3-34-2話

スミマセン、ロベルトたちに関する記述が完全に抜けていましたので、3-32-2話の前半に900字ほど追記しました。ロベルトたちの設定に関するモノですので、読まなくても話しは通じると思います。

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 ロナウディア王国の王家専用飛空艇エヴァンジェリン号で移動して三日と半日。俺たちはグランブレイド帝国の帝都に一番近い飛空艇乗り場があるシドリアという都市に到着した。


 ここからは馬車で移動する。エヴァンジェリン号の乗組員たちは最小限の人数だけを残して、艦長のロベルト以下一五人のメンバーが護衛として同行する。奈落の虫使いの件もあるし、警備を厳重にするのは当然だろう。


「ロナウディア王国の第一王子エリク・スタリオン殿下ですか……失礼ながら、本物のエリク殿下ですか? 殿下がいらっしゃるなど聞いておりません」


 入国手続きのために乗り込んで来たシドリアの役人が疑わしい目を向ける。たぶん、これもドミニクの差し金だろう。ドミニクにはエリスとの婚約を破棄することに何のメリットもない。だから足止めしている間に、何か仕掛けて来るつもりだろう。


「君たちが話を聞いていないのは仕方ないけど。これが何か、君たちにも解るよね?」


 エリクが提示した書面には、グランブレイド帝国皇帝がエリクを招いたことと、皇帝直筆のサインが皇帝印の隣に書かれている。


「これは……エリク殿下、大変失礼致しました!」


 この召喚状を否定すれば、グランブレイド帝国の皇帝を否定することになる。エリクはこうなることを想定して、用意したってことか。


「じゃあ、アリウス。行きましょうか」


 飛空艇を降りるタイミングで、エリスが当然のように腕に抱きつく。ここはグランブレイド帝国だし、誰が見ているか解らないからな。


「エリス殿下だけズルいわよ」


 ミリアが慌てて逆の腕に抱きつく。グランブレイド帝国にいる間は、このパターンが続くのか? ソフィアが複雑な表情で、ノエルが羨ましそうに見ている。


 街中で馬車を調達して帝都に向かう。さすがに王家の馬車ほど装備は完璧じゃないけど、普通に考えれば十分高級な馬車だ。


 グランブレイド帝国の帝都まで、馬車で四時間くらい掛かる。俺たちは二台の馬車に分かれて、護衛たちは徒歩で移動する。この人数の馬を調達するには時間が掛かるし、護衛たちはレベルが高いから自分で歩いた方が速いからだ。


 俺が乗る馬車にはエリスとミリアとノエルが一緒で、御者席にエリスの侍女のロゼッタが座る。もう一台の馬車にはエリク、ソフィア、ジーク、サーシャ、御者席にはエリクの侍女兼護衛のベラとイーシャが座っている。


 シドリアの街を出た少し後。俺の『索敵サーチ』に、後を追うように街を出た集団が反応した。人数は五〇人ほどで、一〇〇レベル超えがゴロゴロいる。


 馬車の窓から確認すると一kmほど後方に三台の馬車と護衛が見える。見たところ怪しい感じはしない。だけど『索敵サーチ』に反応した魔力の数と人数が明らかに合わない。馬車の中に数十人が隠れているってことだ。


 エリスも何か気づいているようで、目が合うと頷く。俺はエリクに『伝言メッセージ』を送る。


『エリク、尾行している奴らに気づいているだろう?』


『ああ、後ろからついて来る馬車のことだよね。向こうが仕掛けて来たら対処するから、みんなにも伝えておいてくれるかな』


 俺はミリアとノエルに状況を説明する。


「アリウス、私も戦うわ。この様子だと、帝都に着いてからも襲われそうだし。私はみんなのことを守りたいの」


「ア、アリウス君……私だって、みんなの役に立ちたいよ。私なんかじゃ、役に立てるか解らないけど……」


 護衛がいるから大人しくしていろだなんて俺は思わない。自分の身は自分で守るのが基本だろう。俺はみんなのことを守りたいけど、四六時中一緒にいる訳じゃないし。みんなを籠の中の鳥みたいに扱うつもりはないからな。


「ミリア、ノエル。二人の気持ちは解ったよ。だけどノエル、戦うってことは人を殺すことになるかも知れないんだぞ?」


 ヨルダン公爵の襲撃事件のときに、ミリアの覚悟は聞いている。だけどノエルは戦いに参加することで、たとえ剣や攻撃魔法を使わなくても、間接的に人を殺すことになると解っているのか?


「ア、アリウス君……それくらいは私も解っているよ。だ、だけど私が戦わなくても代わりに誰かが人を殺すことになるってことだよね? 私もみんなと一緒にいたいから頑張るって決めたんだよ」


 ノエルが真剣な顔で俺を見る。どうやら俺はノエルを見くびっていたようだな。


「ノエル、解ったよ。ちょっと待っていろ」


 俺はエリクに再び『伝言メッセージ』を送って、ミリアとノエルの意向を伝える。護衛たちの指揮を執っているのはエリクだからな。返事は直ぐに帰ってきた。


「エリクの許可は貰った。だけど解っていると思うけど、無茶なことはするなよ」


「「アリウス《君》、ありがとう!」」


 別に礼を言われることじゃないだろう。無茶をするなとか、俺だけには言われたくないと思ったけど、ツッコまれなかった。


「エリスはどうするんだ?」


「勿論、戦うわよ。私がみんなを連れて来たんだもの。エリクから聞いているけど、ミリアは実戦経験があるのよね だけど相手はたぶん手練れだから気をつけてね。

 ノエル、向こうが仕掛けて来たら教えるから、今から緊張していると疲れちゃうわよ」


 エリスはそれぞれ二人に合った言葉を掛ける。こういうところもエリスらしいな。

 しばらく街道を進んでいると、周りに人通りがなくなったタイミングで奴らが動いた。馬車から武器を持った集団が飛び降りると、一気に加速して距離を詰めて来る。


 装備はバラバラだけど、統率の取れた動きだ。シドリアの街で足止めされていたら、こいつらに夜襲された可能性があるな。


「仕掛けて来たぞ」


「うん、解ったわ。『身体強化フィジカルビルド』『加速ブースト』『飛行フライ』!」


 ミリアが支援魔法を連発して準備する。

 エリクの指示で、護衛たちが立ち止まって進路を塞ぐ。

 

 襲撃者たちが一斉に範囲攻撃魔法を放つ。だけど攻撃は予想していたから、グレッグ隊とロベルトの部下の支援役が防御魔法を多重展開。魔法を使った連携では、こっちの方が一枚上手だな。


 俺たちも馬車を止めて外に出る。エリクと一緒にソフィア、ジーク、サーシャも馬車を降りた。みんなで迎え撃つつもりみたいだな。


「エリク殿下たちには悪いが、こいつらを仕留めるのは俺たちの仕事だ。おまえら、一人も通すんじゃねえぞ!」


 グレッグの指示で一二人の騎士が完璧に連携して、襲撃者たちを次々に仕留めていく。


「私は殿下の邪魔をするつもりはありませんが。この程度の輩など、私たちが殲滅しますよ」


 ロベルトたちもロナウディア王国近衛隊の精鋭だけあって、人数で勝る襲撃者たちを切り崩す。


 オスカー隊やジーク、ソフィア、サーシャの護衛たちも善戦している。この状況なら、みんなが前に出過ぎなければ問題ないだろう。


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