第4話 知っているフリ
「これ私の彼氏!」
突然めぐみが箸を置いて、口をモゴモゴしながら、生徒手帳から写真を1枚取り出した。
「かっこいいー!羨ましいんだけど!」
さくらも箸を揃えて、写真を覗き込む。
奈美も少し前かがみになって、写真を見ようとした。
「え、これ、誰だっけ?たしか、アイドルだったような…」
どこかで見たことあるような顔。
そして衣装。
普段テレビを観る習慣のない奈美にとって、芸能情報はさっぱり分からなかった。
やばい。もしかして、みんな知ってるの⁉︎
私だけ知らない。だなんて言える雰囲気じゃないよね…
奈美も「めっちゃ、かっこいい!!」
と興味を持ったフリをして咄嗟に言った。
「私さ、今度コンサートに行くつもりなの。
よかったら、みんなで行かない?
まぁ、抽選だから当たるか分からないんだけどね」
めぐみは残念そうな声で呟いた。
待て待て待て、それはまずい。そもそもこの人誰かも、私全然知らないのに。
知ってるフリもいつまで通用するか分からない。
今ここでハッキリ言うか?自分?
でもそうしたら、場の雰囲気を崩してしまうよ。
とにかく笑って誤魔化せ!!
奈美は、意味もなく笑ってみた。
「じゃあ決まり!私、今日ネットで応募しておくね!当たるといいなー」
めぐみはすでに行くつもり満々である。
やばいことになったぞ、これは。
自分だけ「知らない」だなんて今さら、言えない。
そもそも名前すら分からない人のコンサートに行くのかよ、自分⁉︎
奈美の頭の中は1人フル回転していた。
「奈美、奈美! ちょっと話聞いてるの?」
めぐみが奈美の顔をまじまじと見つめながら、少し怒ったような口調で聞いてきた。
「あ、ごめん、ごめん。楽しみだね!
コンサート!! 当たるといいね!」
奈美は自分が今、どのような表情をしているか、鏡で確認したい気持ちになった。
あーぁ。またやっちゃったよ、自分。
いつも私これだもんな…
素直に本当のこと言えばいいだけなのに。
誰、この人?って…
すぐ人に合わせちゃう…
最後の一口に残しておいた甘いはずの卵焼きが、苦く感じた。
優等生の私にも苦手なことがある。それは「自分の意見を言うこと」典型的イエスマンの私は引きこもりになった momo @mo-mo1992
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。優等生の私にも苦手なことがある。それは「自分の意見を言うこと」典型的イエスマンの私は引きこもりになったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます