第9話 テスト終わりは……

三人での図書館勉強会はテストの終了と共に終わりを告げてしまった。


小島さんが僕に話しかけることはなくなり、君島さんは挨拶はしてくれるけど。

これまでみたいな気軽な関係も終わってしまうのだろう。



「ねぇ、テル君」



テスト終わりの土曜日。

用なしとなった僕は帰ろうと席を立ちあがる下駄箱で靴を履き替えていると君島さんに声をかけられた。



「君島さん?」


「ねぇ、テル君。テストね。テル君のお陰で凄くいい点数が取れそうなんだ。ユウもいつもより出来たって喜んでいたよ」


「そっそう?力になれたならよかった」



素直にお礼を言われるってなんだか恥ずかしいな。



「ねぇ、テル君。一緒に打ち上げしない?」


「ふぇ?打ち上げ?」


「そう二人キリで」


「えっえっいいの?」


「もちろん。行こ」



君島さんの手が僕の手を握る。


二人で校門を出て、しばらく歩くと君島さんが恥ずかしそうに手を放す。



「ごめんね。ちょっと強引だったかも」



恥ずかしそうにする君島さんも、謝ってくれる君島さんも、始めて見る君島さんに圧倒されてしまう。



「ううん。むしろ、嬉しいです」



だから、僕も恥ずかしくて言葉を交わす。



「どこに行こうか?」



彼女にどこにと聞かれて、僕は一つしか浮かんでこない。


僕は声フェチだ。


声フェチが一番好きな人の声を聞けるなら……



「カラオケに行ってみたい」


「えっ?珍しいね。テル君はあまり興味ないのかと思っていたよ」


「うん。僕自身はあまり歌うのは得意じゃないけど。君島さんが歌っている姿がみたいんだ」


「えっ?う~ん。それはちょっと恥ずかしいな……」



じ~と音がしてしまうぐらい。僕は君島さんを見た。



これは僕の願い。



「もう、そんなに見つめても行きません。もっと、気楽な感じで誘ってくれたら考えたのに、本気過ぎでハズイ」



君島さんが恥ずかしそうにいやいやと顔を振る。


その姿も可愛くて、今までで一番話が出来て、僕は幸せだけを感じられている。



「なら、いっぱい話ができるところがいいな。君島さんの話が聞きたいんだ」


「お話?う~ん何を話そうか?」


「なんでも、なんでも聞きたいんだ。君島さんの声が聴けるなら」


「もう……そんな言い方。ねぇテル君。あなたは何を願うの?」



俺は……俺は自分の好きな声を聞きたい。



君島さんの聞きたい。



「僕は、君の声が聞きたい。君の声を聞いていたい。ずっと側で君の声を……」



それは告白?だったのかな?



「はい。なら一番側でずっと聞いていて」



初めて僕は彼女の手を取った。


自らの意思で……




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

声フェチは願望を叶えたい イコ @fhail

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ