足首に蛇が一匹巻き付いていた。

生意気なと覚束ない手で取ろうとするが取れない。

絡みついて取れない。

その蛇は、入れ墨だった。


ベッドには自分一人。

昨日の男は入れ墨をそこかしこに入れていたと思い返すには遅かった。

苛つく。

別にこれまで墨を入れたことがなかったからではない。

今の自分からすれば強制的に入れられたからではない。

なんとなく、あの男の癪にさわる笑顔が思い返されてしょうがないからだ。

ちくしょう、と呟いてみた。

それほど感情を伴ってなかったから、悔しくはないのだ。

ただ無性に、この蛇を見たくない。

ならば布で隠すか?

いや蛇がいる事実が頭に来るのだ。

消したってあとは残る、癪だ。


ムカつくなぁ。

酒を飲む気にもなれない。

かと言って二度寝を決め込むには目が覚めすぎている。

とりあえず、乱暴に毛布を剥がし───


蛇を撫でてみた。

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蛇の吊り縄 @Dekai_niku

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