わって、シャワーで流す)


壮:

「ボディソープは、これな」


ウサギ:

「わあ! これもあわあわになってきたよ!」


壮:

「ああ、それで背中洗ってやるから、前は自分で洗うんだぞ」


ウサギ:

「うん、わかった。

お風呂って面白いね!」


壮:(笑う)

「そうか。良かったな。

じゃあ、俺は出るから、シャワーで流したら風呂場から出て、そこに置いといたタオルで髪と身体拭くんだぞ。


パジャマ買うの忘れたから、今日は俺ので悪いけど、置いといたから着ていいよ」


ウサギ:(にっこり)

「壮、ありがと!」


(壮、風呂場から出る)

(風呂場からは、ウサギがキャッキャ笑ってる声が聞こえる)


壮:

「はああ……やっぱ男だったかぁ……。

……何をがっかりしてるんだ、俺。なんか最後の望みも絶たれたような……」


(肩を落として、ため息)


「ま、まあ、いいじゃないか。同居するんだから、男同士だって一人暮らしよりはさびしくないし、ウサギはなんでも楽しそうで、あの笑顔を見てるだけで、こっちも嬉しくなってくるし。


ペットが擬人化ぎじんかしたと思えば……。

そうだよ、さびしくないだけでも……」


ウサギ:

「壮、出たよ」


壮:(目を見開く)

「……へっ!?」


壮(心の声):

「タオルドライしただけの濡れた髪!

シャツの下から生足が……!」


ウサギ:(ちょっと困り顔)

「なんか、壮のシャツ、ボクにはちょっと大きかったみたい。

それに、スボンがなかったよ」


壮:(動揺)

「……かっ、彼シャツー⁉︎」


ウサギ:

「カレシャツ?」


壮:

「……あああ、いや、ズボン置かなかったのはワザとじゃなくて!

……ああ! ここにあった!」


ウサギ:

「ありがと」


(ズボンをはく)


壮:

「えーっと、布団は、秀が泊まりに来た時用に一人分は余分にあるから、それを敷いといたよ。


ベッドと布団、どっちがいい?」


ウサギ:

「どっちでもいいよ」


壮:

「じゃあ、ベッドで寝ていいよ。

俺は布団でいいから」


ウサギ:

「うん、ありがとう!」


壮:

「じゃあ、俺、シャワーしてくるから、先に寝てていいからな」


ウサギ:(にっこり)

「うん、ありがと、壮」


(壮、シャワーを終えて、パジャマで布団へ)


壮:

「ウサギ、もう寝ちゃったか?」


ウサギ:(寝息)

「すー……すー……」


壮(心の声):

「寝顔、かわいいな。

コレ、どう見ても、女の子だよな……。

ウサむすめの男の……」


壮:

「これからも、よろしくな」


(布団の上に横になる)


壮(心の声):

「……そういえば、本物のウサギは骨が弱くて骨折しやすいって本に書いてあったよな……。

ベッドから落ちたりしたら危な……!」


壮:

「ウサギ! やっぱり、お前が下で寝るか!?」


(ガバッと起きかける)


ウサギ:

「う〜ん……」


(ベッドから転がり、壮の上に落下)


壮:

「ぐえっ!」


ウサギ:

「くー……くー……」


壮:

「いててて……!

こいつ、起きないのか?」


ウサギ:(寝息)


壮:

(ウサギを起こさないように、ゆっくり抜け出し、ウサギをそのまま布団に寝かせ、ベッドによじ登る)


「ウサギには布団で寝てもらうことにしよ。その方が安全だ。

はあ、これでゆっくり眠れ……」


(ウサギの寝顔をベッドの上からのぞきこむ)


壮:

「……いや、これから大丈夫かなぁ?」


ウサギ(寝言):

「う〜ん……

壮……

……大好き」


壮:

「げっ!

……ああ、寝言か、びっくりした!


……これから、俺、ホントに大丈夫?」

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もふもふライフはウサ娘と!? かがみ透 @kagami-toru

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