これはファンタジー小説向けにちょうどいいかも!「建築知識2024年7月号 中国の建物と街並み 詳説絵巻:新石器・古代王朝から清朝まで」
前回、速報で「築知識2024年7月号 中国の建物と街並み 詳説絵巻:新石器・古代王朝から清朝まで」という雑誌が出るようですよ~という記事を書きました。
ただ、その時の鷲生は「何千年もの通史が雑誌一冊でまとまるかなあ?」と懐疑的で、積極的に購入する決心はついていませんでした。
ところが。
ちょっとむしゃくしゃすることがありましてw 「ええい、ネット書店の買い物かごに入れてた本をポチってやるぅううう」と注文して購入いたしましたw
今日の時点では届いたものをパラパラとしか見ていないのですが、鷲生がしっかり読めるような時間が取れるのがだいぶ先になるのに対し、雑誌が簡単に入手できる時期は限られているので、取り急ぎ鷲生が読んだ範囲で感想をお伝えしようと思います。
※なんで今すぐ読めないかといいますと、現在図書館から平安時代関連の本を借り出しており、今年の大河ドラマの影響か予約待ちの方がいらっしゃるので、そちらを最優先で読まなければならないからなんです……。
この「建築知識2024年7月号」の中華特集、情報量は思っていたより多いです。
……ただ、それは字が小さいということでもありまして。
鷲生は年齢の割に老眼が進んでない方だと思いますがw、それでも、ちょっとしんどいですw
内容が中華なので画数の多い漢字が頻出しますが、それが潰れてしまって……。
しかしながら。
読み手の老眼対策なのかどうかわかりませんが、発行する出版社によりますと「建築知識PDF版」が期間限定(2024年7月20日まで)で発売されているのだそうです。
紙の雑誌の8ー9頁に広告が出てますし、下記の出版社のWebサイトでも案内があります。
エクスナレッジ・オンライン「話題になったあの特集も! PDF版「建築知識」が期間限定発売!【6/20~7/20】」
https://online.xknowledge.co.jp/16845/
広告でもPDF版の5つの特徴の最初に「小さな文字も拡大して読める」とありますw
またPDFは個人のデバイスに所有できるのも利点だとのことです(普通の電子書籍は「閲覧」できるだけなので)。
さて。
この「建築知識」の中華特集、内容としてもファンタジー小説を書く人向けなのではないかと思います。
といいますのも。
実際に残っている個別具体的な建築だけでなく、もうちょっと抽象的な「建築物についての理念」とか、「ルール」とかの説明があるからです。
しょっぱなに『周礼』「考工記」から「儒教の教えをベースにした理想的な都市の構成」という項目があります。
現存はしてないけれど、理想的な建築はどうであるべきだと考えられていたかがイメージできます。
で。まあ、頭の中の理想ですからとても整然とした姿です。
ファンタジー小説の内容によりますが、特に建築がお話の筋に絡まないのなら、登場人物の行動する世界というのはシンプルだったり図式的だったりすることが多いのではないでしょうか。
たとえば、日本の例になりますが……。
2024年現在、大河ドラマ「光る君へ」が放送されており、オープニングで平安京の模型が登場します。
アレ、京都市の平安京創生館にある模型のが元ネタだと思いますが、実際の平安京があのとおりであったわけではありません。
為政者は条坊制の整った左右対称の都城を造りたかったのでしょうけれども、実際の京都盆地では右京部分が低湿地なために早々に寂れたと言われています(慶滋保胤の『池亭記』が出どころですが、言うほど寂れてなかったという見解もあります)。
また、平安時代っつーても四百年ほどありますので、あの模型は、その前期中期後期を重ね合わせるようにして作られたものです(その平安京創生館で売られている書籍『よみがえる平安京』には、ちゃんと前期中期後期それぞれの邸宅等の分布図が掲載されています)。
ただ、別に物語の内容に関係するのでなければ、「このお話は整然と区画された古代の都市(平安京)で繰り広げられている」と視聴者・読者にイメージされればそれでいいわけで……。
こんなふうにフィクションの「背景」として使うならば、個別具体的な建築作例よりも、今回の「建築知識」にあるような抽象的な理念やルールの解説の方が役に立つ面もあるかかなあと思いました。
また、この雑誌は建築分野の雑誌なので(純粋な学術誌というより一般人向けだと思いますが)、構造について”理系っぽい”説明があります。
たとえば「斗栱は屋根の自重や風圧を分散させて梁や柱に伝える役割をもつ」とかですね(22頁)。
美的な観点からの記述もありますが、構造の機能についてのこういう説明を見ると、ああ建築分野の雑誌だなあ~と感じます。
ファンタジー小説を書くときには、登場人物がその内外を動く建築物を、書き手がそれぞれ頭の中で「建築」していると思いますが、こういう実用的・機能的な構造の知識があると頭の中で建築しやすくなるような気がします。
あと、鷲生は現在書いている平安ファンタジー内で清涼殿に燃えて貰ったんですがw どこに火をつけたらどう燃え広がってどう焼け落ちるか、清涼殿の建物紹介図を見ながら想像してました(※1)。
「建築」するだけでなく、火災とか戦乱とかで「崩壊」する場面にも、このような構造の知識が役に立つのではないかと思います。
物理的法則に従えば、こういう風に崩れていくであろうというプロセスをイメージしやすくなるといいますか……。
鷲生の場合は謀の一環で火災に遭うくらいですが、戦記物に近い内容を書く方には、建物がどう壊れるかの知識があるとより具体的な描写をするのに便利かもしれませんね。
今回の「建築知識」は、実際に存在している個別具体的な建築についての解説としては物足りないかもしれませんが、ファンタジー世界内で、物語の背景にちょうど良さそうな建物を頭の中の想像で作り出し、動かすのには有用な本ではないかと思いました。
むしゃくしゃして購入した本ですが後悔はありませんw
ただ、老眼が気になる方にはPDF版の方がもっとエエかもしれませんと申し添えておきますw
あと、この本の図を見て思うのは、やはり日本の古代と共通するなあという点。
古代中国風建築の再現建築としては、京都の平安神宮が有名ですが(大内裏の八分の五復元)、近年、奈良の平城宮跡で大極殿や朱雀門などが復元されています。
Webサイトでも「日本や中国の宮殿等の事例研究」を参考にされたとありますし(※2)。
で、工事の際の建築現場の写真とかもこのサイトにありますよ~。
それから平城宮跡歴史公園のミュージアムでは「第一次大極殿復原にあたり製作された構造模型(1/5)を間近に見ながら、組物・瓦葺き(中略)などさまざまな体験を楽しめます。」とあります(※3)。
組み物や瓦の模型を組み立てたりできるんですよ。鷲生も何回かイベントに行っていますが、来月に友人を誘っていこうかなと考えています。その際には、今回ご紹介した「建築知識」も持って行くと、共通点と相違点を含め日中双方の古代建築について理解を深められそうです。
*****
※1『日本の住まいの歴史』(ゆまに書房)27頁の「清涼殿の間取りと主要な調度」を主に参考にしましたが、『源氏物語と平安京』(京都市生涯学習総合センター)の12頁の「『吹抜屋台』の画法による清涼殿図」が一番(頭の中で)燃やしやすかったですねwww
※2 平城宮跡歴史公園
https://www.heijo-park.jp/about/fukugen/
「建築知識」の23頁には、中国の木造建築は「殿堂式と庁堂式」に分けられるとあり、「日本の歴史的建築物はほぼ庁堂式」だと書かれています。
ただ、この平城宮の復元プロセスの説明を見ていると、これは「殿堂式」なのではないかという気がします。
今度行ってみたときに、何か解説がないか展示の説明を探してみますし、詳しそうな人が居たら聞いてみたいと思います。
※3 平城宮いざない館
https://www.heijo-park.jp/guide/suzakumon/izanaikan/
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