第7話 デート……かな?

   *大学


壮:

「……って、清夏いねーじゃん! 学校まで来て提出すんのはレポート遅れたヤツだけだったじゃん! あああ!」

(頭を抱える)


ウサギ:(壮の後ろについてきて、キョロキョロ見回す)

「いつもこういうところに行ってたんだね。

ふ〜ん。音が響くね」


壮:

「ああ、広い場所の残響とか、もしかして苦手か?」


ウサギ:

「ううん。大丈夫」(にこっ)


壮(心の声):

「まあ、ウサギとはいえ、一緒に来てもらっただけでも、ひとりよりはさびしくないか」


壮:

「せっかくだから、どこかでお茶して帰るか?」


ウサギ:

「ホント? テレビで見たことあるよ! カフェってところに行って、デートするんだよね?」


壮:

「デートって……ん?」(ひらめく)


壮(心の声):

「そうか、デートか……!

俺が女子——いや、一見女子と学校の周辺を歩いてたらデートに見えるよな?


清夏が大声で、俺が男に走ったとか言ってたヘンなうわさも、抹消まっしょうできるかも!」


壮:

「よしウサギ! これからデートだ!」


ウサギ:(ぴょんぴょんする)

「わあ〜、どんな感じなんだろう。楽しみ!」


   *カフェ(ドア開閉。BGM)


店員:

「いらっしゃいませー。二名様、こちらへどうぞ」


壮:

「あ」


(清夏とK大生が来ていた)


清夏:

「あ、壮」


壮(心の声):

「まさか、ホントにばったり清夏とK大生のデート現場に遭遇そうぐうするとは……」


壮:(取りつくろう)

「えっと、そちらは、初めまして、ですね」


K大生:

「どうも、初めまして、慶大けいだいと申します」


壮(心の声):

「名前までK大かよっ!?」


慶大:

「あの、そちらは……?」


清夏:(ごまかすように)

「あ、ああ、友達! 友達の壮。話したでしょ? 同じ大学の友達だよ」


壮(心の声):

「友達友達連発しやがって……」


(壮の後ろから、ウサギひょこっと顔をのぞかせる)


ウサギ:

「ねえ、壮、どうしたの?」


壮(心の声):

「そ、そうだ! チャンスだ!」


壮:(笑顔)

「や、やあ。キミらもデートだったか。ははっ」


清夏:(眉間に皺を寄せて)

「キミらもって、あんたも?」


壮:(大威張り)

「実はそうなんだよ! な、ウサギ!」


(ウサギの肩を抱く)


清夏:「は? ウサギって……」


壮(心の声):

「しまった! えーと、えーと、なんて呼べば……」


ウサギ:(にこにこ)

「初めまして、ウサギです。ウサギって呼んでください」


壮(心の声):

「……って、自己紹介しちゃってるよ!」


慶大:(にっこり)

「素敵な響きのお名前だなぁ。清楚で可愛らしい彼女さんですね、壮くん」


壮(心の声):

「なんかいい人そう? とても清夏のカレシとは思えないな! 元カレの俺がダメダメ過ぎたのか?」


清夏:(からかうように。観察しながら)

「それにしても、いつの間に? 壮もすみにおけないな〜」


壮:

「ああ、最近知り合って、みょうに気が合っちゃってさ!」


ウサギ:(にこにこ)

「うん」


慶大:

「お似合いですね」


ウサギ:(笑顔)

「ありがと! ボク、壮のこと大好きだから嬉しい!」


壮(心の声):

「……なんかじんわりきた」


清夏:

「今、ボクって言った?」


壮:(ごまかすように)

「ああ、いや、ボクっ子なんだよ、ウサギは」


ウサギ:(にっこり)

「はい」


慶大:

「ボクっ子……かわいい」


清夏:

「は? 慶クン、今なんて?」


慶大:

「え? いや、なんでも」


壮(心の声):

「ウサギがほめられた? ……自分の彼女ほめられると気分いいな」


「……いや、ウサギは別にカノジョじゃねぇし。ペットかわいいって言ってもらったら嬉しい、それと一緒だ!」


ウサギ:

「……はむっ」

(ウサギ、ストローでアイスティーを飲む)


壮:

「大丈夫か? ちゃんと飲めてるか?」


ウサギ:

「うん、大丈夫」


壮:

「アイスティー、美味しいか?」


ウサギ:

「うん。すっごく美味しいよ!」


壮:

「そうか! 良かったな!」

「甘くしたかったら、このガムシロップ入れてやるから」


ウサギ:

「甘いのも飲んでみたいな」


壮:

「わかった。じゃあ、ガムシロ入れよう」


清夏:

「壮くん、あんたそんなに面倒見めんどうみ良かったっけ?」


壮:(ちょっとあせる)

「え、ああ、……やっぱカノジョに対しては違うのかなぁ、はっははは!」


清夏:

「カノジョっていうか……なんか過保護な親みたいっていうか」


壮:

「なんて!?」


ウサギ:

「あっ……」

(フォークでケーキがうまく食べられずにこぼす)


壮:(言い訳がましく)

「ああ、こ、このケーキくずれやすいみたいだもんな! 仕方ないよな。今、拭いてあげ……」


こうとして手を止める)


壮(心の声):

「ブラウスの胸元っ!?」


壮:

「ご、ごめん! 自分で拭きたかったよな!」


(慶大と清夏、目を見張る)


ウサギ:(うつむき加減に微笑む)

「……壮なら、……いいのに」


壮:

「えっ……」


(慶大も清夏もガン見)


壮:

「い、いや、それはさすがにここではマズイだろ」(苦笑い)


ウサギ:(キョトン)

「なんで? いつも拭いてくれてるのに?」


慶大・清夏:

「いつも!?」


ウサギ:

「うん、そうだよ。れた時は、いつも拭いてくれるんだ。壮は優しいんだよ」(癒し系の笑顔)


慶大:(ビビる)

「ええ〜〜」


清夏:(びっくりして大声で)

「あんたたち、もう一緒に風呂入る仲になったの!?」


壮:

「おい! どうしたらそういう発想になるんだよ! そんなこと言ってないだろ」


清夏:(信じられない顔でウサギをじろじろ)

「もう一緒に寝てるとか?」


ウサギ:(にっこり)

「はい」


壮:

「はい、じゃないだろー? お前は俺のベッドの上の方で丸くなって寝てるだけ……」


壮(心の声):

「ん? それは、もふもふ時代だよな?」


壮:

「そういえば、お前昨日はどこで寝てた?」


ウサギ:(ほわほわした笑顔)

「床の上だよ。お昼寝する時と同じだよ」


壮:

「ええーっ!」


清夏:

「なんなのよ、壮。女の子放っといて自分だけ先に寝たの? ひどいじゃない!

っていうか、今、お昼寝って言った……の?」


ウサギ:

「はい。ボク、壮と同棲どうせいしてるから」(小首を傾げてにこっ)


慶大・清夏:

「ええっ!?」


慶大:(動揺)

「こ、こんな初々ういういしい子が……?」


壮:

「わーーっ! 何言ってんだよ! 違うって言っただろ!?」


ウサギ:

「あ、そっか。違いました。同居でした」


慶大・清夏:

「同居!?」


壮:

「いや、あの……!」


ウサギ:

「いけませんか? なにか問題でも?」(にこっ)


清夏:

「壮、あんた、あたしと別れてからまだそんなにってないのに、もう同棲って……。

あんた、まさか、あたしとこの子、二股ふたまたかけてたんじゃないでしょーね?」


壮:

「そんなことしてねーよ! お前にフラレた後で出会ったんだよ!」


清夏:

「へー、そんなタイミングよく見つかるもんかなあ!」


壮:

「見つかったんだよ!」


ウサギ:

「あの、ケンカしないで。大きい声、怖い」

(ちぢこまる)


壮:

「あ、ご、ごめんな! そうだったよな。もう帰ろっか。帰ってから河川敷かせんしきで遊ぶか?」


ウサギ:(嬉しそう)

「うん。そうだったね」


壮:

「少し元気が出たみたいだな。良かった。じゃ、行こうか」


「じゃあな、清夏、慶大さん」


慶大・清夏:

「あ、ああ……」


(壮とウサギ、店から出て行く)


慶大:

「……なんだか、つい最近知り合ったにしては、大分仲良しだったね」


清夏:

「ぜーったい、あたしと同じ時期に知り合ってるわよ。二股かけるような、そんな器用なヤツには思えなかったけど……。

ふん、もうどーでもいいわ」


慶大:(責めるわけではなく確認するように)

「それより、清夏ちゃん、壮くんのこと友達って言ってたけど……付き合ってたんだね?」


清夏:

「……あ」

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