第41話 「特別に許してあげる」

 着替え一式や歯磨きセットなどを大きなトートバックに入れて美依は俺の部屋に戻ってきた。


「ねぇ、太一、私、シャワー借りていいかな?」

「う、うん。いいよ。って、そんなに遠慮すんなよ」

「うん。じゃあ、太一も一緒に入る?」

「ぐふっ!!!!」


 余りに強烈な言葉のパンチを見事に受けてしまった俺は、無言のままソファーに倒れる。そんな俺を見て、美依はちょっと笑ったような気がした。

 くそっ!俺、なんだか揶揄われてるんじゃない?


 風呂場からシャワーの音が聞こえて来た。


 裸の美依が長い黒髪を洗って、そして白くて長い足を柔らかな木綿のタオルで洗っている…。なんだか、ドキドキが止まらない。実際に見るよりも想像の方がこんなにエロいとはこの年になるまで正直知らなかった。


「ふう、すっきりした。バスの中で寝汗かいていたからすぐに入りたかったのに電気付かないしほんとどうしようと思ったんだよ。ありがとう太一」

「いやいや、困った時はお互い様だって…、それに、俺らもう付き合ってるしさ」

「うっ。そう真面目な顔して言われると…。また、倒れそう…」

「えっ?大丈夫か美依!!」


 俺の胸にゆっくりと顔を埋める美依。


「なんちゃって…」


 く〜〜!!!た、たまらん!!もう、このまま押し倒したい。

 俺は、美依の顎に手を当て顔を上げる。

 そして、ゆっくりと口づけを交わそうとした時…、無情にも来客を知らせるチャイムが鳴った。


「あ〜、もう、いいところだったのに」

「ほんとほんと!」


 いや、いや美衣さん、心の声がダダ漏れですけど!!


 俺は、「はーい」といいながら、ドアノブを回す。

 ドアの向こうには…、なんと塩谷あかりが大きな荷物を持って立っていた。


「お前、なんだよ、なんの用だよ」


 俺は、マイナス百度の冷たい声で撃退を試みる。


「あの、私の部屋、電気が付かないんだ。大家さんに連絡したけど電話に出てくれなくて。私、行く所がないし。だから、泊めてよ。今日一日でいいから」


 口調はいつもの感じだが、心なしか今にも泣きそうなくらい弱っている気がした。


「でも、それは…」と言いかけた時、俺の後ろから顔を出した美依が、「いいよ。じゃあ、今日は三人で朝まで遊ぼうか」と塩谷に声をかけた。

「えっ?いいのか?美依?」

「だって、困った時はお互い様じゃない。特別に許してあげる」


 塩谷も驚いている。


「白石さん、いいの?今夜は二人で…って決めてたんでしょ?」

「いいのよ。だって、シャワーとか浴びたいでしょう?」

「うん」

「じゃあ、入って入って、荷物はそこね。あと、ベットは私と太一が使うから、塩谷さんは床に毛布でも敷いて寝てね」

「えっ、ベットは私と太一君が使うんだけど。白石さんこそ床に寝てよ」

「はっ〜!!!私が許可したから、貴方は今ここにいられるんでしょ?感謝しなさいよ」

「私は、白石さんではなくて、太一君に許してもらったんだけど」


 あ〜、ほんと、水と油だよなこの二人。俺は、ハラハラしながら二人をみている。

 すると、急に美依が俺の方を向き、「あ、の、ね!!!太一!!!なに、ジロジロ見てんの!早く、料理の準備しなさいよ」ととばっちりを受ける恰好となった。


 あ〜、あと少しで濃厚なキスが出来るいいムードが台無しだ…。ふぅ。でも、美依も塩谷も罵倒し合っているけどなんだか楽しそうなんだよな。


 彼女らの口げんかは、まだまだ続いている。

 でも、俺は賑やかなこの空間がまんざらでもない気がしていた。



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第四十一話を読んでいただきありがとうございました!

次回、「添い寝」をお楽しみに!


皆さま、どうぞお時間のある時に遊んでいってくださいね!

引き続きよろしくお願い致します。




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ツンデレな彼女に首ったけ! かずみやゆうき @kachiyu5555

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