『るーせー売り』の口上によって伝えられる、気のいい巨人の昔ばなし。
現実とは違う「ない世界」に伝わる、「ない民話」を綴ったファンタジー。
啖呵売のような軽快な調子が心地よいです。
露店で〝るーせー〟を売る人の口上をそのまま文字にしたもので、バナナの叩き売りとか蝦蟇の油売りみたいな感じ。
たぶんすべてが創作、架空の世界のお話……だと思うんですけど、普通に「ありそう感」に満ち満ちているのがすごい。
なんなら〝るーせー〟も本当にありそうというか、異様に美味しそうなのが困ります。
いわゆる飯テロ、しかも存在しない料理なので、どんなに頑張っても食べられません。なにこれすごい罠。
軽妙な調子と、民話らしい質感が楽しいお話でした。
終盤の意外な展開というか、仕上げのひと捻りのような着地の仕方も楽しくて好き。