第4話 切断 破壊 瞳孔


「時々……何もかも壊れてしまえば良いって思うんだ。全て……破壊してしまおうかって……」


僕の言葉に最初キョトンとしていたキミがクスッと笑って


「恐い事言うじゃん。でも……まあ…分からなくは無いけど」


そう言って僕を見つめた。何だかその瞳がいつもと違う感じがして……僕はドキッとした。


「俺はどっちかっていうと……自分が……消えて無くなればいいなって思うかな……時々だけど……自分を壊したい衝動に駆られる」


優しく微笑むキミに


「似たような感情だけど…言ってる事は真逆じゃない?」


僕は思ったままを口にした。


「世界を壊したいお前と、自分を壊したい俺……対象が違うだけで一緒だろ」


そう言って愉快そうに笑ったキミが頭から離れなくなった。




僕達はそれから時々、その事について話をするようになった。

誰もいなくなった教室や、僕の部屋、あるいは電話で……。

そしてキミはお気に入りの場所へも連れて行ってくれた。

小さな架道橋。下には大きな国道が通っていて、絶え間なく車がそこを通り過ぎていく。


「ここから見渡す景色が好きなんだ。それに……ここから落ちたら……自分を壊すことが出来るかな…って思うんだ」


相変わらずキミが向ける笑顔が優しくて…。僕はつい、いつも見つめてしまう…。

そして……僕は何も言えなくなる……。

最近……世界を壊したいと思わなくなってしまった僕は………

なんだか……君を裏切ってしまった様な、罪悪感に囚われているから………。



突然学校を休んだ君にいつもの様に電話を掛けると、何回かのコールの後突然切断され、それきり掛からなくな

った。

僕は不安に駆られキミの家まで走って向かった。

けれどキミはいなくて……余計に不安が入り込んでくる……。


『自分を壊したい衝動に駆られんだ』


キミの言葉が頭から離れなくなる。

僕は急いであの架道橋に向かった。



息を切らせ、苦しそうにしている僕をキミはすごく不思議そうに見つめる。


「………なんでそんな急いで来たんだよ」


「…だって………本当にキミが………」


———自分を———壊してしまったら———


「この頃……自分を壊したいと思えなくなったんだ」


突然口を開いたキミが……僕を見つめる。


「本当に壊しちゃったら………お前に会えなくなるから……」


キミがいつもの様に優しく笑うから———


「僕も今は………キミがいる世界を壊したくないって……思う……」


やっと……キミに伝えた。

キミの瞳孔が微かに大きくなって………

初めて見るキミの照れたような笑顔に、僕も思わず笑顔になっていた。



⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎


少し前にTwitterの診断で出たお題で書いてみました。

本当はもう少し猟奇的な話になる予定でしたが

思い直してやめました。

いつか機会があったら書いてみたいです。


                海花

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ショートストーリー 海花 @j-c4

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