白夜繚乱

@chanpuri_

序章

Prologue.

 あらすじでも説明しただろうが、今一度、この世界について軽く説明しておこう。


 この世界の名は、『ハイドランジア』。

 決して平和とは言えないこの世界には、ありとあらゆる魔物がはびこっていた。そう、魔物である。有り体の普遍的なファンタジー作品では当然の如く登場するような、そんな魔物たちが、この世界をひたすらに脅かし続けていた。

 あるものは恐怖する。それらに食い千切られ、その養分となり、朽ち果てる身となることを。

 また、あるものは怯える。この世界には、決して安息の場など存在しないのだと。 

 そして、あるものは説く。街より外に赴くことは、危険であり、死を意味するものであると。

 そう、それだけこの世界にとって魔物とは、畏怖される存在であり、恐怖の象徴として捉えられているのだ。普通の人間がただ一度、彼らに捕捉されようものなら、生きて帰ることなどできない。それだけで、どれだけ魔物という存在が如何に凶悪的なものかがわかるだろう。


 だが、危険なことばかりが介在しているわけではない。

 なぜなら、この世界と人々は『太陽帝国』という名の帝国に守られているからである。この世界『ハイドランジア』の実権を握るこの帝国は、はびこる魑魅魍魎をことごとく討伐せんと、意気を揚げていた。人々は、街の門をこの帝国に守られることによって、限定的に安息を得ることができていたのだ。

 彼らがいるのであれば、この世界はきっと安全なのだろう、と人は次第的に思考しはじめていった。そう、人々は帝国の裏に隠された、真の目的を知る由もなく――――――。


 一方で、この危険な世界を旅をしていく二人組がいた。一人は人の背丈すら超えるほどの大剣を背負う赤髪の青年。もう一人は、多数の機械道具を携えた、橙色の髪を持つ青年だ。一目見れば、異質のように思えるかもしれない二人だが、彼らの仲は悪くないらしく、仲間としては互いに頼りになるようだ。

 彼らは、ある一つの目的の為に、旅をしていた。復讐という名の、決して穏やかではないだろう目的の元、彼らは進んでいく。

 この世の中で、そんな危険な旅を行う彼らのことを、命知らずだと罵倒するものもいたが、彼らは気にも留めず、ひたすらに歩を進めていった。たった一つ、その目的のために。


 この青年たちと、帝国が記す線が、どのように交わって、どのような物語を生み出すのか。そして、どのような結末に収束するのか。


 さぁ今、幕を開けよう。この物語の行く末をご照覧あれ。


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