最終話「月に叢雲、花に風」
「うそ、四天王ってむっちゃ強い魔物じゃん……」
「拙者を抜けッ勇者殿ッ」
「だから勇者やんないって」
「なら
「街中で爆破できる訳ないから! あの
「それは――」
――ビュォッ
「……
右に左に逃れつつ刀は叫ぶ。
「迷う暇などござらぬッ、死にたくなければ抜くのだッ」
「わかったよォ」
渋々抜刀する少女。
陽光を反射し
「どーしよ、あたし戦った経験なんか――」
「適当に斬りつけなされ、後は拙者が動くでござるッ」
「ええいもうッ」
次々迫りくる鞭。
少女は
――スパッ
「あ、斬れた……」
蔓鞭は
切り離された先端は、粒子となりサラサラ消滅。
だが魔物側に焦りはない。
フフと笑みをこぼすと、鞭が断面から再生し元通りになったのだ。
再開する鞭の嵐。
2人は回避の一手に戻ってしまう。
「ンなのアリ⁈ 倒せるわけないじゃん!」
「
「核ってどこさ?」
「外装を壊せば
「だから街中じゃムリッ……
ニヤリと笑い、少女は刀を
「こっから
……あたしは街の門の外にいる、そこまで魔物を連れてきて。
小声で刀に指示すると、少女は取り出した
「勇者殿ォ!?」
「あらぁ仲間割れかしら」
1人残され慌てる刀を鞭が襲う。
回避しつつ、刀は周囲を見渡した。
ここは街中。
人々も異変に気付いたが避難は未完了。
魔物をこのまま街で暴れさせ続ければ甚大な被害に繋がるだろう……
……
「貴殿の相手は拙者なりッ!」
刀は覚悟を決めたのだった。
*
必死に鞭を避けつつ、人の少ない道を選んで魔物を誘導。
ようやく街の門を出ると、遠くで少女が手を振る姿が見えた。
「こーっちーだよぉーーっ」
パッと顔を輝かせた刀が、足取り軽く近づきかけた瞬間。
弾ける笑顔の少女が箱型装置のT字ハンドルを押し込んだッ!
――ちゅど~~んッ
刀と魔物の足元から吹き上がる
だが
「酷いでござるッ」
半泣きで駆け寄る刀。
少女は慰めるように
「ごめんごめん、この方法しか浮かばなくて」
「せ、拙者ごと爆破なんて……せめて一言欲しかったのだ」
「君の頑丈さなら大丈夫と信じてたさ。それより見て!」
少女が指したのは爆破跡地。
煙が残る大穴で立ち尽くすは巨大な魔物。
その体は半分近く消滅し、隙間から
「あれは
「OK」
少女は刀を
「うりゃァッ!」
助走の勢いそのままに、魔物へ斬りつけるッ!
――パリィィッ
砕け散る核。
魔物は絶叫と共に消え去った。
初陣にて四天王・艶花のルルムという超強敵を撃破した少女と刀は、踊り狂わんばかりに喜んだ。
*
「こんなもんかな♪」
嬉々として爆破跡地を調査していた少女が、メモを取る手を止めた。
「ご苦労でござる!」
「君もお疲れっ。にしても魔物の諜報能力って凄いね。刀を抜いたのは昨日なのに、もう襲ってくるなんて……あたしの名前も知ってたし、どうやって調べたんだろ?」
「単純よ、拙者が教えたからでござる」
「……どういう事?」
少女の顔が曇る。
「実は拙者、街の御仁達に『勇者殿を知らぬか?』と尋ね回っての。それが魔王軍まで伝聞したらしく、ルルムに勇者殿の名を聞かれたでござる」
「バカッ、何で素直に教えたのさ!」
「仕方なかったのだ。
「
いらついた少女が、ぴしゃりと遮る。
無言で
数秒後。
ようやく刀は気が付いた。
「おいてかないでッ! 勇者殿ォ~~!!」
どんどん小さくなる
おいてかないでッ!勇者殿!! ~聖なる刀は爆炎少女を今日も追う 鳴海なのか @nano73
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