序編

第9話 公開修練

騎士団団長バカ弟子は不在か……ヴァイス何か聞いてるのか?遅れているようだが……」


「はい、どうやら準備に少し時間がかかっているようです」


「なるほどな、であらば先に向かうか……他の方々はどうだろうか?」


 公開修練当日。一番最初に王宮に到着した先代の騎士団団長であるローグ・ヴェイルから各家々の代表へと言葉を投げかける。


「異論はありません、先代団長殿」


「同じくでございますわ」

「ですね、進めているうちに団長殿も到着されるかと」


 少し間を開けて王立学院長であるアラン・ヴォルフ侯爵と騎士団副団長の両親にあたる

メラ・ティグル公爵婦人とラグリス・ティグル侯爵が返答する。


「ファイル・アクト伯爵はどうお考えで?」


「先代団長であるローグ・ヴェイル殿の意見に異論はございません。先に国王陛下のいらっしゃる謁見の間に向かうべきかと」


「父上、皆様の意見もまとまったようですし、私は警備の方に向かいます」


「あぁ、よろしく頼むぞヴァイス」


「お話しの所申し訳ありません、皆様方。もしよろしければ謁見の間まで御案内致しますが如何でしょうか?」


 王城内を知り尽くすいわば王国に使える従者は見る者が見れば分かる洗練された美しさを兼ね備えた礼をもって各家の代表へと挨拶する。


「あぁ、よろしく頼む」


「承りました。では皆様方、こちらへ」


 集まっていた全員が従者に先導され大きな扉の前に到着する。


「本日参加されます代表の方々を御連れ致しました」


 従者は声をかけると扉が開いていく。従者は扉が開く前に横に控えていた。


「私の案内はここまででございます。ここより先は貴方々のみ御進みすることを許されております」


「案内ご苦労」


 礼には礼を尽くす。例え従者であろうと人である事には変わらない。真っ先にローグは感謝を述べる。


「ですね、案内感謝します」


 続け様に各家々は謝辞を述べる。それを素直に聞いていた従者は一呼吸置き、深々と腰を折った礼で返し、見送った。



……その裏で……(は恐らくこのに気づいているはず。しかしその他の方々が気付かれた時、一体どうするのか、これからが楽しみですね)


 奥にある綺麗ながらも大きな椅子に座っている人物以外、誰もいない広々とした部屋に案内されていた代表達は進んでいく。ある程度進んだ所で片膝をつけて頭を垂れる。


「皆の者、よく参加してくれた。王として感謝する。公開修練を行う、意味は皆も理解しての通りだ。正しく見極めよ!」


 王宮内の謁見の間にて玉座に座っている国王陛下と傅いている各家の面々。


「私からも一言よろしいでしょうか?国王陛下」


「よかろう。皆の者、我が娘であるシェフィからも言葉がある。心して聞くように」


「まずは皆様のご参加感謝します。まずは不明になっています騎士団団長の模擬戦相手から発……」


「遅くなって悪かったな姫さん、それについては俺から言わせて貰うぜ!」


「…………おい、バカ弟子、なに遅れてんだ?」


「そうよ、いったい何してたの?私を怒らせたいのかしら?」


「んなわけ無いだろ?師匠、姫さん。ちゃんとした理由だって」


「へぇ……じゃあその理由と言うのは?」


「それを説明する前に……まずは遅れて申し訳ございません。国王陛下、公開演習の準備が整いました故、御報告に参りました」


「うむ、団長殿、ご苦労である。して話すが良い。今日の貴殿の相手についてだったな」


「はい、それこそが私が遅くなりました理由にございます」


「確か団長の模擬戦の相手は決まっていなかったな」


「はい、仰る通りです。送れた理由は3つ程ありましてうち一つになりますが、その模擬戦相手が決まりまして、先程準備が整いました」


「それが最初に言っておった準備が整ったという報告ということか」


「はい」


「であるならば今日の模擬戦の相手は誰であるか?」


「陛下、そこで一つ提案なのですが模擬戦の相手本人に謁見の間に入場して貰うというのはどうでしょうか?」


「なるほどな、よかろう!!」


「も、申し訳ございません国王陛下、一つ進言してもよろしいでしょうか?」


「ふむ、何か気になる事でもあったか?学院長」


「はい、今から呼びに行くのであれば更に時間がかかってしまいます。であれば修練場にて顔を合わせる訳にはいかないのでしょうか?それに謁見の間に呼びつけるのはいささか急な事かと存じます」


「確かに学院長の意見には一理ある。他の者はどう思う?素直に申してみよ!」


「確かに、それには学院長の話は筋が通っていると考えます」


 副団長の家系であるティグル伯爵も同意する。


「陛下、もう一つよろしいでしょうか?」


「良い、話すが良い、騎士団団長」


「では、実のところ遅くなった理由がもう一つございまして、既に謁見の間の前まで来て頂いております。その為の案内をしておりました」


「そうかそうか、であるならばここで顔を見ておくのも悪くない、入る事を許可する!」


「だってよ、よかったな、入って来いよ、
















  

 

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最期の英雄と救いの姫君 叢雲 @kagemitsu04

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