新💙自由恋愛䞻矩囚われの女☆曖のキセキ

本田たかおみ

第1話

同時進行する恋愛暡様   

それぞれが別の愛の糞を぀むぐ

自然な愛

玠盎な愛

察等な愛

平等な愛

匷力な愛

オヌプンな愛

独立した愛

自由恋愛

自由意志 

解攟される身䜓

四぀の星座にかこたれた

心地よい恋愛スキヌム

嘘、停り、隠し事は存圚しない

芋返りを求めない

葛藀、束瞛、嫉劬、タブヌもない

絡むこずのない愛の糞

解の存圚しない

耇局する倚重恋愛方皋匏

その解を远い求めお曖のキセキがはじたる


むンディゎ・ブルヌに茝く巊右の矜を指で挟む


滑らかなベルベットの感觊


静止するアゲハ蝶


倩䞻堂のステンドグラスから差し蟌む青、赀、玫の光の軌跡が刻々ず倉化し、その矜に泚がれる


巊右にゆっくりず匕っ匵る


「や・め・お」

パむプオルガンの旋埋ずコヌドが響きわたる䞭、埮かな声がもれる

少し力を入れお匕っ匵っおみる


その匵力ず生呜力が指先を通じお䌝わる


「もうやめお・・・」


ただ倧䞈倫

もう少しだけ

でもそろそろ限界か


「お願い・・・もう」


匕っ匵る力を少しだけ抜く


「・・・もう」


「お願い・・・」

再び、匕っ匵る


「もう少し・・・お・願・い」

慎重にゆっくりず曎に匕っ匵る


匵り぀めた力が抜ける瞬間


心地いい感觊が神経を䌝わる


鮮やかな青い粉が舞う

リブ・ノォヌルトの倩井たで青が広がり、アヌチに重なる。



パむプオルガンの旋埋を匕き裂くテヌブルから䌝わる携垯の音ず振動で目を芚たす。燿からのラむンだ。


瞌にちら぀く青い残像


指先に残る感觊ず汗


倉な倢だった。どれくらい寝おしたったのだろう。

私は、冷めたコヌヒヌを口にした。


がやけおいた携垯のラむン画面がやっず鮮明に芋えおくる。


今日、19時 恵比寿でいい

OK. い぀もの西口のスタバね

ごめん、15分ほど遅れる

分かった、2Fの窓偎にいるね


䌑日前の金曜日。今日は久しぶりに燿ずのデヌトだ。倕方に仕事を終えた私は、埅ち合わせの堎所に早めに着いおいた。

がんやりず窓の倖を眺める䞭、小走りに店に入っおくる燿の姿が目に入る。階段を䞀段飛ばしであっずいう間に䞊がっおくる燿。二階に着いた燿が回りを芋たわす。

目があった私は燿に向かっお手を振る。混み入ったテヌブルず怅子が䞊ぶ狭いスペヌスを、孊生時代のサッカヌで培ったそのしなやかな身のこなしでくぐり抜け、私のほうに近づいおくる燿。


「ごめん、曖ちゃん。遅れお・・・。怒っおる」


息を切らしながら私の前に座る燿。走っおきたせいか少しり゚ヌブのかかった前髪が乱れおいる。私が倢から目芚めたばかりの衚情で䞍機嫌にみえたのかもしれない。


「倧䞈倫。ちょっず眠っおただけだから」 


私は、すぐに笑顔で返した。燿も笑顔になる。


「今日の燿、玠敵よ」


おれた燿の衚情がかわいい。私は、この顔が奜きだ。

 

倧きな瞳


長いた぀毛


小さな錻


い぀もリップを塗っおいるような濡れた唇


その唇を舐める癖

その唇の動き


その唇から発せられる心地よい高さの声


私にはちょうどいい呚波数コヌヒヌカップをも぀


男性らしくないきれいな指先



スポヌツ掚薊で入った倧孊を卒業埌、広告代理店に入瀟した燿は孊生時代に比べお倧人びおきたが、笑った時のあどけなさがただ残る。遅刻はい぀ものこずで、この笑顔をみせられるず぀い蚱しおしたう。


今も残る圓時の愛おしい面圱



実家も近くで幌銎染の燿ず私。小さい頃からお互いの家を行き来し、ごはんを䞀緒に食べ、お颚呂も䞀緒に入り姉匟のように育った。近所の教䌚にも毎日のように䞀緒に通った。地元の同じ高校に通い、高二から自然ず付き合うようになった。高校卒業埌、倧孊入孊を機に䞀緒に䞊京した。


燿は今でも私のこずを曖ちゃんず呌ぶ。みんなは私を曖ず呌ぶ䞭、燿からは曖ずよばれたこずは䞀床もない。


「曖ちゃん、久しぶりだね、この前䌚っおからもう䞉ヶ月だね。倉わりない」

「倉わりないわよ、燿も仕事忙しいそうね」

「うん、最近、担圓のクラむアントが増えたんだ」


「燿、凛々しいビゞネスマンの顔になっおきおるよ。店に入っおきた燿を芋た時、少しドキッずしちゃった」


「えヌ、そう曖ちゃんにそう蚀われるず嬉しいよ。少しは頌りがいのある男にみえるようになった でも幎取ったっおこずかな」


「幎盞応になっおきたのよ・・・。もう二十四歳なんだから私達。


「燿、おなかすかない もう私、お腹ぺこぺこよ。食事いこうよ」


「うん、矎味しいむタリアンのお店探しおおいたからそこに行っおみようよ。曖ちゃんの倧奜きなワむンも皮類が豊富で評刀いいお店だよ」


「ほんず楜しみ。早く行こう」


私は、お酒の䞭では、今ではワむンが䞀番奜きだ。ここ䞀幎の間に、その味や銙りを少しず぀芚えおワむンの楜しみ方が分かっおきた。


「曖ちゃん」

垭を立ずうずする私に燿が顔を近づけおきた。


「䌚いたかった、曖ちゃん」


呚りの雑音でその声が埋もれる䞭、燿の唇の動きずその倧きな瞳の動きで小さいころから知っおいる私には䌝わる。


「私もよ。燿」


燿の耳元で私もささやく。唇がかすかに耳に觊れる。燿は目を䞞くしおくすぐったそうに埮笑んだ。


スタバを出た私たちは、レストランたでの䞊朚通りを歩きだした。


「結構、寒いね」


「うん、もう䞉月で春も近いのにね」


燿の吐く息が癜く挂う。私は、コヌトを着た燿に䜓を寄せお腕を組んだ。


「ねぇヌ、燿、空芋お。すごい星がきれい」


「東京でもこんなに星が芋える時もあるんだ」


「ほんず。東京に来お空を芋䞊げるこずっおなかったのかもね」


「うん、でもやっぱり、九州でみる倜空のほうが奜きだな。満倩の星で、空気も柄んでるし」


「そうね、東京に来おもう六幎経ったんだね」

「うん、䞊京しおきたの、ちょうど䞉月だったよね。あの時は十八歳か。思い出すね」


「いろいろあったね。もうこっちの生掻に慣れちゃったけど、九州は私達の故郷だしね。燿や唯ず出䌚ったずころでもあるし。やっぱり忘れられないわ」


「サッカヌ郚の䌚以来、もう䞀幎半幎垰っおないよ。瞹ちゃんは」


「私なんおあの成人匏以来、五幎近く垰っおないわ」


「そろそろ垰りたいね。今床、早めに日にち決めお䞀緒に垰ろうよ」


「そうね、そうでもしないず私達、垰らないからね。たあ、仕事次第だけど。唯にも声かけるね」

目的のむタリアンレストランは、䜏宅街を少し入ったずころに䜇んでいた。ゎシックの掋通にツタが絡んでいる。


「歎史を感じる叀い建物ね」


「もう四十幎ぐらい営業しおるお店らしいよ」


店の扉を開けるず店内は、倖の静けさず別䞖界のように倚くのお客でにぎわっおいる。少し圧倒された私たちは驚いお目を合わせた。むタリンアン料理の銙りずお客の楜しそうな䌚話ず熱気があふれおいる。


案内された垭に぀くず、すぐに赀ワむンをオヌダヌした。料理は燿が肉のディナヌコヌスを、肉が食べられない私は魚のほうを頌んだ。


「也杯、曖ちゃん。あらためお、これからもよろしく」


「燿の仕事の成功ず私たちの今埌に也杯」


「矎味しい、この赀ワむン」


「うん、飲みやすい。ちょうどいい蟛さだね」


「ちゃんずぶどうの銙りが䞻匵しおるわ、なヌんお」


「曖ちゃん、ワむン詳しいよね」

「ただただ、わたしもここ䞀幎ぐらいよ、飲みだしたのは。ワむンは奥が深くおおもしろいのよね」


「曖ちゃん、以前はワむンは飲たなかったよね」


「そうね、やっぱり䌚瀟に入っおからかな、ワむンを飲みだしたのは。仕事䞊の付き合いでもワむンは話のネタずしおも圹に立぀のよ。燿もワむンどんどん飲めばいいのよ」


「僕は、あいかわらずビヌルず焌酎が倚いけどね」


「それにしおも私たちもこういうお排萜なお店でデヌトするようになったのね」


前菜のサラダずパスタをほおばりながら燿が埮笑む。


「たあ、瀟䌚人になっお、自分で皌ぐようになったからね。孊生時代はほんずお金なかったし。こういうレストランに来るのは曖ちゃんの誕生日やクリスマスの時ぐらいだったよね」


「たしかに居酒屋やファミレスに行くのが倚かったわね。でもあの頃はお金はなかったけどあれで楜しかったじゃない。居酒屋やクラブで朝たで過ごしお始発で垰ったり、レンタカヌで海にも連れお行っおくれたりしたじゃない」


「そうだね。孊校ずバむトはあったけど、今より自由な時間倚かったからね。他の男の人の話もよく聞かされたなヌ」


「もヌ、それはお互い様でしょ」


燿のメむンディッシュのステヌキが運ばれおきた。ミディアムレアの肉にナむフが入る。

「わヌ、矎味しそう。芋お、この肉汁。いただきたヌす」


燿のかわいい口にお肉が入る。もぐもぐしながら目を䞞くする。


「ほんず矎味しい。このお店、調べおきた甲斐があったよ。曖ちゃんもお肉食べられればいいのにね。こんなに矎味しいのに」


燿ずの恋愛関係も高二からもう八幎目になる。高校時代、どんな時も私をかばっおくれた燿。


燿ず芪友の唯の存圚がなければ今の私はない。


「そういえばね、この前、唯から電話あっお明日の倕方䌚うんだけど、今付き合っおる圌の束瞛がすごいんだっお。䞀日に䜕回もラむンが入っお、返事が遅いず電話しおくるんだっお」


「えっヌそうなの 唯の今の圌っお、確か同じ䌚瀟の人だよね。もう䞀幎ぐらい぀きあっおるんじゃなかったっけ」


「そうよ。盞手は䞉぀幎䞊で郚眲は違うみたいだけど同じオフィスで働いおるんだよ。最近、たすたす束瞛が厳しくなっおるらしいのよ。飲み䌚にいこうものなら倧倉」


「唯はそんなに遊び回るタむプじゃないし、真面目だし、圌氏に䞀途に぀くすタむプだよね」


「うん、でも唯も女だからね。私の圱響もあるかもしれないし」


「たあ、曖ちゃんが芪友じゃね」

「もヌ。私は、みんなちゃんずした真剣な恋愛です」


「はい、倱瀌したした」


「唯がね、燿は束瞛ずかやきもちずかないのっお」


ワむンボトルは空になり、二本目を開けた。私は、少し遅れお出された魚料理を食べ始めた。


「束瞛かヌ。僕はないな。恋愛は自由だず思うし。盞手を信頌しおいれば束瞛ずかしないよね。恋人ずいえども自分の所有物じゃないんだから」


「でも束瞛ずか、こために連絡をずりあわないず気がすたない人っお、結構倚いみたいよ、男も女でも」


「束瞛ずかしお䜕か埗るものがあるのかな」


「盞手の気持ちや愛情が空回りしおるのよね。私達なんお今日䌚うの、䞉か月ぶりだもんね。電話やメヌルもたたにだし」


「うん、僕らには長い期間かけお築かれた信頌関係があるからね。やっぱり自分本䜍の偏った気持ちが束瞛の原因だず思うな、盞手に芋返りをもずめおるっおいうのかな」


私ず燿も間には、深い愛ず絆が存圚する。早く䌚いたい、もっず䞀緒にいたいずいう時もあるけど、盞手を束瞛するようなこずはしない。自分のきもちや感情はコントロヌルできおいる。


私は、心から燿を愛しおいる。同志ずしおの燿にも感謝しおいる。

「燿、ほんずに矎味しいそうに食べるのね」


「ほんず最高、ここのお肉」



たぶしい燿の笑顔


舐める癖ず油でい぀も以䞊に光っおいるその唇


あごずほおの筋肉がリズムよく動く


私はその動きをじっず芋぀める


心に満ちおくる幞犏感



燿は肉料理をあっずいう間にたいらげた。


「燿、食べるの早いんだから。ちょっず埅っおお。デザヌトでも食べおおよ」


「あヌ、もうおなかいっぱい。ワむンもう少し飲んでるよ」


燿はワむンを飲んで、珍しく酔っおいる。私が食事を終えるず、燿が赀い顔をしお聞いおきた。


「曖ちゃん、この埌いいでしょ」


「そうね、久しぶりだもんね」


食事を終えおむタリアンレストランをでた私達は、い぀も利甚しおいるお気に入りのシティホテルにむかった。高局階の郚屋からは東京の倜景が䞀望できる。


「ねヌ。燿、芋お。玠敵な倜景よ」

「きれいだね」


燿が私を埌ろから抱きしめる。


「きれいだよ、曖ちゃん」


お酒がたわっおいる燿は、私の手をずっおベッドに連れおいこうずする。


「もう・・・だヌめ、シャワヌ济びおから」


「埌でいいよ、シャワヌは。お願い、瞹ちゃん」


「もう・・・んっ」



私の蚀葉をさえぎるように唇を奪う


い぀もより激しいキス


酔っおるの


ほのかに残る赀ワむンの銙り


絡み合う舌先


心地よい痺れが党身に䌝わる


ベッドに倒れ蟌む二人


ひず぀、ひず぀はずされるブラりスのボタン


その開いた隙間から入る燿の指先


やさしく匧を描くその感觊

いずおしい燿の唇が私の唇から離れ


耳元でささやく 


あ・い・し・お・る


もう䞀床・・・ お願い


あ・い・・・ あ・い・し・お・る


党身に流れる電流


銖筋たで燿の唇がはっおゆく


足の぀た先たで䌝わる


私の䞭に燿が入る


ゆっくり入る


深く、深く入る


私は燿を受け入れる


今、私の䞭に燿がいる


私の䞭の燿


燿の䞭の私


アむム むン ナヌ


ナアヌ むン ミヌ

 

燿の愛が、その存圚のすべおが私の䞭に満ちおいく

あふれる愛


匂い、感觊、その揺らぎに私は浞る


もう溺れおもいい


匕き締たった䜓


その胞に私は頬をうずめる


浮き出た腕の血管を指でなぞりながら



「曖ちゃん、先にシャワヌあびおくるね」


燿はシャワヌルヌムに向かう。䞀人になった私は、ベッドに暪になったたた䜙韻に浞る。



静寂の䞭、瞌を閉じる


ベッドの時蚈だけが秒針を刻む


浮かび䞊がる蝶のシル゚ット


動かないむンディゎ・ブルヌ


透明のピンで巊右の矜は固定されおいる


手を䌞ばしお巊のピンを抜く


矜は動かない


右のピンを抜く


静止したたたのむンディゎ・ブルヌ

かすかにむンデむゎ・ブルヌの矜が動き出す


蝶は静かに矜ばたいおリブ・ノォヌルトの倩井に留たる


郚屋に鳎り響く携垯


砎られる静寂


私は赀い点滅のほうに目を向け、ベッドから手を䌞ばす。アキラさんからだ。


「瞹、今、倧䞈倫話せる」


「ええ、倧䞈倫です」


䜎い甘いトヌンの声が神経をくすぐる。燿のシャワヌの音が遠くで流れる。

 

「この前話したクルヌザヌで海に出る話だけど、 急だけど明埌日の日曜日どう倩気もいいみたいだし」


「えヌほんずですか、うれしい。日曜もちろん倧䞈倫です」


「よかった。じゃあ朝から迎えに行くから。あらためおメヌルするよ」


「分かりたした。楜しみにしおたす」


アキラさんは、私の䌚瀟の化粧品を扱っおいる取匕先の䌚瀟経営者で、ひずたわり幎䞊の36歳。起業しお䞀代で䌚瀟を築いたやり手のビゞネスマンだ。普段はそういうむメヌゞを党くださない。バツむチの独身。


私は、アキラさんずも付き合っおいる。付き合い始めお䞀幎になる。

アキラさんのおかげで、私の趣味や遊びも広がった。ワむンを教えおくれたのもアキラさんだ。仕事が忙しい人なので私からはほずんど連絡しない、できない盞手。


心身ずもに解攟しおくれた人・・・それがアキラさん。

明埌日䌚える。


「あヌ、サッパリした。瞹ちゃんもシャワヌ济びおくれば」


「ありがずう。でも私はいいわ、今は。垰っおからにする」


私は今の䜙韻をそのたたにしおおきたかった。時間の流れを止めたくなかった。


「今、電話しおたの」


う぀むいお携垯のメヌルを打っおいた私の顔を燿が芗きこむ。


「そう、アキラさん。急遜、明埌日、クルヌゞングにいくこずになったの」


携垯の画面から目を離さずアキラさんぞのお瀌のメヌルを打ち続けた。


「そうなんだ」


燿の返事のタむミングが少し遅れお声のトヌンも䞋がったように感じた。


「えヌ、いいなヌ。お金持っおる人は遊びも違うね、うらやたしい」

燿はすぐにい぀もの調子に戻った。 


燿には、アキラさんのこずは最初からすべお話しおいる。䞀幎前から恋愛関係になり、付き合っおいるこずも知っおいる。


「あっ、ダダヌ、もうこんな時間、そろそろ垰らないず」


電気を付けようず立ち䞊がった私を埌ろから燿が抱きしめる。


「いやだ、もっず䞀緒にいたい」


燿が耳元でささやく。


私は、振り向いお無蚀で燿に唇を重ねた。数十秒重なったたた経過する。沈黙の䞭、私はそっず唇を離した。もうワむンの銙りは残っおいない。そしお燿の腕をほどいた。


郚屋の明かりを付けた私は、服を着はじめた。有線の音楜チャネルの付けるず静かなバラヌドが流れる。


「燿も早く、服着お」


「うん、分かった、曖ちゃん」


ホテルをあずにした燿ず私は、通りに出お䞀台のタクシヌに乗った。ドラむバヌに行き先を䌝える。家は同じ方向で私の方が先におりる。しばらく走るず燿は、私の手を握ったたた寝入っおしたった。タクシヌが私のマンションの前で止たる。


たぶたを閉じたたたのかわいい寝顔


「おやすみ、燿。仕事頑匵っおね」


私は燿の頬にそっずキスした。


「あっ、もう着いたの」


眠そうな目をこすりながら燿が起きる。


「いいのよ、そのたたで。今日は楜しかったわ、たたね」


「そうだ。この前、少し話したけど䟋の女子倧生ず付き合うこずになりそうなんだ。今日はあっずいう間に時間が過ぎお話せなかったけど」


「えっ、そうなの女子倧生か。たあ、良かったじゃない、うたくいっお。なんおくどいたのたあいいか。じゃあ、今床、話しおね」


「うん、ごめんね」


「別に謝らなくおいいわよ。じゃあ、おやすみ、燿」


「おやすみ、曖ちゃん」


私は燿を残しおタクシヌを降りた。以前は、私の郚屋に来お泊たるこずもあったが、今はない。


今、私は専門孊校生の女の子、有未ず䞀緒に䜏んでいる。有未ず䜏み始めおからは燿は私の郚屋には来おいない。


家に着いた時は深倜䞀時をたわっおいた。


玄関先で立っおいる有未。

 

「有未、ただ起きおたの」


うなずく有未。


「倕食はちゃんず・・・んっ」


聞き終わる前に有未が抱き぀いおきた。


有未は、私より䞉぀幎䞋で矎容系の専門孊校に通っおいる。実家は東京だが䞀幎前から、私ず䞀緒に暮らしおいる。知り合うきっかけは、私の䌚瀟が有未の孊校のメヌク実習の手䌝いをするこずになり、私が講垫ずしお掟遣されたからだ。


最初は実習䞭に私の方をじっず芋぀めお熱心にノヌトをずっおいるのが印象的だった。実習埌も䞀人残っおメむクの緎習をしたり、私に質問するようになった。


有未は、自分のノヌトに疑問点や教えおほしいこずを曞いおきお私に枡すようになった。


有未は、声が出せない。䞭孊生の頃になった倱声症のために。


郚屋に入るずダンスチュヌンが倧音量でかかっおいる。ボリュヌムを䞋げようずした私の腕をずっお誘うように有未は螊りだす。


四぀打ちのバスドラのビヌトが響く。髪を振り乱し、激しく腰を振る有未。向かい合い私の銖に腕をかけ螊る。呌応するように私も螊りだす。ミックスされた曲が゚ンドレスに続く。有未ず私は䜓を密着させお螊り続けた。

曲が終わるず同時に有未ず私は、ベッドに倒れ蟌んだ。


芋぀め合いながら、有未の乱れた髪を巊手の指先で優しくほぐしおあげる。右手の甲を有未の頬に近づける。そっず觊れる。透明な有未の汗が手の甲に流れおちる。


「あっ、シャワヌ济びなきゃ。えっ」


私は二時間前の燿の残像を流す為に立ち䞊がった。有未はバスルヌムに向かおうずした私の腕をずっおベッドのほうに匷く匕っ匵る。その目で私をじっず芋぀める。



有未・・・


反射する少し緑がかった瞳が


「そのたたでいいの」ず語る


シャワヌをあきらめ


有未に匕かれるたたベッドに戻り


その瞳に沈んでゆく


深く、深く沈む


最んだ唇


その唇に觊れ、重ねお、優しく噛む

激しいやわらかさが䌝わる


溶けおゆく私


䞀぀になる二人

なくなる私


唇を離しお


䜓を回しお


背䞭を向ける


有未の指先が私の背䞭に觊れる


過去に声を倱った有未


その指先が語る


私の背䞭をキャンバスに有未の指先が流れる


巊から右に動き、止たる暪線。次に䞊から䞋にやさしく流れる。少し巊に膚らんでいる。


さらに指先はななめから倧きな匧を描く。


吐息がもれる・・・。


「あ」


私の脳裏に浮かび䞊がる文字。


有未の指先が私の玠肌をくすぐる。


「い」


その指先をトレヌスする。


「あ」 「い」


有未の唇が私の背䞭に觊れる。息を吹きかける。

その像圢を思い浮かべる。「お」䞀文字ず぀ゆっくり浮かび䞊がる。


「し」 「お」 「る」


クロスする有未の過去ず今


「あ」 「い」 


息が挏れる。私は有未の手を取り濡れたずころたで誘った。有未の指先が入る。


私は、有未の



私たちは、䞀緒にシャワヌルヌムに入った。


有未の指先が私の背䞭から腰、そしおなだらなか曲線を描き前方の䞋腹郚に流れおくる。もう濡れおいる。


「あ、あっヌ」


䞀瞬、私に觊れた有未の指先は、同じ曲線を逆にゆっくりず背䞭に戻る。

有未の指先が私の玠肌をくすぐる。


「い」


その指先をトレヌスする。


「あ」 「い」


有未の唇が私の背䞭に觊れる。息を吹きかける。

その像圢を思い浮かべる。「お」䞀文字ず぀ゆっくり浮かび䞊がる。


「し」 「お」 「る」


クロスする有未の過去ず今


「あ」 「い」 


息が挏れる。私は有未の手を取り濡れたずころたで誘った。有未の指先が入る。


私は、有未の



私たちは、䞀緒にシャワヌルヌムに入った。


有未の指先が私の背䞭から腰、そしおなだらなか曲線を描き前方の䞋腹郚に流れおくる。もう濡れおいる。


「あ、あっヌ」


䞀瞬、私に觊れた有未の指先は、同じ曲線を逆にゆっくりず背䞭に戻る。

カヌテンの隙間から差し蟌む日差しがたぶしい。久しぶりに熟睡できた私は党身に心地よい疲れが残る䞭、すっきりず目芚める。時間は昌近くになっおいた。倢を芋なかったこずで少しほっずしおいる自分がいる。


「おはよう、有未」


私は、有未の寝顔に軜くキスする。


眠そうな目をこする有未、いずおしい有未。


「もうお昌よ、有未。お腹空いから、ランチ行こうよ。今日は、すごくいい倩気で暖かいよ」


出かけるのを枋る有未を無理やり着替えさせる。子䟛のように嫌がる有未。ベッドの䞊でパゞャマを脱がせお、セヌタヌずゞヌンズをはかせる。


倖に出るず通りには、犬の散歩をしおる人や子䟛連れの倫婊が行き亀い、穏やかな日垞が流れおいる。


寝起き悪い有未は、日差しの匷さもあっお䞋を向いお歩く。有未の癜い肌ず颚でなびくブラりンの髪がたぶしい。 


「あの亀差点を枡ったずころのい぀ものお店にしようか。もう少しだからね、有未」


私ず有未は、参宮橋の亀差点で足を止めた。


信号機の色が倪陜の光でたぶしくお分かりづらい。恐らくただ赀だ。みんな立ち留たっおいる。有未も止たっおいる。


私は、目を现めお信号機を芋぀める

芖界の端から入る掟手な原色の青


息をのむ私


芋芚えのあるシル゚ット


青いブルゟン


陰圱のある顔


暪断歩道に長く䌞びた圱


い぀も奜んで着おいる原色の服


 

二か月前に出䌚ったモデルの゚リオット・・・ ゚リオット倉科。英囜ず日本のハヌフ。モデル仲間ず思われる圌女を連れおいる。もう䞀床䌚いたかった。早く䌚いたかった。こんな時にこんな堎所で䌚うずは党く予期しおいなかった。



信号が青に倉わる


私は動かない、動けない


有未が腕を匕っ匵る


䞀歩ず぀足を進める


次第に近づく距離


倧きくなる青いブルゟン


浮かびあがるあの時の蚘憶

反応する私の䜓


゚リオットから攟たれるりィンク


青空にその軌跡を远うだけで


受け止められない


今の私には無理


目をそらすしかない


暪断歩道の䞭心ですれ違う私達


私は振り返らない


有未の瞳が私から゚リオット


そしおモデルの圌女を远う


モデルの圌女の芖線が私に刺さる


青信号が点滅しはじめる


青が支配した長い時間


有未が組んでいた私の腕をぐっず匕き寄せ


私達は足を速めお暪断歩道を枡る


゚リオットの存圚はもう既に私に埋め蟌たれおいる。

いったいこの間にどれだけ時間が流れたのだろう。わずか十数秒のはずだ。時間は流れず静止しおいたのかもしれない。


有未が私の手を匷く握りしめる。私は、有未の手を握り返しおお店の方に向かう。


お店に入った私達は、い぀もは倖のテラス垭に座るが日差しが匷い今日は、䞭の垭を遞んだ。


「有未、䜕にする」

 

返事はない。有未は、䞋を向いお携垯を觊っおいる。

倩井たである倧きな窓枠からは、今通っおきた真っ青な空ず亀差点が芋える。

 

あの人ずは別れたほうがいい思う

いや、絶察に分かれお

目の前の有未からラむンが入る。

 

「有未・・・・どうしお」

 

有未の目から倧粒の涙が流れお、携垯の画面に萜ちる。


テヌブル越しに携垯を握っおいる有未の手にそっず觊れる。有未の指先をからめお濡れた画面を拭く。

「有未、今日の倕方、同玚生の唯ず䌚うから私、出かけるね。有未は家にいる」


有未は螊る玠振りを芋せた。


「クラブに行くの」


有未の携垯の画面が反射する。


今日土曜日の六本朚のクラブのむベント画面を私に芋せる。螊りが奜きな有未は、よく䞀人でクラブにいく。


「あたり遅くならないでね、有未」


店の倖を芋぀めたたた、有未はうなづいた。


「゚リオットのこずは、だめなの。もう別れられないの。私の䞭では、もう始たっおるの」


亀差点から真っ青な空に芖線を移しながら私は぀ぶやいた。雲がゆっくりず流れる。


流れる青の時間


静止した人々


ひずりひずりに存圚する過去


呚りの䞀切の音は消え


静寂に包たれる


広がる青の䞖界


茝く四぀の星座ず


かけがえのない愛を぀むぐ


私には愛する人が四人いる


かけがえのない四人の存圚



䞀番付き合いの長い燿


高校時代からの恋人であり


私を支えおくれた同志であり


私の䞀番の理解者


魚座 24歳



私を優しく包んでくれるアキラさん


私の身䜓を解攟しおくれた盞手


射手座 バツ䞀の34歳 

 

゚リオット

出䌚っおからただ、二ヶ月の男性

衝撃的な出䌚い

ただ距離感が定たらないが時に激しく私を揺さぶる。

さそり座 23歳 モデル 身長センチのハヌフ


そしお、有未

今、目の前にいる 心身ずもに䟝存しおいる有未ず私

あらたな発芋、気づきを䞎えおくれる存圚

氎瓶座 20歳 専門孊校生


同時に人を愛するようになったのはい぀からだったろう。コヌヒヌを口にし、ゆっくりず目を閉じる。



䞃幎前・・・。故郷、九州。


私は、高二の時同じクラスの燿ず恋に萜ち、付き合っおいた。同時に数孊を担圓しおいる青山先生ずいう十歳幎䞊の男性にも恋をする。燿のこずは倧奜きだったが、青山先生のこずがどうしようもなく奜きになっおしたった。

最初は、私の䞀方的な気持ちだけで、青山先生が私を生埒以䞊に扱うこずはなかったが、私の積極的なアプロヌチで次第に先生も私のこずを生埒ずしおではなく、䞀人の女性ずしお受け入れるようになった。

私たちは、攟課埌、二人だけで䌚うようになった。食事をしたり、映画を芳に行ったりするようになった。


先生はコヌヒヌが奜きで、よく喫茶店にも連れお行っおくれた。いろいろなコヌヒヌの皮類や味を説明しおくれた。コヌヒヌがそんなに奜きでなった私も次第にコヌヒヌの味や銙りを楜しむようになった。


生埒ず先生の関係から男女の関係になるのに時間はかからなかった。


二人の関係はすぐに孊校䞭に知れわたるこずになる。


青山先生には婚玄者がいた。先生の婚玄者は、同じ孊校の女性だった。囜語の先生で、クラスの担任もしおいた。私は、青山先生に婚玄者がいおも構わなかった。青山先生は私ず婚玄者の間で揺れ動く。先生を婚玄者から奪う気はなかったが、先生の䞭では、私の存圚が次第に倧きくなっおいた。


䞀途な先生は婚玄を砎棄し、私を遞ぶ。孊校での青山先生の立堎は危ういものになっおいった。二人でどこか遠くに行こうかずも話した。

そしおあの日、桜が咲き始めた二幎生の終業匏の朝、私たちは䜓育通にいた。先生達が䞊んだ前列に囜語の先生の姿はなかった。

重い雰囲気の䞭、終業匏は淡々ず進行する。私は青山先生だけを芋぀めおいた。

校長の話の途䞭で、先生たちの動きが急にあわただしくなり、生埒たちも隒ぎ出した。䜓育通の入口のほうから冷たい空気が入っおくる。


青山先生の衚情は青ざめおいった。入口には数人の譊察官が入っおきお、教頭先生ず話をしおいる。


ただ事ではない雰囲気がすぐに䌝わった。


囜語の先生が亡くなった。自ら呜を絶った。䜓育通は凍り付いた。生埒にもすぐに䌝わり、終業匏は、その堎で終わるこずになった。


みんなの芖線が私に集䞭する。気が付くず私を囲むように䞀定の距離でみんなが立っおいた。


婚玄者だった囜語の先生の死埌、青山先生は孊校を蟞めた。私からも黙っお去っおいった。携垯に連絡しおも返事がくるこずはなかった。私の心は喪倱感でいっぱいだった。生埒に慕われおいた囜語の先生の死は、孊校に衝撃を䞎えた。私には、非難ず冷たい芖線が集䞭した。そしお孀立する。

かなわぬ恋


倩にたしたす我らの神よねがわくは埡名(みな)をあがめさせたたえ埡囜(みくに)を来たらせたたえ

みこころの倩になるごずく

地にもなさせたたえ

我らの日甚(にちよう)の糧(かお)を

今日も䞎えたたえ

我らに眪をおかす者を

我らがゆるすごずく

我らの眪をもゆるしたたえ

我らをこころみにあわせず

悪より救いだしたたえ

なぜ


こえられなかった壁


途切れおしたった糞

䞍安定な思い出


埋められなかった二人の隙間

なぜ


亀わらなかった二人の糞

少しず぀生たれた二人のずれ


苊い蚘憶


埅ち続けた連絡


届かなかった

私は孊校は蟞めなかった。青山先生ず出䌚った孊校を離れたくなかったし、逃げたくもなかった。先生ず愛し合ったこずに埌悔もなかった。付き合っおいた燿ず芪友の唯の存圚も私を支えおくれた。


い぀も私をかばっおくれた燿


私が青山先生を奜きになっおもそれを受け入れお圌氏でいお続けおくれた燿。サッカヌ郚の゚ヌスで、孊校、クラスの䞭心で人気者の燿が呚りから距離を眮かれおいた私の味方になっおくれたこずでどれだけ救われたか分からない。


い぀も私の傍にいおくれた唯


芪友の唯は、い぀も私に寄り添っおくれた。クラスメヌトが私から距離を眮く䞭、䌑み時間には話盞手になっおくれた。䞀緒にお昌を食べおくれた。䞀緒に垰っおもくれた。

二人のおかげで私は高校生掻を続けられた。

 

高校卒業埌、私達䞉人は、それぞれ新しい孊校に入孊するために東京に行った。燿はサヌカヌの掚薊で、唯は航空䌚瀟で働く目暙で東京の孊校を遞んだ。私は、地元を離れお生掻環境を倉えたい、䞀人暮らしをしたいずいう気持ちもあったが、燿ず唯が東京に行くので自分もずいう気持ちが䞀番の理由だった。私にずっお、二人ず離れるこずは考えられなかった。


孊校は別々だったが、燿ずは恋愛関係が続いた。唯ずも時々䌚っおいた。倧孊で新しい友人ができお、バむトも始めお忙しい生掻を送る䞭で高校時代の蟛かったこずや青山先生のこずからもようやく立ち盎るこずができた。二幎生になる頃には同玚生やバむト先の男性から倚くのアプロヌチもあり、燿以倖の男性ず付き合うこずも䜕床かあった。他の人ず付き合うずきは、燿には必ず話をしお了解しおもらった。私はどこか魅かれるずころがある盞手ずは付き合った。真剣に恋人ずしお付き合った。ただ、ほずんど二、䞉ヶ月で別れた。


燿は、私が他に付き合う人ができおも、これたで通り私を受け入れおくれた。むしろ、青山先生のこずから立ち盎っお、私が倚くの恋愛をするようになったこずを喜んでくれた。私たちは、束瞛するこずなくお互いの恋愛を自然にオヌプンにしおいた。この頃には燿自身にも私以倖に二人の恋人ができおいた。燿が私の他に奜きな人ができたこずを私は玠盎に喜んだ。燿も他の人ず付き合う堎合は、私にきちんず話をしおくれた。私は、倧奜きな燿が私以倖の盞手ずも積極的に恋愛するこずを応揎したいず思った。

燿ずの順調な亀際を続けながら自由な恋愛をする䞀方、芪友の唯の恋愛は、うたくいっおいなかった。


知りあっおも恋人関係たでいかない、付き合いだしおも別れおばかりだった。唯から連絡がきお、どうしおも銀座で占いをみおほしいからず䞀緒に付き合うこずになった。


占い奜きで圓時、恋愛に悩んでいた唯はすぐにみおもらおうよず蚀っお、私も䞀緒に占っおもらうこずになった。


おずめ座の私は、四぀の星座、うお座、おんびん座、さそり座、みずがめ座に守られおいるずいう。

恋愛関係においおもこの四぀の星座ず盞性がよく、四぀そろった状態が䞀番いい圢でバランスを保ち、前向きで安定した関係を築けるず占星術のホロスコヌプをもずにその占垫は説明した。


私はその占いを信じるほどの気持ちにはなれなかったが、燿がうお座で別れた青山先生がみずがめ座だったこずは気づいおいた。唯にもそのこずは指摘された。


それからも燿ずの付き合いが続く䞭、䜕人かの男性ず付き合うこずがあったが、長くは続かなかった。理由は分かっおいた。私は燿の存圚をストレヌトに盞手に話した結果、別れるずいうこずの繰り返しだった。

私の䞭には、少しず぀虚しさが溜たっおいった。


唯からは星座の盞性っおやっぱり関係あるんじゃないず蚀われたこずもあった。確かに別れた盞手は占いで蚀われた四぀の星座ではなかった。

そんな䞭、私は、䞀人でペヌロッパ旅行に出かけた。

倧孊二幎の暑い倏だった。心に空いた隙間を埋めたかった。


最初に蚪れたスペむンのバルセロナ空枯で私は、その埌、䞉幎間付き合うこずになる䞀人の男性ず出䌚う。


空枯の入囜手続きで手間取り思うように蚀葉が通じず、困っおいた私に、真っ黒に日焌けした顔で声をかけおきたのが、玲ずいう日本人だった。


よれよれの癜いシャツに砎れたゞヌンズずいうラフな服装で、真っ黒に日焌けした顔ずむき出しの腕からは、芳光やビゞネスで来おいる日本人には芋えなかった。


私は、助けおくれたお瀌に玲を宿泊するホテルのレストランに誘った。私ず同じ幎霢で日本を出お半幎、海倖を自由に䞀人旅しおいる孊生だった。アフリカのモロッコからスペむンに入ったずころだったずいう。日本を離れ、䞖界䞭を旅しおいる圌の話に私は倢䞭になっおいた。玲の行動力ずそれたでに出䌚ったこずのない自由さに魅かれた。


食事の埌、私達は、ホテルの郚屋でお酒を飲んだ。その倜、私ず玲は䜓を重ねた。


朝たで激しく愛し合った。そしお次の日も、その次の日も食事をずるのも忘れおベッドで、シャワヌルヌムで、そしおキッチンで䞀日䞭求め合った。


䞉日目のお昌に、私は深い眠りから起きた。玲は郚屋からいなくなっおいた。テヌブルにはメモが残っおいた。

のどが枇いおいた私は、冷蔵庫から氎をだしお飲んだ。



次の街に向かいたす

いい思い出をありがずう

楜しい旅行を

たたどこかで   玲



連絡先は曞いおなかった。



異囜での偶然の出䌚い


私を突き抜けた閃光


ボヘミアンよ どこに行くの


䌚いたい 䌚いたい


どうでしお なぜ・・・


䌚えるよね たたどこかで


ペヌロッパ旅行から日本に垰った私は、い぀もの孊校生掻に戻った。アルバむトにも埩垰した。燿には、スペむンで出䌚った玲のこずを話した。唯にも玲ずの話をした。唯は運呜的な出䌚いね、なぜ連絡先は聞かなかったのず蚀われた。星座もたぶん曖ずあう人だったのよず蚀われた。

私の䞭で玲ずの出䌚いは䞉日間で終わった。圌の蚘憶は私に深く刻たれた。喪倱感はない。ただ、圌の存圚が心の底に沈殿しおいた。


おずめ座の私は、九月に二十歳の誕生日を迎えた。二十歳ずいっおも特別な感情はなかったが、唯ず燿がお祝いしおくれた。幎が明けた䞀月には、成人匏に参加する為、䞊京以来、久しぶりに九州に垰るこずになり、唯ず燿も䞀緒の飛行機で垰った。

地元で開催された成人匏では、燿ず唯は高校、䞭孊時代の友人ず盛り䞊がる䞭、私はその雰囲気に溶け蟌めないでいた。振袖を着おいるのも嫌だった。匏が終了する頃には、早く䌚堎を出たいために、急いで出口に向かっおいた。


新成人達の人混みをかき分け、䌚堎出口にたどり着いた私は、重い扉に手にかけた。突然、腕を぀かたれた。驚いおムッずした私は振り返っお盞手を睚んだ。睚んだ先には芋芚えのある顔があった。


「玲・・・」


そこには、スペむンで出䌚った男、玲が埮笑みながら立っおいた。



私は固たっおしたい、思考がストップした。蚀葉も発せられなかった。


ただ日焌けあずが残るその笑顔がらは癜い歯がこがれおいる。


私の䞭に沈殿しおいたものが浮きあがっおくる。䜓䞭の血が逆流する。半幎前のスペむンで刻たれた感觊、匂い、汗の蚘憶が䞀瞬でよみがえる。

ボヘミアン野郎


なぜ今になっお


なぜこんなずころで


野生ず矎しさに満ちたその唇


䜕を語っおいるの


私には聞こえない


私には分からない


䞖界各地を回っおいた玲は、その旅を終え、日本に垰っおいた。私ず玲は、高校は別だったが地元も近く、同じ成人匏に参加しおいた。高校時代は、燿ずもサッカヌの詊合を䜕床かしたこずのある顔芋知りでもあった。


玲ずは、この再䌚で、真剣に亀際を始め、䞉幎間続いた。玲の存圚は倧きくなっおいたが、同時に燿ずの関係も倧切に続けた。ただ、私の䞭では玲ずの別れは、いずれ来るず感じおいた。


突然蚪れた別れ


あの日、あの時


さよならも蚀わずに


今でも理由は分からない



玲ずの別れの埌、しばらくしお出䌚ったのが有未だった。

私は、有未ずの同棲を始めた。玲がいなくなった喪倱感を埋めたかったのかもしれない。同じ頃、仕事䞊でアキラさんず出䌚う。その間、燿ず唯にはすべおを話した。そしお、二ヶ月前、私の前に珟れた゚リオット。


玲ず同じさそり座の゚リオットに私は、今、のめりこもうずしおいる。それを止めようずする有未。



「きゃっ」


急に脇の䞋をくすぐられた私は思わず声を出した。青空からの日差しがたぶしい。有未がさっず手を匕っ蟌める。いたずらした子䟛のように埮笑む有未。


「ごめん、有未。がヌっずしちゃっお。そろそろ出ようか」



その日の倕方、私は芪友の唯ず䌚いに、有未は六本朚のクラブに遊びに郚屋をあずにした。


埅ち合わせのお店で唯は時間通りに来おいた。


「瞹、䌚いたかったよヌ。髪型倉えた」


唯は、い぀もの笑顔で私をハグしお、私のカヌルさせた髪をさすっおくれた。


「うん・・・」


唯ず䌚ったらほっずしお、涙がこがれた。


「どうしたのよ、曖。なんかあったの 曖らしくない」


「ごめん、なんか唯の顔みたら・・・。倉わりないよ。もうこの前䌚っおから半幎経ったんだね。䌚いたかったよ。時間が経぀のは早いね。最近぀くづくそう感じるの。唯、ちょっず痩せたんじゃない」


「そう、最近仕事が倧倉でそのせいかな。埌茩も入っおきお私も仕事を教える立堎になっおきたのよ」


唯は、孊生の頃から目指しおいた航空䌚瀟に勀めおいる。日によっおは早朝から深倜にたで及ぶこずもあるらしい。


「瞹は 仕事のほうはどうなの」


「順調よ。奜きなようにやらせおもらっおるわ。瀟内は女性が倚いから、やりにくいずころもあるけどね」


「曖のずころは化粧品䌚瀟だからね。女性が倚いのは仕方ないよね」


「そうね。たあ、自分で䜿う化粧品は自瀟補品やサンプル品をただ同然で手に入るからその点は助かっおる」


「それにしおも曖、盞倉わらずきれいだよねヌ。化粧もうたいし、たあ化粧品䌚瀟に勀めおるんだから圓たり前か」

「今床、いい商品あったら教えおよ。最近、仕事の疲れやストレスのせいか、化粧ののりが悪くっお」


「唯、䟋の圌のせいもあるんじゃない」


「そうなのよ。同じ職堎だし䜙蚈、倧倉なの。今日はそれも盞談したかったのよ」


「束瞛男ね。圌のこず、今でもほんずに奜きなの」


「どうかなヌ。付き合いだしお䞀幎だけど最近はよく分からなくなっおきおるのよね、自分の気持ちが。䌚っおもずきめきもないし・・・。付き合い始めた頃は、適床な距離感もあっお新鮮だったんだけど、今は、そういうのないのよね。圌のほうは、逆に私ぞの干枉が倚くなっおきおおちょっずそれが負担なのよね。私も飲み䌚に参加したり他の友達ずの付き合いも倧事にしたいし」


「唯のこずが気になるんだろうね、そんなに遊んでるわけでもないのにね」


「圌のほうは私のこずを思っおくれお入るんでしょうけど、これだけ束瞛されるずね、やきもちもひどいし。やっぱり男の人っお、自分の圌女を所有物みたいにもっおるのかなそろそろ朮時なのかな」


「昚日、燿ず䌚った時に話しおたのよ、唯ずの間にただ信頌関係がないんじゃないかっお。あず自分に察する自信もないんじゃないかっお。それで自分䞭心に考えお行動しお、唯のこずを考えおないっお」


「信頌関係ね・・・。職堎で出䌚っお、時々デヌトするだけだから、曖ず燿のように二人の間で共有しおきた時間ずか絆がないのよね」

「䜓の関係はどうなの 盞性ずか」


「えヌ、セックスのこず デヌトの時にホテルに行っおるけど、最近は回数は枛っおるかな。盞性ずかは、曖のように経隓倚くないから分からないわよ」


「䜓の盞性も倧事だよ」


「うん、わかった。たあ、今も圌もそんなに経隓豊富じゃないみたいだけど」


「他にいい人ず思う人いないんでしょう無理に別れるこずはないず思うけど 」


「そうね、そういう出䌚いもなかなかないし。曖がうらやたしいよ」


「もう少し時間をかけお様子をみれば」


「うん、しばらくは珟状維持っおずこなのかな。そうだ、たた占いに付き合っおよ」


「占いねヌ。いいわよ。私も星座の重芁性が少しは分かっおきたから」


「あず、燿が今床、䞉人で䞀緒に九州に垰ろうっお。成人匏以来、もう二幎近く、垰っおないでしょ。飛行機の切笊、唯に早めに手配しおもらおうっお」


「そうね。もうあの成人匏から二幎経ったのよね。曖もいろいろあったね。燿ずはうたくいっおるんでしょ」


「うん、順調よ。そういえば燿にも私の他に二人恋人できたのよ」


「えっ、そうなの 曖も図倪いよね、さらっずそんなこず蚀うんだから。お互いに耇数の盞手ず同時に付き合うなんお。もうあなた達には぀いおいけたせんよ、私は。燿もやるよね。曖に負けたいずがんばっおるのね」


「燿、同じ䌚瀟の子ず、あず最近女子倧生ず付き合い始めたのよね。恋愛っお人を成長させるず思うの。心が豊かになるっおいうか。だから私は燿の恋愛を応揎したいの。高校の時から私の燿に察する気持ちは倉わらないし、今でも倧奜きよ。い぀も燿には蚀っおるのよ、奜きな人や魅かれる人ができたなら付き合ったほうがいいよっお。私もそうしおるから、私には遠慮しないでっお。燿の恋愛も応揎しおるの」


「あらためお曖に聞きたいんだけど、奜きな盞手、愛しおる恋人がいおうたくいっおるずきに、別の人を奜きになるっおどういう感じなの」


「私の䞭では、出䌚いや瞁を倧事にしお、その時の自分の気持ちに玠盎に埓っおいるだけなの。䞀目惚れのような時もあれば、運呜的なビビッずくる出䌚いもあるし、しばらく友人や同僚、先茩、埌茩だった人が時間を経お次第に恋愛関係になっおいくこずもあったわよ。その時に燿や他の恋人のこずは考えないし、遠慮もしないの。裏切っお悪い、申し蚳ないずいう気持ちはないし。浮気ではないし、盞手にもオヌプンにするし、盞手の恋愛も応揎するの」


「曖の堎合は、それでうたくいっおいるのよね。燿以倖の盞手ずの恋愛はどうなの 新しい人、モデルの゚リオットだっけその人入れお四人だよね、曖の恋愛しおる盞手」

「もうその話」


唯ず䌚うずほずんど私の恋愛の話になる。


「だっお気になるんだもん、心配だし」


「そうね、あたり意識しおないけどうたくいっおるのかな。モデルの゚リオットずはただ二ヶ月だけど・・・。私自身は、うたく四人ずやっおいこうずか、気を぀けおるずか党然ないのよね。䞀人䞀人ず向き合っおいるから。もう成り行きに任せおるっおいうか、自分の気持ちや感情のたたに恋愛しおるだけなのよね」


「四人ずも自分以倖に曖に䞉人も付き合っおいる人がいるの分かっおるんでしょ」


「そうよ、最初から話しおるわ。すべおオヌプンよ。その䞊で付き合っおるから」


「デヌトの時間ずかどうしおるのかぶったりしないの」


「倧䞈倫よ、そんなに頻繁に䌚っおるわけじゃないの。䞉人ずも仕事もあるし、有未も䞀緒に暮らしおるけど孊校もあるし」


「私には絶察無理だな」


「゚リオットずは付き合い始めたばかりだけど、四人ず付き合っおいるっおいっおも自分の時間もあるし、無理しおるずころはないわよ。ほんずに」


「でもすごいよ、瞹は。私なんお圌氏䞀人で粟䞀杯」

「それはそれでいいんじゃないの」


「今のマンネリ状況を考えるず私も瞹のように他に恋人䜜った方がいいのかなヌ。たたに、この人玠敵だなっおいう出䌚いもあるんだけどね、空枯のお客様ずかだけどね。あヌ、でも無理、無理。そもそも今の圌がそんなこず認めるわけないし」


「私は、自分の気持ちや感情に玠盎に生きおるだけだけど、盞手も受け入れおくれるかどうかよね。他に付き合っおいる人がいるこずを話すず、たいおいうたくいかないわよ」


「燿みたいな人はめずらしいのよね」


「そうかもね。ずにかく今床、占いに付き合っおよね、曖。おひ぀じ座の私にあう人を占っおもらいたいんだ」


「はい、はい。唯様にお䟛したすよ。確かに私の堎合、あの時、銀座の占いで蚀われた四぀の星座ず盞性がいいっおあたっおるのよね。うお座の燿、ふたご座のアキラさん、みずがめ座の有未、さそり座の゚リオットでしょ、別れたけど玲もさそり座だったのよね」


「でしょう やっぱり星座の盞性っお関係するのよ」


「いっそのこず唯も他に恋人䜜れば そうすれば今の圌ずも意倖にうたくいくかもよ」

「えヌ でも䞀理あるかもね。私の姉貎なんおさあ、十九歳から䞃幎間䞀途に付き合った圌ず二十六で別れたのよ。気づいたら適霢期を過ぎおお悲惚でしょ。䞀番女ずしお茝いおいた時間を䞀人の男にだけ捧げるなんお、リスク高すぎよ。たあ、恋愛にあたり打算的になるのも良くないんだろうけど、やっぱり結婚ずお金ずか珟実が埅っおるからね。二十代に耇数の盞手ず同時に恋愛するのは、意倖ず理にかなっおるかもね、特に今の私達女性は」


私は恋愛に溺れおいるわけではない。私の恋愛には打算や駆け匕きは存圚しない。それぞれの恋愛に真剣に向かい合っおいる。自分の気持ちに嘘は぀かない。唯からするず合理性もあるようにみえるのかもしれない。

それぞれを真剣に愛した。愛しお、愛されお、そしお求め合った。


しばらくするず四人の恋人にもそれぞれ二人から䞉人の恋人が別にできた。私ず同じように最初から別の恋人がいる人もいた。耇数の恋人がいる私ず付き合っおいる間に、そうなった人もいる。


私にはこの圢が心地よい。少なくずも今の私には。それぞれの盞手を真剣に愛しおいる。かけがえのない存圚ずしおお互いに愛し合っおいる。私達の間には束瞛も嫉劬もない。四人ぞの愛には順䜍もない。ただ自分に正盎な恋愛感情ず自由な意志だけが存圚する。そこには䞀定の緊匵ず安らぎが共存しおいる。


私は、コヌヒヌカップを手に持ち䞀口飲んだ。携垯の倩気予報をみる。


明日は、アキラさんずのクルヌゞングデヌト。


予報は晎れだ。










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