第7話 別 離、そして……

「俺の役目は終わりだ」

「えっ…?」



突然言われた言葉。



「お前と出逢えて良かった」

「嘘だよね…」



どうやら代物を相手は諦めたらしいという話を聞いた。



「嘘という文字は存在しない!俺は次の仕事があるからな。元気で過ごすんだぞ!」


「待って!私…一人なのに…誰もいないんだよ!雄史…行かないでよ…」



「………………」



「…もう…会えないの…?」



「………………」



「…悪いな…」




雄史は去り始める。



「雄史っ!待ってよ!ねえっ!雄史っ!」



「………………」



「雄史…行っちゃやだ…私…雄史が…」




グイッと引き寄せキスをされた。


ドキン…




「…お前の気持ちは嬉しい…でも…それには答える事は出来ない」


「…前の彼女が…まだ…存在してるから…?」




首を左右に振る雄史。




「じゃあ…何…?」

「お前と俺じゃ住む世界が違う」

「…どうして…?」

「お前には…俺じゃなくて相応しい相手がいる」


「…そんな…相手…いないよ…いるわけないよ…親もいなくなって…私を面倒見てくれる人なんか…私は…本当に一人なんだから…」



「…俺は…人殺しだ…」




ドクン…




「…えっ…?嘘…でしょう?」



「本当だ…裏組織に雇われた人殺しなんだ。この手でたくさんの人間を殺してきたんだ。そんな俺に女はいらない。必要ないんだ!どんなに…その女を愛していても…その女とは結ばれない運命なんだ」




「………………」



「…彼女も…こんな気持ちだったのかな…?思い出だけ残して…私の前から…雄史…も…去って行くんだね…」




「………………」



「…人殺しでも…雄史は雄史だよ…」

「…悪いな…俺の事は忘れてくれ…」




そう言うと横切り私の前から去って行った。





「雄史…雄史っ!!雄史ーーーーっ!!」






出会いがあれば



        別れがある




1つの恋の始まりは



        1つの恋の終わりを告げる時




すべての恋に


    HAPPY END なんて


存在しない






でも―――――





もし……



     HAPPY END が存在する時は




何かを犠牲にしないといけないよね




                きっと―――









それから1か月が過ぎ――――





「雄史。彼女の事、気になるんじゃないかな?」




「………………」




「いいえ。大丈夫です」

「そうか」

「はい」



「…………」



「雄史。会いに行くのは構わないんだぞ」


「いいえ。会いに行けば彼女が悲しむだけですよ。行かない方が良いんです」





そんなある日の事―――――




「…あれ…ない…確かにここに……」



あるはずの代物の木箱がなくなっている。


探していると―――




グイッと私を背後から片腕で抱きしめるようにされた。


ビクッ



「…動くな!」

「…だ…れ…?」


「品物(ぶつ)は仲間が持って行った。お前には死んでもらう!」




ドクン…




「えっ…?」




《嘘…》




私のこめかみには、もう片方の手により銃口が向けられているのが分かった。



《やだ…嘘だよね…誰か…》




しかし


そんな私を助けてくれる人なんていない




両親もいないし



好きな人も……



今の私には



何も残っていないけど……





《せめて…結婚はしたかった……》


《それに…最後にもう一度…だけ…》


《…雄史に…逢いたかった…》




私は覚悟を決めた。



「…………………」





だけど、銃口を向けられてるも、一向に変わらない状況



その時だ。




「女から離れろ!」




ビクッ



別の声がした。




《だ…れ…?》


《私…別の人にも殺されちゃう?》


《ていうか…どういう状況…?》


《敵同士が鉢合った感じ…?》




私の背後で何か問題が発生してるのは確かだ。




「命が惜しければ、そのまま去れ!」



「………………」




スッと私から離れたかと思った、次の瞬間――――




武術で、二人が闘う中、距離を置き

お互い銃口を向け合う。





ドキン…



《えっ…?雄史……?》




私の目の前には雄史がいた。




「貴様か?契約は終わったんじゃないのか?」



「………………」



雄史に言い放つ相手。




「例え契約が終わったとしても、俺が守る役目は、まだ終わっていない。そういう、お前らこそ、こっちが油断している隙に汚いやり方で近付くのは辞めろ!」



「チッ!」





カラーン……



何かが床に転がる。


手榴弾だ。




「二人仲良く天国に行きな!」




そう言い捨て相手は部屋を出て行く。




雄史は、手榴弾を手に相手に向かって投げると銃口を向けた。



「悠佳っ!窓際に行けっ!!」

「えっ!?あ、うん…」


私は言われた通り窓際に向かう。




ドーーーーン




爆発音が屋敷中に響き渡ると同時に私達は気付けば窓の外に飛び出していた。





バシャーーン


幸いにもプールがあった為、そこに飛び込んでいた。




「大丈夫か?」

「うん…」




目の前には


あの雄史がいる




だけど状況が飲み込めないけど……




「あっ!それより、両親が遺した代物…!」

「もう手配済みだ!安心しろ!時期、戻って来る」

「…そっか…良かった…ありがとう…」




私はプールからあがる



「屋敷…大変な事になっちゃってるね…」



さっきの爆発によって、屋敷は一部が破損している。


そして、私の隣に来る雄史。




「…屋敷…修理しなきゃ…あっ!その前に雄史に御礼しなきゃいけないんだよね?小切手?報酬いくら?現金払いなのかな?」



「いや…何もいらない」



「えっ?でも…それじゃ仕事の意味なくない?ボランティアじゃないんだろうし。お父様達は何を引き換えに私のボディーガードを雇ってくれたの?」



「……お前だ…」


「…えっ!?」


「お前自身の命と引き換えだ」


「………?」




「…それって……どういう…やだ!もしかして私殺されちゃうの?」



「………………」



向き合う私達。




「やだ!私、まだ死にたくないよ!まあ、確かに、さっきは死ぬ覚悟はしたけど…」



「………………」



私は、前に向き



「まだ、やりたい事は沢山あるし!17だし!若くして死ぬなんて……それはさー、若いまま死ぬのも悪くないけど…」



雄史を見る。




「絶っ対っ!嫌っ!意地でも逃げて…」



キスされた。


ドキン…



「バカ…落ち着け」



「………………」




そして私の両頬を優しく包み込むように触れる。




ドキン…



「一生涯、死ぬまでの引き換えだ」


「えっ…?」


「ボディーガードを含め……1人の男として…お前の傍で見守り続け見届けて欲しい…そう言われた…」



「………………」





ポロッ

涙がこぼれ下にうつむく。


雄史は抱きしめる。




「お前の特等席は、お前と出逢ったあの日から…既に決まっていた。船の上で出逢ったあの日からな……」




ドキン…



「…えっ…?…知って……」



顔を上げる私。



「知らないとでも思ったか?」

「…だって…」


「お前と出逢う前から既に依頼を受けていた。両親は自分達が死ぬ事を知っていたのだろう」



「………………」



「俺達は…ずっと…一緒だ…」




私達はキスをする。



唇が離れ抱きしめ合う私達。




その後、代物は戻ってきて、私は再び雄史のマンションに行く事になった。




「雄史、1つ気になるんだけど…」

「何だ?」

「彼女…いたんだよね?」



「いたが。それは、お前に出逢う前までの事だ。どう考えても年月が合わないだろう?」



「あー…そうか…私も雄史と出逢うまでは目が見えていなかったし…じゃあ…雄史の彼女が生きていたら私達は出逢わなかったね…両親が例え雄史に依頼をしていたとしても…きっと…私達は別の道歩んでいた」



「それはどうだろうな…考えたくはないが、もし彼女が引き合わせる為に死ぬ運命だとしたら…俺だけじゃなく、悠佳も彼女の分を生きて両親の分も生きる運命だったんじゃないのか?」



「そうかな…?…雄史…無理しなくて良いから…例え両親からの依頼だったとしても…住む世界が違うって…そう思っているなら…私の事、フッて良いから」



「…依頼は依頼だ。…お前まで死なれたら困る」

「どうして?」


「お前の気持ち知っておきながら…お前が俺の前いなくなるなんて逆に恨まれそうだからな。両親にも、彼女からも」


「酷っ!私はしないし!もちろん両親も彼女もするわけ…っ!」





キスで唇が塞がれた。




「俺は…もっとお前を知りたいけどな」




フワリと抱きかかえられ、お姫様抱っこをする。



「えっ…!?ちょ、ちょっと雄史おろ…」




私をベッドに乗せると両手を押さえつけた。




ドキーーン


まさかの展開に胸が大きく跳ね、胸がドキドキ加速する。




「ゆ、雄史…ちょ…」




首筋に唇が這う。


声が洩れた。





「案外、敏感なんだな」


「ば、バカっ!ていうか…初めてなんだから心の準備いるから!それに!雄史の気持ち聞いてないっ!」


「一生涯と言われているんだ。結婚と変わらないだろう?」


「いやいや、その考えは…」



再びキスをされ、大人の慣れないキスをされ戸惑う私。


それに気付いたのか、私から離れる。




グイッと引っ張り起こし、私の頭を肩に凭れかけさせる。




「心の準備が出来るまで待とう。俺も正直複雑だからな…だけど…俺達は離れられない運命だ。お前は、ずっと俺の傍にいろ!いや…いても構わないから。出来る限り、お前に応えるつもりだ」



「……雄史……うん……」



私は雄史にキスをした。


一旦、唇が離れ、再びキスをすると、大人のキスをされる。




「ゆっくりで良い。お前こそ無理しなくて良いから、ゆっくり慣れればいい」


「…うん…ていうか…私…雄史に全部(すべて)奪われる前提…って事だよね…」


「そうなるかもな」







〜 E N D 〜










































































































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