君と空

雪蘭

かける

 『君が空を〝描けた〟とき』、

僕は君の横顔見つめてた。それはそれは嬉しそうに、眩しそうに見上げる君のその顔は、僕を明るく照らしてくれた。


 『君が空を〝掛けた〟とき』、

僕は君を世界に自慢した。誰に何と言われようと、君は君。僕はいつでも君の味方だったよ。


 『君が空に〝懸けた〟とき』、

僕も隣で静かに祈ってた。それが届くことはないと知りながら。君の寂しそうな横顔を見つめながら。


 『君が空に〝駆けた〟とき』、

僕は一人ぼっちだった。からの左側は風が吹くと寒かった。空だけは、変わらず青かった。





これは僕が君のために送る鎮魂歌レクイエム。君みたいに芸術にはできない、僕の精一杯。でも僕は未だに君の、影のない影をつい追ってしまう。

となりに君がいる気がして。

となりで君が笑ってる気がして。

君が、抱きしめてくれている気がして。


君がいなくなって、初めて気がついたんだ。

    こんなに、〝君〟という存在が僕の中で大きくなっていたことに。

    こんなに、〝君〟が僕を支えてくれていたということに。

    こんなに、〝君〟のことが好きだった、ということに。

今さら気づいても、遅いのにな。



『私のことなんか忘れて、前を向いて生きて。』

 それが君の最期の言葉だったけど、できそうにないや。だけど、前を向けるように鎮魂歌レクイエムに付け足させて。




 『僕が君から〝翔ける〟とき』、

君の愛した青空を、僕も笑って見上げるよ。君と僕を〝架ける〟、あのときとは少し違うように見える青空を。



これは君と僕の、鎮魂歌レクイエム




 

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君と空 雪蘭 @yukirann

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