第2話
地上に降り立った次の日から儂は小学6年生の担任をすることになり、早速学校にきており、儂が通うことになった小学校は「県立縁神小学校」という、昔から神様と縁があるといわれている小学校だそうだ。
この何かと神を作るところ当たり、母上の眷属が絡んでいるのだろうが、それはよいとして、学校のこと、クラスのことを一通り凪と要に聞きながら登校した。
学校での手続きなどは元と綾がすませてくれたので、学校に着くなりスムーズに案内された。
校長先生と教頭先生から一通り儂が担任するクラスのことをきき、早速学年主任の大塚先生に連れられて教室に案内された。
ちなみに神の力が働いているのかわからないが、天照大御神といって疑問を持たれることはなかった。確かに儂ら神はそれなりに力はもっているが、地上でそれが、どのくらい使えるかはまだ把握できていない。
今後自分の力をどれぐらい使えるのかも実験していく必要がありそうじゃ。
そんなことを考えているうちに大塚先生から話しかけられた
「このクラスは大変だと思います。前任の小林先生も男性でメンタルも弱い方ではなかったんですが、好き勝手な生徒、強気な保護者のせいで、少しずつ体調を崩していって、学年が上がってすぐのタイミングで学校にこれなくなってしまいました。他の学校ではあまりないことかもしれませんが、ここの小学校では2学年連続で担任をすることが伝統のようになっており、小林先生も1年間は頑張れたんですが、非常に残念でした。私たち先生も働きにくくなりました。天照先生も気を付けて」
「儂は大丈夫です。なぜなら神だから」
「天照先生は面白い。楽しみにしています」
おそらく儂が神という部分に関して全然信じてられていないようだ。まぁこの地上で神という存在は、あくまで架空の存在ということ理解している。
そして、儂は新しく担任をする教室を開けた
「席につけ~。君たちの新しい担任の先生を紹介するぞ」
凪は左の後ろの席に1人で座っている。全体的にそんなに大変そうなクラスには見えないが、おそらく中心にいる男女5~6人ぐらいのグループが主犯格といったところだろう。
「先生、そこのチビが新しい先生かよ。まぢありえない」
早速の先生パンチは中心にいるグループの中でもボス猿みたいな坊主頭の男子生徒だ。まさにお山の大将とはこうゆうやつのことをいうんだろう
「麻生、先生に向かって何を言うんだ。天照先生すいません」
「全く問題ない。猿が一匹騒いでいるようなものじゃ」
「はぁ、そこのチビ、今俺のこと猿といったか?」
「耳だけはよいようじゃな。お主がチビと思った儂にチビといったように、儂はお脱主のことを猿と思ったから猿といっただけじゃ。なにか問題あるか?」
小学6年生といっても馬鹿にされていることはわかる年齢、麻生は顔を真っ赤にして、なにかを言おうとしている
「天照先生、麻生をあまり煽らないでください。このクラスのボス的な存在で、前任の小林先生も、麻生を中心とした生徒に手を焼かされていたんです」
「わかっておる。中心にいるからこそ煽る意味があると考えておる」
「考えがあるのならわかりました。それではよろしくお願いします」
「承った」
「さて、全員席につけ、自己紹介をする。儂の名前は天照大御神という。天照先生と呼んでくれてよい」
「はっ。なんだその変な名前は、見た目もチビで、名前も変とか、お前が担任とか嫌だよなお前ら」
周りのとりまき連中も麻生に便乗している。
教室に入って数分だが、なんとなくこのクラスの構図がわかった。
麻生を中心とした5~6人の男女グループがこのクラスの中心で、それにあと何人かくっついてきて3分の1ぐらいの人数が偉そうにしている感じで
他の生徒は、なんとなく合わせている感じだろう。凪もその一人だ。
要するに学校が自由で楽しいと思っている連中と、麻生達に合わせながら学校生活をこなしている連中でわかれている感じだな
「お主は確か麻生といったな、儂の名前がおかしかったり、見た目がチビだと思ったことがお主にどう関係しているのじゃ?」
「俺は自分よりも弱い奴を先生とは認めない、この前まで先生とかいっていた小林みたいに」
「お主にとって強いとはなんじゃ?」
「そりゃ喧嘩だろ。つい最近もそこの凪をボコボコにしてやったんだ」
凪が学校の話をしていたときに笑っているようで笑っていないと感じたのは、これが原因か。麻生が凪の名前をいった途端、凪の顔色は悪くなり下をみた。
「ほう~。お主にとって強いは自分よりも弱い人をボコボコにすることなのか」
「当たり前だろ。弱い奴は強い奴にボコボコにされるのが弱肉強食って母ちゃんと父ちゃんが話していたから」
多分、両親が話していた弱肉強食は少し違う意味なんだろうが、小学生の捉え方を考えたら、仕方のないことかもしれない
「確かに弱肉強食はある。動物の世界は弱いものが強いものに食われたりしているところで成立している部分もある。だが、お主のいう強い弱いの物差しが弱肉強食に当てはまるとは限らない。お主は凪をボコボコにしたといったな、なぜ凪をボコボコにしたんだ?」
すると他の生徒が手を挙げてくれた
「お主は」
「私は学級委員をしている高市佳乃です」
「高市か。それでお主は何か言いたいことがあるのか」
「はい、先日麻生君が小森君をいじめているのをみた、凪君が注意したら、麻生君が怒って数人で凪君を叩いたり蹴ったりしているのをみてました」
「それでお主はそれをみていただけなのか」
「はい・・・私は自分が止めにはいったら次は自分がいじめられると思ってみていることしかできませんでした」
高市が言っていることはもっともなことだ。変に止めに入ることで凪みたいになる可能性がある限り、人は動くことができないだろう
「よい、小森はどこにおる」
すると前の方で背の小さめの男性生徒が静かに手を挙げた
「今の高市がいったことは本当のことか」
「はい。全て本当のことです。凪君は僕のことを助けたことで麻生君たちに叩かれたり蹴られたりしました。凪君ごめんね」
小森は泣きながら凪に謝罪している。前から謝りたいとは思っていたが、謝れなかったのだろう
「麻生、これがお前の強さなのか?」
「当たり前だろ。凪が変に入ってくるからボコボコにしてやったんだ。おとなしくしていればボコボコにされずに済んだなのに」
「儂はな、いじめを空気のようなものだと考えている。AがBをいじめていたとする。そしてCとDがAに加勢する。他の者は自分がいじめられるんではないかと考えて、動くことができなくなる。クラス30人も生徒がいれば、この空気の規模は次第に大きくなって、誰にも止めれなくなって、いじめられた当人だけが孤立していく。
生まれも育ちも違う人同士が一緒に生活をするとなると避けては通れないことなのかもしれない」
儂の言葉を完全に理解できている生徒は数人しかいないのかもしれないが、生徒たちの目が少し真剣になっているのはわかった
「さっきから何を言っているんだチビ」
「その空気の流れを変えようと飛び込む勇気があるものを儂は称賛したいと思っておる。凪はいじめられている小森を助けるために間に飛び込んだ。これのどこが弱いんじゃ」
「はっ、凪は弱いに決まっているじゃねーか。俺たちにもボコボコにされているし」
「お主のいう強いは力しかないんだろうな。しかもお主たちは勇気を出して飛び込んできた凪を数人でボコボコにしたんだろ。それのどこに強さがあるんだ」
「強さは力だ」
どこのアニメをみて覚えてきたのか、麻生の中では力=強さと思っているようだ。まぁ小学6年生だったらこんな偏った考えもありえるのかもしれないが
「麻生、なんでお主は強さを力と思っておる」
「強い奴が生き残れるからだろ」
「なぜ、強い奴が生き残れるんじゃ」
「強い奴には人が集まるからだろ」
「なぜ人が集まる必要がある」
「・・・・」
「なぜ一人になるのを恐れる」
「うるせぇ」
儂は原因は「なんで」や「なぜ」の先にあると思っている。
地上を見守っているときに何度も感じたことだが
地上の子供たちは皆、原因を追究することはせずに、表面上の犯人を求める
事件があると、その背景まではみようとしない。
それは学校でも同じで、子供たちが何かをする背景には原因があるかもしれないのに、それを大人は表面上で片付けようとしてしまう。
今麻生に「なんで」と「なぜ」を4つ質問しただけで、麻生の原因が分かったような気がする。
「お主は1人になるのが怖いんだろ」
「はっ俺が怖いとか思うわけないだろ」
「いや、お主は怖いんじゃ。なぜならお主がもし強いのであれば、1人で飛び込んできた凪を複数人でボコボコにしないだろう。お主が何をみて強さの基準を考えているのかは知らんが、強きものは1人で飛び込んできたものを1人で相手するはずじゃ。強さを勘違いするんじゃない。お主は1人で戦わなかった時点で弱きものじゃ」
「う、うるさい。俺が弱いわけないだろう。しかも1人でも全然平気だ」
「そうかそうか」
そういって儂は麻生の後ろにまでいき、首の後ろの方を少し突いて、麻生の気を失わせた
「えっ」
生徒の誰かが驚きの声を上げたが、気を失った麻生が、すぐに目を覚まし、そのあとに涙を流して泣き出した
周りの生徒は何が起きたのかわからなかったようだ
「まだ皆にいっていなかったが、儂はちょっとした不思議な力を持っておる。今のは麻生の気を失わせたタイミングで、夢を見せた。まぁ気を失ったのは一瞬だが、夢の体感時間は1~2時間といったところだろう。夢の内容は「1人になる」じゃ。その結果が今の麻生だ」
「麻生、1人になった感想はどうじゃ?」
「こ、、、こわかった」
泣きながら麻生は答えた
「これでも強い弱いの考え方は変わらないか?」
「。。。。」
「今すぐ全てをわかれとは言わん。だが強い弱いは力ではない。高市みたいに自分の無力さを感じながら手を挙げる強さ、小森のようにいじめられても耐え抜いた強さ、凪のように、自分がいじめられるかもしれないという怖さの中飛び込む強さ。どれも強い人にしかできないことだ。子供たちよ覚えておけ、誰でも強くもなれるし弱くもなれる。強さを支えるのは勇気だ」
最初は儂のことを馬鹿にしていた麻生の取り巻き達も今では儂の話を聞いている。
子供の達の原因を探ろうとしない大人、子供たちと正面からぶつかることをしない大人。学校の教育は大人をなめ切っている子供たち原因というよりは、教員だったり、保護者の方にこそ原因はあるのかもしれないと思った。
まだ、これはスタートラインでしかない。
「これから1年よろしく頼む」
さぁ儂の教員生活の始まりじゃ。
神様が小学校の先生になる @YuuYama18
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