引きこもり少女は道端で出会った女のヒモ
でずな
第1話
私は
そして毎日ゲームをして、アニメを見て、漫画を見て一歩も外に出ない引きこもりである。
私がこんな生活になったのは一ヶ月前。
叶に出会う前に遡る……。
あの日の外はまるで地獄を体現したかのような、暑さだった。
呆気なくリストラされ、もう嫌になって引きこもっていたが、家賃を滞納していたせいでアパートから追い出され途方に暮れていた時。
私は天才的なアイディアを思いついた。
それは、優し人のヒモになるといこと。
男の人はバカだから、女の人をターゲットに。
優しそうな人に向かって次々に声をかけていった。だがもちろん、そんなこと上手くいくはずがなく帰ってくる言葉はすべて「真面目に働きなさい」というお叱りの言葉。
「そんなことわかっとるわ!!」と、路地裏で叫んでいたとき叶と出会った。
初対面の叶はそれはもう、最悪。
だって私に向かって吐いたんだから。
けどそれを口実にして、家に入ることに成功し、さらにはヒモになることも成功している。
当初の目的は、ヒモになったと見せかけて金品を盗んで金を手に入れようと思ってた。
けど……今そんなことしようとなんて思わない。
だって私には私のことを養ってくれる優しい人がいるもんね。
「ただいまー!!」
ようやく聞こえてきた叶の声に、やっていたゲームをすっ飛ばして玄関に駆けつけた。
「はい」
叶は微笑んで、目をつぶった。
これは私がヒモをするための条件と言っても過言ではない。
嫌なことじゃないけど、ちょっと恥ずかしい。
引きこもりだってそういう感情はあるからね。
「むぎゅ〜!!」
痛いって思われないように抱きしめる。
走って帰ってきたのか、叶の体が少し汗っぽい。
もし私のために急いでくれたのなら嬉しいな……。
「いやぁ〜食べた食べた。久しぶりにこんなお腹いっぱいたべたなぁ〜」
大食いだと自負している私もビックリ。
なんと叶は買ってきたお弁当を3つもドカ食いしてしまったのだ。もちろん、食べ残しはゼロ。
「そんな一気に食べて大丈夫なのかな……? 食べすぎて死んじゃったりして」
「心配しすぎだよ。私、今日は特に忙しくてお昼抜いてたからこれくらいはペロリよ」
「お昼を抜くこと自体が間違ってると思うんだけど」
「うぐっ。私のヒモで引きこもりなのに鋭い質問するじゃん。何も言い返せないよ」
「むふふ。苦しゅうない苦しゅうない」
美味しくご飯を食べた私達は調子に乗ってお酒も飲んだ。
それもこれも全部、「明日休みだしぱぁ〜っとやっちゃいやすか!!」と叫んだ叶のせい。
「んでりょ〜ぺぐあっへへ」
「ちょ、大丈夫……?」
叶が酔っ払って何言ってるのか全くわからない。
この人が酒に弱いとは知ってたけど、こんなベロベロになるほど弱いとは思わなかった。
と、冷静に考えているつもりだが私もかなり酔っ払っている。
でも、酔ってて何をしても楽しいくらいの酔いだからね安心安心。さっきまでお腹を出して笑ってたのはもう覚えていないかも。
「じゅがぁ〜となっどむむむ? あっはっひゃっひゃっ!!」
もっとも、畳んである服を見ながら腹を抱えて笑ってる叶はまだまだ酔っ払っているが。
時刻は深夜の三時を回っている。
「お〜い叶さぁ〜ん。もうそろそろ寝ないと、生活習慣乱れちゃうよ〜」
「なぁなぁなぁ……なぁ〜にぃ〜!?」
オーバーリアクションをした叶はスマホの時間を見て、「うっうっ」と目を抑えながら泣き始めた。
「ど、どうしたの?」
「ヒモで引きこもりのあにゃたが、私の生活習慣を気にしてくれるなんて思ってもなくて……。お母さん泣いちゃうぅ!!」
お母さんって何? と疑問に思っていると、突然抱きつかれた。
頭を撫でられてる。
顔が胸に挟まることなんてあるんだね……。
「むぐっ。泣いててもいいから早くベットに行ってくれないかな? また私が運ぶのやだよ?」
「うっうっ……。ぜぃじょうじだね〜!! かわいいかわいい。なんであんたそんなかわいいのぉおおおお!!」
「知らないよそんなの」
完全に酔っ払いに絡まれてる。
この感じ、出会ったときに似てるな。
あの時は吐かれて、お風呂を貸してもらって、そのあと……うん。似てないな。
後片付けをしている私とは違って、叶はまだぐひぐひ飲んでる。
取り上げようとすると抱きつく始末。
これじゃあ何もできないよ……。
「でっひょ!! ヒモちゃ〜ん。今、ちあわせ?」
「もちろん。叶のおかげだよ」
「でへへ〜」
さっき私のことかわいいとか言ってたけど、絶対叶の方がかわいいでしょ。
引きこもり少女は道端で出会った女のヒモ でずな @Dezuna
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