エピローグ~不透明だった君~

数年後。


「「「かんぱーい!」」」

 キンキンに冷えたビールを流し込む。同時に仕事の疲れも流されていく。


「いやあ、にしてもびっくりしたよ。まさか蒼とこんなところで再開するとは」

 少し声が低くなった近藤が言う。体型がガッチリとしていて、肌が少し焼けている。

「ホントそれな。マジ懐かしい」

 悠馬が笑顔で言う。高校生の時よりも髪が短く整っていて、表情も明るく安定しているように見える。立派な社会人という感じだ。左手の薬指には指輪がはめられている。

「悠馬、結婚したんだね」

「そうなんだよ。大学で知り合った先輩でさ、めっちゃ美人なんだよ。しかもゲームが好きでさ~これ写真」

 そう言って自慢げに2ショットを見せてきた。2人もとても笑顔で、ちょうどいい身長差だ。とてもお似合いだ。

「おお!本当におめでとう」

「うん!なんか照れるな、、」

 そう言って悠馬は少し顔を赤らめた。


「近藤は最近どうなの?」

「いやあ、俺はさあ、結婚とかはあんまりなんけど………。でも最近筋トレはまってて、筋肉が恋人って感じかな!毎年大会に出てみたりしてるんだ」

「おお、すごいね。確かに近藤に筋肉ってめっちゃ合うわ。男らしいし、」

「だろ?」

 近藤は腕をまくって筋肉を見せてくれた。俺はよくわからないから偉そうなことは言えないが、本当にすごくて努力してきたことが伝わってくる。


「蒼はどうなの?」

「久しぶりに会ったことだし、沢山話聞かせてくれよ?」

「俺は⏤⏤⏤⏤⏤」


* * *


「ただいま」

「ぱぱあ!」

 娘の愛莉あいりが走って俺の方に向かってきた。めっちゃ可愛い。

「ただいまあ、愛莉」

 俺は愛莉の頭を撫でる。

「ぱぱあ、おかえい!ぱぱんこと待ってたんだを!」

「うん。ありがとう」

「ぱぱおかえり。今日もお疲れ様。」

 凛がいつものように俺を迎えてくれる。凛は昔と変わらずとても綺麗だ。

「愛莉はもう寝る時間だよ」

「ふぁーい。おやつみ!」

「「おやすみ」」

 愛莉は可愛くて本当にいい子だ。俺は今の生活が幸せである。


 俺はお風呂に入って寝る準備を済ませた。

「蒼、ちょっとも待って。私もこれ洗い終わったら寝るから」

「わかったよ」

「今日は近藤君と悠馬と飲んできたんでしょ?名前きくだけで懐かしいなあ。どうだったの?」

「2人とも結構変わってたな。あたりまえだけど大人になってた。でもやっぱり考えとかは昔から変わってなくて、なんか安心した」

「そうなんだ。私も久しぶりに会いたいなあ。色々聞かれた?」

「うん。結構惚気ちゃってさあ、ちょっと酔っててから色々話しちゃった。ごめんね」

「ええ、なんか恥ずかしいな」

 凛の声が少し小さくなったような気がした。俺は気になって凛に近づいた。凛は顔を赤くしていた。

「………なによ」

「いやあ、どんな顔してるのか気になって。変なことまで話されちゃったんじゃないかって想像しちゃったの?」

「ち、違うから!あ!皿洗い終わったから早く寝よ!」

 凛が慌てて俺から離れて寝ようとする。俺は凛の事を捕まえた。

「大丈夫だよ。本当は全然話してないから。内緒って言ったよ」

「もお」

 凛は結婚してからも本当に可愛い。特にこうやって照れるところが大好きだ。俺は凛にキスをした。

「むにゃあ、目が覚めた………あ!パパとママいちゃいちゃしてる!」

「!!?!」

 俺たちは慌てて距離をとった。

「してないよ。さあ、寝よ寝よ。パパとママも寝るから、愛莉も一緒に寝よっか」

「うん!」


 愛莉を真ん中にして俺たちは布団に並ぶ。

「「「おやすみ」」」

 俺たちは目をつぶる。

 昔は夜は寂しいものだった。だけど今は愛莉と凛が隣にいる。とても暖かくて幸せな時間だ。

 俺は大好きな凛と結婚して、可愛い可愛い愛莉が生まれて、本当に本当に幸せだ。

「ありがとう」

 俺はそっと呟いた。

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不透明な君 雪音‐yukine‐ @yukinenone

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