ここからみっつ
第22話 アシナガバチ・チューイングガム・難易度
「アシナガバチの作った肉団子を食してみたい……」
入社して2年が経つというのに、いまだにNが何を考えているのかさっぱりわからない。
軽い気持ちで興味を持つと、後悔することが目に見えているため注意が必要だ。
「先輩、何とかなりませんかね?」
問答無用で巻き込まれた。
イナゴの佃煮やはちのこくらいは食べたことがあるが、特に好んで昆虫を食べる癖はない。
「別に昆虫食に対して思うところはないが、せめて同好の士を見つけて会話しろ。」
アシナガバチは全般的におとなしい性格で、こちらから危害を加えなければ襲ってくることは稀だ。
とはいえ、子供のころに何度か蜂に刺されている身としては、視界に蜂を認めると謎の緊張感に包まれることは避けられない。
蜂にとっては、どこからが危害となるのかも
「あの緑色の肉玉、おいしそうなガムみたいじゃないですか?」
アシナガバチの肉団子、おおむね材料が青虫ということを分かって言っているのだろうか。
害虫である青虫をNが食い尽くすというのであれば、農家にとっては有益なのだろうが。
「私ガムって苦手なんですけどね! 噛みきれそうで噛みきれませんし、噛むか噛まれるか、みたいなトコありますし」
噛みきれないことはないと思うし、そもそもガムに噛まれるという発想も浮かばない。
今回のセリフは単純に頭が悪そうなセリフではあるが、Nの異常な性癖というか内面的な異常さについて、ガムのように油分と合わせることで溶かし消すことはできないだろうか……
無形の精神に対して物質でなんとかしようとすること自体ナンセンスではあるのだが。
ところでガムはチューイングガムなのかチューインガムなのか疑問に思ったことはないだろうか。
俺はない。
疑問に思ったキミには一言差し上げよう。気にするな、と。
結局表記と口語の関係に過ぎない。
英語表記の場合、Chewing gum なので愚直に読めばチューイング ガムではあるのだが、普通に読めばChewingのgとgumのgが重なって発音されはしないので、おそらくは、と表現させてもらうと、メーカー的には”グ”を含まないチューインガムが正式採用されている。
会社からは人材育成と急場の決断力を高く評価してもらっている俺ではあるが、それでもNの内面が浮き出てきた際に、とっさに最善解を導き出すことは難易度が高い。
俺とNとのランダムワードな日常 アサト夜 @asato-yoru
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