第4話「魚心あれば水心」
「……き、緊張するのぅ」
店の前まで来た所で、不安に押し潰されかけていた。
「だが此処で諦められる訳なかろう……ええいッ虎穴に入らずんば虎子を得ずッ」
自分を叩いて気合い注入、バンと扉を開ける!
「失礼致すッ」
刀は慌てて店内を見渡す。
「「
刀と
「君っ、何でここに――」
「うおォオォん勇者殿ォ~~ッ」
少女が面食らった瞬間。
刀はゲリラ豪雨みたいに男泣き。
突き刺さる店員や客の視線。
咄嗟に刀を掴んだ少女は、店から逃げ出した。
*
商店街の外れ。
階段の端に座る2人。
「……落ち着いた?」
頃合いを見て、少女が声をかけた。
刀はしゅんとうなだれる。
「かたじけのうござる……」
ハァと溜息をつき、少女は言葉を選んでいく。
「でさ、どーして街を歩いてるわけ?」
「武器屋から脱出したゆえ」
「何であたしの居場所が分かったの?」
「貴殿の
「ちッ、余計なこと言うんじゃなかった……」
プツンと途切れる会話。
重苦しい沈黙。
「……どーして何も言わないの?」
痺れを切らしたのは少女。
「いやはや何から喋れば良いやら……」
「昨日あんなに騒いでたのに?」
「そ、その点は申し訳のうござる! あれから気づいたのだ。拙者は
「おっ昨日と別人じゃん。どしたん?」
「知り合うた者に
すっかり平身低頭な刀。
少女が気まずそうに口を開く。
「……あたしもごめん。いきなり売り飛ばすのは……ちっとやり過ぎたかな、って」
しばしの無言の後、刀は言った。
「ならば手打ちよ! 拙者、貴殿と争いたくないでござる」
「OK。あたしも別に喧嘩したいわけじゃないしね」
「……それと、ひとつ
「勇者業ならやんないよ⁈」
「流石にそんな提案する訳なかろう!」
「じゃあ何?」
刀は大きく深呼吸。
心が決まったところで真正面から少女を見つめる。
「爆炎道を究めんとする貴殿の夢、拙者に手伝わせてほしいのだ」
「へ?」
拍子抜けする少女。
「……貴殿を探す上で、拙者は沢山の御仁に世話になり申した。そして学んだのだ。1人では出来る事に限界があるが、誰かが協力すればその限界を超えられるとな」
脳裏に浮かぶは、世話になった者達。
武具達は囚われの身から逃がしてくれた。
御令嬢のお陰でまた立ち上がれた。
彼らがいたから
「そりゃあたしも最近伸び悩んでる感あるし、『ここらで誰か頼るべきかな?』って思ったりもしたけど……でもっ君のやりたい事はどうすんのさ?」
「
これこそ鎖鎌のヒント――勇者と行動したければ
少し考え、少女は答えた。
「……じゃ、お試し同行って事で」
「お試しとな?」
「だって会ったばかりの武器に背中預けるの不安だもん」
「拙者は由緒正しき神話級ぞッ、怪しい者では――」
「怪しいか決めるのはあたし。しばらくよろしくね♪」
「むゥ……」
思ってたのと違うがまぁ良いか、と刀は胸をなでおろす。
ここで何気に腕時計を見た少女が気付いた。
「あ、もうオヤツの時間じゃん」
「ならば拙者が茶でも
「武器って飲み食いすんの?」
「食わずとも飢えはせぬが、食うのは好きでござる」
「ふぅん」
並び歩き出そうとした瞬間だった。
――ギャウッ
死角から伸びる
刀が少女をかばい、倒れ込む2人。
少女の声にならない悲鳴。
先程まで座っていた階段が鞭で壊されたのだ。
「ウフフ、ざ~んねん」
背後から響く笑い声。
振り返った彼らが見たのは、
女の右腕は太く長い
「なッ何故
「
女は不敵な笑みを浮かべ、
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