青春とは何かを探し回る主人公がまさに青春ど真ん中を突き進むストーリーがすごく良い作品で、楽しく読ませていただきました。
青春とは中国の五行思想で季節に対応する色があって、青春・朱夏・白秋・玄冬のうちの青春を人生の未熟な時期を指す言葉として使うようになったというのが実際のところなのですが、この物語の二人は未熟さゆえにそれを知らず、大人たちが作り上げた枠組みである「青春」の答えを見つけようともがいた結果そこからはみ出し、独自の解釈で自分たちの気持ちを新たな言葉として生み出し、自分たちだけの季節である「桃夏」を謳歌しようとする。これこそがこの物語の唯一無二の作品性であり、秀逸な点です。
暑い夏の日常として描かれるノスタルジックな情景や、そこに生きる二人の内面が伝わるような文章表現もとても素敵でした。
まさに二人が作り上げたツリーハウスと「桃夏」という言葉の通り、未熟だけど、だからこその独創性と輝きを持つ素晴らしい作品です。