清井正雄 第41代生徒会長

結騎 了

#365日ショートショート 211

「素晴らしい選挙だったよ」

「ありがとうございます」

 生徒会長に就任した清井きよい正雄ただおは、その長身に宿る端正な顔に笑みを浮かべた。自慢の教え子の躍進に、先生も鼻が高い。

「しかし先生、今回の選挙、実は私には大きな目的があるのです」

 体育館のステージ袖。間もなく、所信表明演説が始まろうとしている。

「どういうことだ。生徒会長になること、それ自体が目的ではないのか」

 ふふっ、と清井は微笑んだ。

「うちの生徒は、誰一人まともに選挙に臨んでなどいませんよ。ちょっと顔のいい奴が、耳障りの良い言葉でスピーチをすれば、それだけで票が集まってしまう。誰も生徒会に関心など、ましてや期待などしていないのです。果たして、これが本当の選挙だと言えるでしょうか」

「そ、それはそうかもしれないが……」

「だからね、先生。僕は思うのです。そんな状態のまま大人になってはいけないと。自分たちが票を投じた政治家がどんな働きをするか。それに責任と感心を持たなくてはならないと。有権者はもっと真剣に考えるべきなのです。成長には痛みが伴い、学習は苦い経験の果てにあるのだから」

「お前、なにを言ってるんだ。おい、清井!おい!」

 アナウンスに呼ばれ、清井はステージに登った。全校生徒の視線が集まり、体育館がすとんと静まり返る。

 清井は、おもむろに服を脱ぎ始めた。否、性格には下半身のみである。ズボンを豪快に放り出し、下着まで勢いよく下ろした。露になった男性器を見せつけるように、演台に腰かけ両脚をV字におっぴろげた。

 ハンドマイクを掴み、高らかに叫ぶ。

「これが!君たちがテキトーに選んだ生徒会長の姿だ!よく見るがいい!」

 体育館は悲鳴に包まれた。

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清井正雄 第41代生徒会長 結騎 了 @slinky_dog_s11

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