第15話 人口増加と経済について

21世紀は人類史上最も人口が多くなると言われています。

2021年の統計では、世界の人口が78.88億人となり、80億人を超えそうな勢いですが、これからさらに人口が増大する地域がインド、続いて東南アジア、その次が南米、そして最後にアフリカと続く予想です。

人口統計学でこれまでの予測は当たってきていて、コロナなが流行しても、人口動態の波は予測が当たりつづけています。

そのため、余程のことがない限り、それらは現実になるでしょう。


つまり、アフリカが人口爆発を迎える頃には、世界の総人口は100億人を超えていると予想されています。

そして、アフリカの人口が増大するのは今から30年以内と言われています。


人口が増えるということは、経済的にはプラスの影響があります。

ものを買う人が増えるので、作る側も増産体制に入り、増産するために積極的にコストを抑えて安く出回ることで、購買意欲も上がり、お金が回るスピードが上がります。

つまり、好景気です。

世界の総人口が増えれば、世界経済は好景気になります。


ですが、ここで考えていただきたいのは、増えた人々は何をどこで買うでしょうか、ということです。

それは果たして日本産のものでしょうか。

日本へ利益のでる物や事にお金を使ってくれるでしょうか。


中国が人口増加で景気が上がり、今や世界第2位の経済大国になりましたが、その時日本も中国政府が海外旅行を解禁したので、たくさんの旅行客で賑わい、爆買いなどで一部の経済が潤いました。

主に観光地や薬局が儲かったので、海外旅行客を受け入れるホテルが増えて外国人観光客向けにリニューアルしたところもたくさんありましたし、薬局も目に見えて増えました。


それは、日本が中国の隣にある手軽にいくことができる異国だったからです。

しかし、インドが中国と同じように経済成長をした場合、日本にくるインド人は増えるでしょうか?


インドは人口の8割がヒンズー教徒で、残りの2割がほかの宗教徒です。

ヒンズー教では、牛を神聖な動物として扱っているので、牛を食べたり、牛乳を飲んだりする文化はインドにはありません。

完全にタブーです。

インドで飲まれているミルクは、基本的にヤギのミルクで、バターやチーズなどの加工品もヤギの乳からできています。

日本のように、牛肉や牛乳が至る所にあり、よく食べる国に、ヒンズー教徒の人達が行きたいと思うでしょうか?

基本的にはインド人たちからすれば、タブーを推奨している国という扱いになるでしょう。

なので、8割のヒンズー教徒が日本を旅行先には選ばない確率の方が高いのです。


残りの2割の宗教徒が来日することは十分に有り得ます。

特に仏教徒はインドで2番目に多く、現時点でも1億7千万人程いるので、日本の人口を超えています。

彼らは日本の仏教にも興味を持っているでしょう。

しかし、インドでの仏教徒の扱いはあまり良いとはいえません。

ヒンズー教はカーストという階級が厳格に敷かれた宗教で、その下位のさらに下の奴隷階級の人が救いを求めて仏教徒に改宗することが多いのです。

なので、社会的に身分が低く、自立が難しい人達がインドの仏教徒の多くを占めることになります。

1億7千万人の中に、高い旅行費を払ってでも日本に来られる人は少なく、限られるでしょう。


次の世界経済の成長起点となるインドには、日本という観光産業が強い国はあまり大きなリーチがないと考えるのが妥当なところです。



その次の世界経済成長の起点となる東南アジア諸国はどうでしょうか?

残念なことに、日本は期待薄です。

東南アジア諸国には、今も尚、第二次世界大戦で日本軍に占領された歴史が色濃く残る国や地域が多くあります。

ベトナムやシンガポール、インドネシアは、いずれも日本軍が攻め入った場所です。

それらを全て忘れることはできません。

今の現地の教育にも日本軍の脅威が語り継がれています。

この価値観が次に爆発する若い世代に引き継がれるかは分かりませんが、日本による影響は戦争だけではありません。

近年になって、ベトナム人やタイ人たちを、日本の街中で、あるいは農村で見かけた人もいるでしょう。

彼らは外国人技能実習生として、政府が一括で雇い入れて、人手の足りない地域や誰でも出来る仕事に格安で法外の長時間労働をしてくれる、半分奴隷として日本で働かされていました。

コロナが流行し、彼らの大半は祖国に帰りましたが、過酷な労働や祖国での価値観との違いもあるのに、意味のわからない叱責や重労働を強いられていた彼らが祖国に戻って、日本は未だにやばい国だということを広めています。

戦争だけではなく、現時点でも日本はブラックな社会なので、そんな国に旅行に行く気分にはならないでしょう。


欧米諸国へは尻尾をふり、アジア圏には経済優位による強権をかざす。

それが日本のこれまでや現時点の姿です。

東南アジア諸国の人々が見ている日本は、けっして良い国だとは思われていないでしょう。

そんな国に積極的に来たいとは思わないでしょうし、むしろ来るとしたら仕返しをしに来たいと思うくらいが妥当なところです。


今後の10年は暗礁に乗りあげる覚悟が必要です。


その後にくる南米に関して、日本は割と歓迎されていると思います。

戦後の日本の政治的な思惑によって、南米に日本から大量移民をしたこともありますので、現在でも移住先で暮らしている元日本人の3生や4生が暮らしているでしょう。

環太平洋造山帯に位置する太平洋側の国々とは、大地震などで援助をし合う形なので、日本への好印象をいだく人もいるはずです。

世界の裏側、日本という未知の場所に行ってみたいという欲求もあるかと思うので、観光に訪れる人もそれなりに期待できると思います。

ただし、この南米の人口増加が来るまでにはあとは10数年は先の話です。

それまで日本が南米の人達に認知され続けて、是非行きたい!となるような国でいられるでしょうか。

この後もさらに過酷さを増す不況と政治不安、旧世代が幅をきかせ続ける旧態依然のストレスフルな社会を継続する日本で、本当に魅力がある国を維持できるのかは、苦しい戦いになるものだと思います。


最後にして最も広く、そして最も影響が大きいと言われている南米に対しては、今の日本がと言うよりも、将来へと続く過程で日本がどのように振る舞うかが鍵になってきます。

既にロシアと中国とアメリカやヨーロッパは、南米に向けて手を打っています。

日本も1部で有益になりそうな手を打とうとしていますが、現時点では他国とこ競争力が低いということだけは添えて、これからに期待しておきます。



日本の政府は、観光がリーチとして成立しない場合のことを踏まえていないようで、IRとかいう無駄に経費のかかるアメリカなどで廃れそうなものを持ち込もうとしています。

それは、アメリカからの圧力がかかっているからということもあるでしょう。


観光という3次産業がリーチとならない場合は、1次産業や2次産業の面で、次世代向けの車をどんどん作って輸出したり、ものを作って輸出したり、基本的には安いものを大量に生産したり、品質が高くて購買欲を刺激するものを売っていくのが経済的なセオリーです。

ご存知の通り、日本は国土の狭さと政治的な失策続きで慢性的な人手不足や社会不安により、爆発した地域の人口に見合うだけの安いものの大数量生産には向いていません。

日本が取れる方針は高品質で高級なものをいかに売るというものです。


またサービスの面では、日本のアニメや漫画、侍や忍者などのIPを生かして、それらに因んだグッズ販売をしたりということがうまくできれば、リーチの幅が広がるかもしれません。


ここでも、厳しい現実を伝えておきますが、今の所、世界で1番勢いのある漫画は、スマホ社会の縦読み文化をいち早く取り入れた韓国や中国産の漫画で、今世界では最も読まれています。

未だに紙の名残を残し続ける日本の古い見開き型の漫画文化は、残念ながら今後隆盛することは難しいでしょう。

完全に時代遅れです。


小説も電子書籍なんかは縦読みの方が適しているので、カクヨムなどのような縦読みができるものが好まれてくる。

というか、既に縦読みの電子版のみを販売するメーカーも世界では増えてきています。

世界的にスマホが標準となってきていて、紙媒体は生き残れない流れが来ています。

特にこれから増える若い世代には、生まれた時からスマホは存在していて身近なので、本を持ち歩くという文化自体を古いものとみなしていく社会がスタンダードになることは明白です。


本を購入して部屋に置く、という文化は、世界的に見てもう古いという認識が広がるなかで、本に囚われていては生き残れないでしょう。

目に見える形でもそれが現れています。

今、書店がどんどん街から消えています。

みんなAmazonや楽天などで電子書籍を買うのが普通になりつつあるため、書店に足を運ぶ必要がなくなったのです。

10年ほど前からそういう時代になるという予測がありましたが、実際にそうなってきたということです。

動画も月額加入で見るので、今やレンタルショップも消えています。

時代の流れから取り残されているものは消えるしかないということです。

そこにビジネスチャンスは訪れないからです。

古い物を愛でるのは勝手ですが、それをスタンダードだとは思わない方がいい。

みなさんがシビアな目線を持って、より良い将来へ向かうためには、何ができるのかを考えてください。


ドラマも韓国や中国、欧米には世界的なシェアで負けています。

映画はインドの映画が最近は世界的に好況なので、日本が映画で隆盛することは難しいと思います。

特に、昨今はグロテスクなアニメの劇場版が日本の映画館で人気を博していますが、海外ではそういうグロ表現は規制の対象であるのと同時に、あまりウケていません。

今1番受けているインド映画の1つでもみたことがあれば、世界が求めているものと日本人が求めているものの間に分厚い壁があることがよくわかるでしょう。

過剰なエロやバッドエンドに関しても、基本的には世界ではウケない傾向があります。

インターネットが普及し、そういうものが好きな人に対して供給される情報は飽和していて、別段お金を払ってまで見る程の価値ではなくなってきているからです。

世界では、ハッピーになれる、気分が高揚する、考え方や思考にプラスの影響をもたらすものがウケています。

日本が抱える世界とのギャップや壁は1部では強みともなりえますが、その反面で諸刃の剣です。


日本発祥の長編アニメ文化も、今は中国産のアニメのクオリティが著しくあがっていることで危機的な状況であると言えます。

その背景に、日本のようなクリエイターを搾取して作り上げる体制よりも、中国のように人にお金を使って人海戦術でも良いものを作る方が、圧倒的に高パフォーマンスで高クオリティであることが明らかになってきています。

精神論では勝てません。

数は力で、その力で作ったもの、かけたお金以上にするために、世界に向けて発信をするマーケティング能力が中国にはあります。

全世界に中国語を話す人がいて、全世界のマーケットへ適した販路を見いだすことができます。

個人から多額の出資(粘着的な購入)を強いる日本の従来のやり方では、英語圏や中国語圏の文脈でグローバル展開を基軸にした戦略に勝てる見込みは万に1つもありません。

ターゲット人口の桁が文字通り億単位なので、桁が違うということです。

日本語だけでは勝負にならないということです。

英語か中国語のどちらかで作品を提供できれば、それだけでターゲット人口が数桁が広がります。


ゲームに関してもインドネシアやシンガポール、タイなどの東南アジア圏が起点のものが増えつつあり、そちらが勢いつけば日本のゲーム産業も怪しいものです。

事実として、国内メーカーのだす作品は年々酷評が増えつつあります。

日本が持っていて頼れるのは、既存IP知的財産の著作物や、これから名をあげる若いクリエイターによる全く新しく世界で受け入れられる体験です。

日本がその事を意識して、若手にもっと投資してクリエイターを育てなければ、不況からの脱却はどんどん先延ばしになるでしょう。

人が増える見込みがない国なので、産業も乏しく、若者から限界以上にお金を吸い上げて老人を養う国の体制では、国全体で将来を棒に振る方向に傾いているといっていいでしょう。

すでに破綻しているやり方を続けずに、早めの方向転換が必要ですが、老人たちは頭が固く、腰が重い。

老人たちがみな、私はもうすぐ死ぬから関係ない、ではこの国もそう長くは続かないでしょう。

あなたがたの道ずれに若い世代を犠牲にして行くことを、誰が敬えるでしょうか。


世界の若い世代は経済的にも精神的にも潤いを持ちますが、日本と韓国に関しては、将来への不安しかない現状です。

最後に人口動態の話に戻りますが、日本と韓国は合計特殊出生率が著しく低い水準にあります。

将来的に韓国の人口が今の4分の1になる未来が約定状態です。

そして日本も、現在1億1千万人超ですが、2100年までに、つまり21世紀の後半には5千万人を下回るという人口推移が約定状態です。


人口が減ると、景気にはマイナスとなります。

人口が減るとその国の国内総生産は下がります。

市場に出回るお金が少ないので、巡りも悪い状態がデフレスパイラルと言われる現象です。

デフレスパイラルは、購買層が少なく、少量高値での生産・販売を余儀なくされる状態です。


そうした中で、外国産の物に頼り続けていると、その少ないお金も外国に流出して行くことになります。

ものの購入は企業や国や地域への投資や選挙の投票と同じで、何に対してお金を使うのかが、これまで以上に大きな影響力を持ちます。


地産地消という言葉があり、その地域で作られたものをその地域内で消費する。

すると、地域にお金が還元されて、その地域での新たな生産に巡る。

好況であれば増産にも踏み出せて、売れ行きが良くなければ減産します。


地産地消とは逆に、その地域で作ったものを輸送コストをかけて他の地域に持っていくと、輸送コストの分は輸送をする会社や国(国は輸送コストを税金で賄っているので、国民の痛手に繋がることでもあります)に還元されていきます。

輸送コストに対して多くを支払うよりも、地域に還元されて、その地域のものが他の地域で売れるくらいの方が国も、地域も、理想的です。

それが一番良いはずですが、こだわりのない人や何も考えない人は、原産国や地域、輸送費のことは意識せず、店頭でついている価格しか見ていません。

物価が高くなる要因の一つとして、自国で生産しているものも、他国から入ってきた安いものに手を出しがちというものがあります。

他国から入ってくるものは、基本的には他国の裁量で値段が変わるものです。

国内で有力な生産者がいれば、他国のものが急激に高騰しても、自国内の生産品でカバーして結果として高騰が緩やかにおさまります。

しかし、今の日本は生産品の自給率が低く、他国に頼っているものが多すぎるので、小麦や大豆も北海道で生産しているのにメーカーが使うのは安かった海外産に偏りすぎていたので、北海道の産地が増産できずに高騰の緩和ができる量を超えてしまっています。


今の物価高騰は海外が起因(ウクライナ戦争や気候による原料不作)ですが、その背景として輸送コストの増大と生産者への還元を考えずにものを買う考え無しの国民が引き寄せた高騰であるとも言えます。

国内事情としても今後ますます人口が減り、物価高で景気が良くない状況は今より悪化する兆ししか無いのです。


まとめると。

人口は経済と密接に関係しています。

経済を上向きにさせるにはこのままでは問題があります。

経済は家庭の裁量にも深く関わりがあります。

人口減少が危機的な状況にある日本や韓国には、今の所明るい未来が用意されていない状況です。


今の生活に対してよりシビアに見ていただきたいと切に思っています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

社会についての視点 アルターステラ @altera-sterra

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ