第6話  ゲームセンター 

午後1時、僕たちはゲームセンターに行くことにした。UFOキャッチャーが得意な僕は期待と緊張で胸を躍らせた。

 ゲームセンターに着き早速、『あのぬいぐるみ可愛いー!』とシロクマのぬいぐるみの台に向け夏美ちゃんは歩み寄った。

夏美ちゃんは迷うことなくその台にお金を入れぬいぐるみをとり始めた。

700円、800円と使っても中々とれない。その傍ら僕はとろうとしているぬいぐるみではなく、夏美ちゃんの横顔を見つめていた。凛々しくも子供のようにひたむきな姿を見て僕はこの時初めて夏美ちゃんのことが好きなんだと気づき自覚した。

夏美ちゃんは不意にこちらを向き甘えた顔で『全然とれなーい』と言った。

ようやく来た魅せ場、手に汗とお金を握り僕は台の正面に立った。

僕は徐々にぬいぐるみを落下口に近づけた。

ついにその瞬間は来た。400円目でぬいぐるみをゲットすることができた。

喜びと安心感から全身から力が抜けていった。

僕たちは目を合わせハイタッチをし喜び合った。夏美ちゃんと手が触れあっていることに気が付いた僕は恥ずかしくなりぬいぐるみを取るため屈みごまかした。

ぬいぐるみを夏美ちゃんに渡すと可愛がるようにぎゅっと抱きしめた。

子供のようなその姿を見て一瞬父親になった気分になった。ぬいぐるみを抱きしめたままゲームセンター内を周った。

 プリクラコーナー付近に差し掛かった時、急に夏美ちゃんから『ねぇ、一緒にプリクラ撮らない?』と言われ、僕たちはプリクラを撮ることとした。

人生初のプリクラ、様々な緊張が交差する。

プリ機入口のカーテンをくぐりカメラの前に立つ。

スピーカーからガイドの音声が流れて来てそれに従いポーズをとった。ほっぺツン、横顔ピース、お願い、応援ポーズ、がお~、両手ハート、計6枚を撮った。

プリクラを撮るとき僕と夏美ちゃんの距離は近いなんてもんじゃなくお互いの半身がくっついていた。写真を見ても分かるほど僕の表情はもの凄く硬い。

プリクラを撮り終えて僕と夏美ちゃんの距離が元に戻ってもまだ僕の半身は夏美ちゃんの感触を、温もりを覚えている。

その後も僕たちはゲームセンターに置いてある様々なゲームをして遊んだ。

気づけば午後4時を回っていた。僕たちはゲームセンターで三時間も遊んでいたのだ。流石に僕も驚いて腕時計とスマホの両方で時間を確認した。

 ゲームセンターを出たとき夏美ちゃんは僕に言った。

『楽しかったね!この後どうする?』 

『うーん、夏美ちゃんはどこか行きたいところある?』

『私つかれちゃったから静かで少し休めるところがいいな』

『そんなところあるかな?』

『私の家今日だれもいないから私の家にいこ?』

僕はその瞬間頭が真っ白になり言葉に詰まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛の抱擁 川合恋矢 @akunn0103

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ