自立型戦闘用狂戦士伝 鉄鬼634

メヂカラ

第1話 鉄鬼吠える!①

 夏のある日。カラスが山に帰る頃にアタシは母に晩飯のお使いを頼まれて近くのスーパーへと自転車をすすめていた。スーパーへは自転車で大体五分ほどで着くため、気楽に走らせる。

 鉄の匂い。昔から金属の加工、精錬を生業としてきたこの町にはお似合いの匂いを出す道を走る。しかしすごい匂いだ、もう生まれてこの方この地に十年は住んでいるが、やはり慣れないものは慣れないし、おまけに音もすごい。そんな事を考えているとスーパーへとたどり着き、そのまま自転車を降りて頼まれた品を買い揃え店を出る。

 ふと先程の道へと近づく。またあの匂いを嗅ぐのかと思い、ケータイに付いている時計を見る。晩御飯の時間までまだ余裕があると思い。勝手ながら遠回りをすることにした。

 普段はあまり通らない道。ここには先程の様な匂いとは別に錆びた鉄屑の匂いがする。母から教えてもらったが、アタシが生まれるよりもずっと前に戦争があり、その時に使われ、今はもうすでに壊れた兵器なんかがそのまま放置されているらしく、様々な機会たちが静かに眠りについていた。そんな静けさを自転車で切っていくと、少しずつ何か音が聞こえる。

 カーン、カーンと音がする。

 そのまま自転車をすすめているとどんどんと音は大きくなっていく。なんだろうと思いアタシは足を止める。先程の音がはっきりと聞こえ、そしてこの音が何か金属を叩く音だということがわかった。

 この場所に住んでいる人間なんていないはずだ、住居も何もなくこのスクラップのみがゴロゴロといる場所にいる訳がないと思うも、この子はまだ12歳の少女。その好奇心に抗いきれずに、従うように道路から鉄屑の上を走り出す。

 道は最初こそゴロゴロと転がった鉄のせいで進めたものではなかったが、徐々に何かまるで獣道の様に屑鉄が這い出され、見えていなかった地面が見えた歩きやすい道へと変わっていた。そしてその先に大きな鉄屑でできた山があった。今にも崩れそうなその山はアタシなんかよりも数十倍はあろうという高さを持つ山上には一人の子どもがいた。こんな所になんで子どもがいるんだと思ったらアタシはなんとなく子どもに呼びかけてみることにした。

「おーいアンター!こんな所で何してんのー!お母さん心配してるよー!」

 その声に気付いたのか山の上にいる子どもはこちらの方に顔を出しすとそのまま滑り落ちる様に山を降りてピョンとジャンプをすると、気付いた時にはアタシの目の前にいた。

 そのまるで忍者の様な軽やかな少年は首元を掻きながらこちらをじっと見つめていた。しかし思ってよりも小さい、アタシが小6だから背丈なんかからして大体大体小1くらいだろうか?にしたってなんでこんな子どもがこんな危ないところなんかにいるのだろう、疑問に思ったアタシは少年にそのまま聞いてみることにし、少年の目線に合わせしゃがむと、もう飽きたのかポッケに手を突っ込みながら山に登ろうと目線を向ける少年を呼び止め、話しかける。

「なぁ、こんな所にいるとカーチャンに叱られるぞぉ!」

 すると少年は山上に立ち、タン唾を吐き捨てた後めんどくさそうに、こちらの方を見ながら。

「叱られねぇよ!ここがオレ家だから問題ねぇ!」

「はぁ?、秘密基地かなんかにしても、ここは危ねぇよ。降りてきなぁ!」

 ここにあるのはこの鉄屑が一面に広がるだけで、民家はほとんどない。と言うかここから少し車を走らせればすぐにつけるしっかりとした孤児院まである。

 すると少年は「ちょっと待ってろ!」と言うと山の上に置いてあった工具箱を取るとそのまま勢い良くこちらの方へと滑り降りて、更に奥の方へ行くぞとこちらに指示をしてくる。

「いや、アタシ帰らないといけないんだけど、ねぇちょっと!」

 しかしアタシのことも知らずに鉄の山林の中に進んでいくのを見て、なんだか心配になってしまいそのままアタシもついて行ってしまった。


 「ねぇ、アンタ名前ってなんで言うの?」

 すると子どもはめんどくさそうに。

「テッペイ。年は八つだ。」

「さっき何してたの?」

「部品探してた。これ」

そう言うと右ポケットからから割った形のネジを取り出した。

 (アタシの3つ下か、見た目よりも大きいな)

「しっかし、アンタ学校行ってんの?」

 しかしテッペイはこちらを振りかえらず。少し気張った様な声色で。

「いや。行ってない。だから頭悪い。」

 と。それだけ言うとポッケの中に手を突っ込んでこちらの方を向くとだれたように、呆れたような怒ったよな声で、

「質問ばっかだなぁ、そう言うとアンタはなんてんだよ」

 ハッとするとアタシは、「あぁ、そっか!自己紹介まだだったね!アタシは家神凛いえがみ りん!年はアンタより三つ上の11でこの先にある金属なんかの加工場の長女で、家族はまず。父さんと母さんとお兄ちゃんが二人いてぇ、」

 それを聞くとテッペイはめんどくさそうに、

「わかった!わかったよ!アンさんの概要はわかったから少し黙っとくれ!」

 と自分から聞いてきたくせに随分なケチをつける。

 少しイラッと来たのか凛はテッペイの前に出て、腕を組みながらまるで覗き込むように。

「ちょっと!アンタから聞いてきた何よ!」

 するとテッペイははぁとため息をつきながら。

「オレが聞いてきたのはアンタの名前だけだし、それ以外の情報が多すぎる!」

「まぁ、とにかくついてこいよリン。」

 そう言いながら更に奥の方に指をさす。

「ちょっと呼び捨てはないんじゃないの!ねぇ、ちょっと!」

 テッペイは耳に指を入れ無視を決め込みながら二人そろっと更に奥へと入っていく。

 鉄屑をかき分けた道を進み、しばらく足をすすめるとそこにはブルーシートと鉄板が大きな壊れかけで上がないトラックの荷台の上に重ねられた小屋のような建物とは呼べない代物と、周りに何まだ他のガラクタと比べれば幾分か小綺麗な何かのマシンたちが周りに並んでいた。

 マシンは恐らくは戦争の兵器の残骸ばかりが集められており、まるで雨ざらしの戦艦の様だった。

 アタシは呆れながら壊れた兵器の方に指を刺しながらテッペイに話しかける。

「ねぇ、アンタこんなの集めて戦争でもやりたいの?」

 それに対してテッペイは否定するわけでもなく、ただ一言だけポッケから手を出しながら言った。

「夢のため。戦争はよくわかんないけど。ケンカは嫌いだからやらない」

 そう言うとそのまま奥の小屋の中へと入っていく。そのままアタシもなんとなくその小屋の中へと入っていく。

 小屋の中には生活感が溢れており、入ってすぐにボロボロだがベットがあったり、季節なあハズレなこたつの上にはカップ麺の空箱が置いてあり、中にはスープも入っていた。と、本当にここに住んでいるようであった。

「ねぇ、アンタほんとにここに住んでんの?」

 するとテッペイは頭をかきながら変にニヤニヤしながら、小屋と壁際にかぶせてある布を振り上げるように取る。

 それは崩れていた。本来あるはずの形は失われ、まるでかつての栄光の輝きもとうの昔に削れてしまった狂戦士がそこにたたずんでいた。片腕はなく、足も両方とも壊れであり、装甲も既に崩れ去り中の生々しい機械たちが剥き出しになりながら、そのどれもが寝ているように静かであった。

「は、ハンター・・・・・。」

 ハンター。3mほどの大きいロボットであり、自我を持ち、壊れるまで暴れる続ける戦士だ。

 この時代。ハンターを見たことのないと言う人間はおらず、様々な媒体で見る機会が多く、かなり昔にはスポーツとして認められ、国同士の正式なスポーツの競技にすらなったこともある。

 しかし、凛はハンターを間近で見るのは初めてのことであったためか吐いた息をゆっくり飲み込む。今の時代こう言った自我を持つロボット自体はそれ程珍しいことはなく。家に帰れば自我を持つ家政婦型のロボットが家にいる。

 しかしそんなものとは訳が違う。まだ無事な金属たちは戦いたいと叫び。その部品一つ一つが戦う相手をただ純粋にぶっ壊すためだけに存在しており、近くにいるだけで全身の血液が彼方へと飛んで行きそうであった。

「あ、アンタ。」

アタシは震えていた。

「すごいね」

恐怖が興奮かそんなものは区別がつかなるほどの狂気浴びせられ、出てきた言葉はたったの二言だけであった。

そんなアタシを見たテッペイはヘラヘラしながら少し嬉しそうに。

「いやぁ、初めてオレ以外の人に見せたけど、ここまで喜んでもらえるとは嬉しいなぁ」

そう言うとその壊れかけのロボットの人間で言うと腹に当たるあたりでをあて、まるで写真を撮るかのようにポーズを決める。

「アンタ、よく触れるね」

「えっ?なんで?触ろうと思えばいくらでも触れるだろぉ」

アタシはゆっくりと足をすすめる。進むにつれてどんどんと大きくなっていく鋼鉄の巨人は静かに佇みアタシの手を受け入れる。

冷たく重く、これが動くのかと想像すると体の芯から震え上がった。

ゆっくりと手を離してもその感覚は手に残りまだ掴んでいるようであった。アタシは少し不安定になっていたんだと思う。好奇心は自我を持ちアタシの身体と心を操った。

ゆっくりと指を挿しながら乾いた口を開け、ラジオを調整音のように言った。

「これ、動くのか?、」

テッペイは嬉しそうに首を縦に振る。

「あぁ!もちろんそうに決まってんだろ!まっ。後十五年はかかりそうだけどな!。」

「じゃっ!、五年で完成させるぞ」

勝手に口が動いていた。十五年も待ってられない!もっと早く!もっと早く!絶対に動かしたい!と心から叫んでいた。

「無理だって!そんな五年なんかで!」

とさっきまでの異性と違い、まるで知ってるかのようにこちらを無知と判断し笑う。

しかし、すぐにアタシが威勢よく鉄平に近づき、右ポケットのネジを取り出すとそれを掴んで、出て行こうとする。

「ちょっ!それやっと見つけた一個なのに!」

と慌てて袖を掴み、取り返すように腕を伸ばす鉄平を振り解き、ネジを見ながらアタシはこう言っていた。

「こんなネジ一瞬で百倍にだってしてやるから安心しな!」

少しよくわからないのかテッペイは首をかしげるも、アタシは面倒臭くなって、ほぼ顔面にめり込むくらい近くに行き。

「だからアンタのロボット作りにアタシも手伝わせろってこと!」

そう言うとテッペイの有無も聞かず。走り出す。

さっきの刺激臭も、うるさい金属音も聞こえなかった。脳裏にはアレが動く姿しか映ってはいなかった。

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