造り込まれた設定の数々にそれを綺麗に読ませる作家の力。それがこの作品最大の強みだと思う。
私は、SFを読む時にする「設定を読む」感覚がとても好きだが、反面その情報の多さに押しつぶされて、手を止めることが多かった。
しかしこの作品。細かなネタ(ミーム的なのが多いのかな)と見ていて楽しい掛け合いが多く、「物語と設定を味わいつくしている!」という感覚がとても美味しいと思えた。
物語の概要に入ろう。
アナトリアの巡礼騎士『コッコ=サニーライト』
鯱族の少女『マータ・カルカーサ』
ペットロボットに人格を映した元原型師『イナバ』
それぞれ違った出自を持つ三人は『ストーム・ルーラー』をめぐる流れに呑み込まれることになる。
次章では、一章の舞台である紅港から帰ってきたコッコのアパートが燃やされるところから始まる。どうやら『良い奴』に懸賞金をかけた奴がいるらしく、懸賞首にされたコッコを狙った犯行らしい。その犯人と、燃やされたアパートから姿を消した四人を探すことになる。
この先の展開が楽しみで仕方ないものだ。
それに気になるのが、一章から名前が示されている『ナッシング・レイヴン』。コッコの先生だという。最近忙しいらしいのだが、何をしているんだろうか。わくわく。
世界観、異能力や技術の設定、キャラクター、どれをとってもワクワクすること間違いなしのSFファンタジーです!
語り手の自爆という衝撃的な掴みから、テンポよく様々なガジェットや異能力、多彩な種族が登場し、気づけば夢中になっています。
特に異能や技を技術で再現するガジェット、MDを入れる「祈祷機」で「プレイヤー」と読ませるものには痺れました、脱帽ものです。再生と祈祷を「プレイ」の響きでかけるのは遠い高校生時代にちらっと思いついたことはありましたがここまでカッコよく組み込めるなんて!
コッコのカワイイとカッコいいの同居した魅力やマータの愛らしさもたまらないですね……ココねー呼びが実にいい。
物語の鍵であるストームルーラーの実態も面白いですね。ルーラーってそういう……!という驚きが新鮮でした。言葉遊びのようなネーミングは創作者としても大好きです。
テンションやルールを増していく戦闘アクションや、合間に挟まれるキャラクターの気の抜けるユーモラスなやりとりにのめり込んでいき、クライマックスの巨大バトル、エピローグの余韻を残した質感の満足感は一本のSF映画を見終わったような味わいでした。
多様な要素を含んだ世界観やコッコの師匠など、いくらでも物語の続きを描けそうなものは残しつつ、キリの良い10万字ほどでまとまっているのも素敵な映画のようです。
たくさんの方に読んで欲しい作品です!!
SFチックな異世界を舞台にしたサイバーパンク作品。
独特な世界観もさることながら、劇中に出てくるキャラクターひとりひとりが味のある存在です。主人公一行はもちろん、特に物語序盤から出てくる敵キャラ『トニー・ジャオ』がとても良いキャラをしてます。
人型の鮫の外見のような姿をしたキャラクターですが、なかなかに不敵な人物で強い。正直物語を通して『どうやって倒すの?』と思えるくらい強い。主人公たちからしたらもちろん悪者なのですが、妙に憎めない。
敵対する存在なのに妙にツッコみのノリがいいし、キャラなりの背景もあってそこがとても魅力的。そんな敵と戦うからこそ主人公たちの行動も映える。終盤はまさに大迫力のひとことに尽きます。
タイトル、設定、世界観、そして敵も味方もキャラが立っていて正に『噛み合った』作品!
声に出して読みたいタイトル、『クラウドブレイカー』!!
ぜひ読んでみてください。
舞台は暗澹とした雰囲気が漂う、それでいて霊子外骨格や祈祷機などロマンあふれる技術が存在する、香港ノワールテイストの湾港都市。
独特の世界観や、とある人物の死から始まるストーリーなど冒頭から引き込まれます。
物語が進み、ヒロインの危機に颯爽と登場するのは太陽の騎士コッコ!
主人公らしく善人たらんとする騎士なボクッコですが、ちょっと抜けてたりズレていたり、それでいて決めるところは決める。退廃しつつある曇天の世界に纏わりつく、倦んだ雰囲気を吹き飛ばす正にヒーロー。
こういうボクッコ作品が増えてくれることを期待しています。
あと、感想を書き込むと色々な裏設定を聞けるから、みんな感想書こうぜ!自分はなろう版にいっぱい書いたぞ!