第6話 お買い物♪

壮:

「いいか、ウサギ、俺はこれから学校に行ってくる。出し忘れてたレポートが一件だけあってな。

古っ臭い教授がいて、紙で出せっていうから。しかも、今日! 他の授業ならタブレットから送信すればいいだけなのに……


そのためだけに、大学に行ってこないとならないんだ。まったく通学時間の無駄だよなぁ」


ウサギ:

「うん、わかった。大変だね」


壮:

「ひとりでお留守番出来るな?」


ウサギ:

「うーん……」


壮:

「なんだ? いつも留守番してただろ? もふもふ時代は」


ウサギ:

「そうなんだけど……、身体がなまっちゃいそう。小さかった時はこの家の中でも足りたけど、このサイズになると……ボク、広いところを走りたいなぁ」


壮:

「そ、そうか。じゃあ、帰ったら河川敷に散歩に連れてってやるよ」


ウサギ:

「ありがとう! 壮!」


壮:(じーっと見る)

「やっぱ、お前も行くか?」


ウサギ:(目を輝かせて)

「えっ! いいの!?」


壮:

「俺が可愛い子連れてるところを、清夏に見せつけてやろうじゃないか! ふっふっふ……!」


ウサギ:

「……?」


壮:

「……っと、その前に、服をなんとかするか」


   *ショッピングモール


壮:

「その格好、暑くないか? 今は夏だぜ? ファー付きの服ってのはちょっと……いくら袖なしだからってさ」


ウサギ:

「これはデフォルトだよ」


壮:

「……? ああ、ウサギ時代はネザーランドドワーフだったもんな。確かに、そういうイメージの服だよな。

しかし、女子の服買ったらいいのか男のでいいのかわかんねぇな」


ウサギ:

「あ、ボク、これがいい!」


壮:

「なんだ? 好みとかあるのか?

やっぱ女子用か。一人で着替えられるか?」


ウサギ:

「うん……?」


壮:

「しょうがないなぁ、試着室に一緒に入ってやるよ」


ウサギ:

「シチャクシツ?」


壮:

「ここだよ、このカーテンの中だよ」


(カーテンを閉める音)


壮:

「まず、ファー付きの上着を脱いで……」


壮(心の声):

「腕とか首とか、結構けっこう華奢きゃしゃだな」


(服を脱ぐ音)


壮:

「はっ!」


ウサギ:(キョトン)

「どうしたの? 壮、お顔が真っ赤だよ」


壮(心の声):

(顔が赤い。目をらす)

「……女子用の下着かよ」


ウサギ:

「うん! だってかわいいし。これもボクのデフォだよ。

あれ? 壮、なんで目をらすの?」


壮(心の声):

「思わず一緒に試着室入っちゃったけど、み、密室に女の子と二人……

い、いや! 言うほど密室じゃねぇし、女の子じゃなくて男のだし……!

でも、ここって女子の服売り場の試着室……店員さんに変に思われそう!」


ウサギ:

「えーっと、白いブラウスは……こう着ればいいのかな?」


壮:

「ボタン、かけ間違えてるぞ」


(直す)


ウサギ:

「う〜ん、フリルがあるとボタンの位置がよく見えなくて難しいね」


壮:

「な、慣れれば大丈夫だよ。

えっと、えりのところに黒いリボンを結んで……結ぶの難しいな!

俺が結んだらなんか変だな! 後で店員さんにやってもらうか。

次は……この黒いのはショートパンツか?」


ウサギ:(ウキウキ)

「うん。ボタン付きがかわいいんだよ。

サスペンダーも同じ生地で出来てつながってて。これと似てるのテレビで見てかわいいなぁって思ってたんだぁ」


壮:

「言われてみれば、かわいいな」


ウサギ:

「えへへ」


壮:

「い、今のは、服がかわいいって言っただけで……!」


ウサギ:(幸せそうに笑う)

「えへへ」


壮:

「……まあ、いっか」


   *


壮:

「良かったな、店員さんが襟元えりもとのリボン結び直してくれて、その服に似合う黒いソックスもローファーも選んでくれて。ついでに髪もツインテールだっけ?」


ウサギ:

「うん!」


壮:

「髪までむすんでくれて良かったな」


ウサギ:

「うん!」


壮(心の声):

「……めっちゃかわいい。

アプリが言ってたプレイヤーの理想の姿になるっていうだけあって、めっちゃ俺好みだぜ!


(我に返る)

……いや! かわいいって言ったってウサギかわいいだけだ!

ウサギかわいい……ウサかわいい……?」(混乱してくる)


ウサギ:

「今度はどこに行くの?」


壮:(我に返る)

「……っと! 本来の目的を忘れるとこだったぜ! 学校だ学校。大学に一緒に行くよ」


ウサギ:

「はあい」


壮:

「ふっふっふ、見てろよ、清夏! 俺がかわいい女子連れてるところを、よーく見とけよ!」

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