やらずに後悔、やって後悔

牛戸見しよ蔵

やらずに後悔、やって後悔

 「タケル君!駄目じゃないか、リハビリをサボっちゃ。これで三回目だよ」


「二度あることは三度あるって言うよね」


「三度目の正直とも言うよ!ね。あとちょっとで歩けるようになるから、もう少し頑張ってみよう?」


「……」


「やらずに後悔するよりやって後悔。この言葉、知ってる?」


「なにそれ。聞いたこと無いよ、そんなことわざ」


「ううん。ことわざじゃないけど、僕の大切にしている言葉なんだ」



「ふーん。……あのさ、どうして”やって後悔”した方がいいの?」


「なんで、って言われても──」


「ねぇ、なんで?」


「うーん……。やらずに後悔……つまり心配や不安になりすぎて何もできないままより、まずは一度やってみた方が、もし失敗しても、また何かに挑戦するときに知識や経験になって成功に一歩近づける。そう思っているからかな」


「ふーん」


「タケル君だって、”やって後悔”って思いながらリハビリを続けたら、きっといつか──」


「じゃあさ」

「あれはどうなの」



 男の言葉を遮り、少年タケルが指差したのはロビーに備え付けてあるテレビだった。

 テレビには、子どもにとって興味もないだろうニュース番組が延々と流されている。



『続いてのニュースです。先日未明、男性が線路へ突き飛ばされ怪我を負った事件について。黙秘を貫いていた犯人が今日午前、自身の動機を明かしました。犯人は男性の後輩で、日ごろから男性のキャリアへ不満を持っていたようです。『どうしても気が治らなかった。』などと供述しており──』

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