第23話 ランキング更新

「今日はいつも通り授業だが、まずは伊藤、退院おめでとう。一時はどうなることかと思ったが、無事で安心だ」


 久本は伊藤にそう告げる。


「えー、本日はこの前行われた全国統一魔法テストの成績が反映される。えー残念なことに何名かクラスメイトが入れ替わってるがうまく接してくれ。以上」


 久本が教室を出ると、クラスが一気にうるさくなった。


「おいお前!! いくつになってる?!?! 俺30位!!」

「へ、へー...やるやん」

「言えよー!! オラオラー!」

「25位」

「へ......?」

「ごっめーーーん!!!!」



「きゃー! 私すっごい伸びてるんですけどー! 信じらんなーい!」

「えーーいいなー、私なんてまだまだよ、最悪ー!」

「うわっ、ホントに上がってんじゃん。すげー」



「美雷!! お帰りー! やっと学校来れたんだね!」


 今井は勢いよく伊藤に飛びついて膝にまたがる。


「朝からテンション高いね今井さん。おはよう」


「うん!! おはよう! あっ、伊藤さんランキング見た? どうなってるか見てみようよー!」


 今井がランキングについての話題を切り出す。


「そういえばまだ確認してなかった」


 伊藤はポケットからスマホを取り出して確認する。


「えっ......?!」


 伊藤は画面を見た瞬間そう叫んだ。


「はああぁぁぁぁ?!?!?! な、な、な、なんでぇー?!」


 それに続いてスマホを覗き込んだ今井が叫ぶ。


 その叫び声はクラス中に響き、クラスは一瞬の静寂に包まれた。


「どうかしましたか? 伊藤さん」


 向こう側の席に座っていた向井がこちらへ来てそう投げかける。


「あっ! あなたのランキングは何位だったの?!」


「えっ? そんな大声を出さなくても......4位に下がっちゃってました、残念です」


「えぇ?! 向井ちゃんが4位なの?! 美雷が2位だからー、後藤君が1位か3位だとしてもあと一人いるってことだよね?! 向井ちゃんよりすごい人なんてテストで見なかったし、美雷もテスト受けてないのに2位だし......あー!! もう頭がパンクするよー!」


 今井が騒ぎ始めたところで一限目の教師が入ってきた。


 そこで会話は一時終了し、みんな自分の席へと戻っていく。


「えーっと、皆さんテストお疲れ様でしたー。今日はランキングの詳細について話すように言われたので、それについてやっていきまーす」


 そう話すのは広瀬先生。入学当初からAクラスを担当しているベテランの教師だ。


「えーと、まずは伊藤さん。あなたのランキングは現在学園で1位です。どうやらシステムの不具合で一部のランキングにおかしなスコアが表示されているようでして...ですのであなたのランキングは1位です。素晴らしいです!」


 広瀬先生がそう告げると伊藤はクラスメイトから拍手喝采が送られた。


「先生! 美雷が1位ってことは2位以降はどうなるんですか? 向井ちゃんとかー、私もそうですけど」


 今井が広瀬に質問する。


「そうですねー、元に戻った数値がこのクラスで2位に位置するのでそのままなのではないですか?」


 その発言を聞いた生徒たちはドヨめいた。


「マジで?!」

「ヤバすぎんだろ......」

「このクラスに向井と後藤を越えられる奴なんているか?」


「はいはい! 皆さんがそうなるのも分かりますが今は授業中ですから私語は慎むように」


「先生! その2位の生徒って誰なんですか!」


今井が手を挙げて質問をする。


「そういうのって言ってもよかったんでしたっけ......?」


「はい! どうせみんなの順位を聞けば出てくるので!」


「そうなんですか......。えーと......石川進君?って書かれてるわね。あれ? でもこの子、全然来てない子だわ」


生徒一同、困惑中である。


「はい! それじゃあ授業やっていきますよー!」


「「「はぁぁーーーーい」」」


「それじゃあ今日は何故伊藤さんが1位になったのか。皆さん疑問に思ってるでしょうね。ですが! 私たち教員にとってはなんの不自然もないのです」


広瀬先生が前にある黒板に画面を映す。


「えー、まず最初にランキングというのは学校での態度や成績、それに加えて学校外での活動も含まれます。もちろん学校外の活動をしたという証拠も必要になります。そして全国統一でのイベント、資格、などの色々な事から採点されます」


「詳しいことはあまり言えませんが、伊藤さんは既にマスターの資格を持った犯罪者を2人倒しちゃったんですー! なので相当な点数が付けられてると思いますよ」


広瀬先生の発言にざわつく生徒たち。


「伊藤ヤバすぎんだろ......関わったら殺されそうだ......」

「あんなに可愛いのにこんだけ強いとか神様理不尽すぎだろォォ!!」



(ふっ、みんな私のこと褒めまくってる。そんな褒めてもいいものはあげないけどねー)


伊藤は話の中心になれて気分が高まっていた。



〇●〇●〇●〇●〇●〇●



「そういえば加藤ちゃんって今日休みだったね?」


今井が向井に尋ねる。


「確かー....海外旅行に行くって言ってましたよ。テストも終わりましたしいいんじゃないですか?」


「行くなら私たちも連れてってくれたらよかったのにー! 海外旅行とか行ってみたいー!!」


「どこ行ったんだろ加藤さん」


「パリって言ってましたよ。良いですよねー!」


「パリかー、なんか有名なものあったっけ?」


今井がアホ面をしながらそうつぶやく。



(海外旅行なんて贅沢な人だね加藤さんは......)


伊藤はそう思いながら今井たちと校舎を出る。

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