第25話 十悪会のボス

 次の日、四人で街の外へ集まり魔道具を使う。


 一つだけあるボタンを押す。


キィィィィン


 魔法陣が発動して四人を包み込む。

 光が止むと、何処かの入口にいた。


 暗い廊下を進む。

 すると大きな扉が現れた。


「ここにいるのか?」


 ギィィィィと扉を開く。


「来たか」


 後ろを向いていた男が来るのを予想していたかのように言う。


 髪が青色である。


 まぁ、青髪はいないわけじゃないしな。


 振り返ると。


 知っている顔であった。


「あんた。こんなとこで何してる?」


「私が世界を牛耳る十悪会のボスだ」


「はあぁ!? あんたは、ウインド家の当主だろ!?」


「もう当主ではないわ。あんな家いらん」


 ウインド家の当主であった男、シーク・ウインドは家を捨てて世界を牛耳る為にこんな組織を立ち上げたらしい。


「あんた、救いようがないな。ここでおしまいにしてやるよ」


「ふんっ。お前如きに何ができる!」


「エアバレット」


 空気弾を放つ。


「ウインドバリアー」


 風の壁で防がれる。


「魔法を使ったのは驚いたが、所詮その程度……」


「エアキャノン」


ドォォォォォ


「ストーム」


 小さな竜巻を起こされ相殺される。


「ウインドカッター」


 今度はあちらからの攻撃が襲う。


 駆けて躱す。


 剣を引き抜き、肉薄する。


「ふんっ。無駄だ」


 切り下ろしは剣で防がれる。

 動きが止まった所で前蹴りを放つ。


「ぐっ! 小癪な! ウインドカッター!」


 至近距離からの魔法が放たれる。


「エアバレット!」


 空気弾をばら撒き魔法を暴発させる。


「ウインドストーム!」


 大きい竜巻に巻き込まれる。


 そして、地面に叩きつけられる。


「くはっ!」


「ハッハッハッ! この程度か?」


「エアウォーク」


 宙を蹴って飛び上がる。


 空気の足場を次々踏んでいき縦横無尽に翻弄する。


「はぁ!」


 認識が追いつかないと思ったところで、切りつける。


「無駄だ!」


ドゴォォォ


 また地面に叩きつけられる。


「クソッ……」


「アースクエイクなんだな!」


ゴゴゴゴゴゴッ


 シークの足元で地割れが起きる。


「なんだ!?」


 咄嗟に後ろに下がる。


「ミスト」


 シークを顔にまとわりつく様に霧が発生する。


「くたばれぇぇぇ!」


 マリアの真上からの切りおろしが放たれる。


ギィィィィンッ


「勘でわかるわ!」


「オラァ!」


 ハイキックを放つ。


「フンッ!」


 肘で受け止められる。


 クルッと回りバックスピンキックを全力で放つ。


「震脚」


 ズゥゥゥゥゥゥゥンンンンッッ


「グボォォォ」


 全身から血を流して倒れていく。


「俺は、一人じゃねぇ。それがあんたとの違いだ」


「ぐっ……くそ……不出来な息子にやられるなんぞ……屈辱……」


「おれは、あんたの子じゃねぇ。俺の親はダンテさんだ。あの人が俺を育ててくれた」


「ふっ……タダでは死なんぞ!」


 魔力が集中しだす。


「みんな! 逃げるぞ!」


 入口に向かって逃げる。


 廊下の先に扉が見える。


「エアキャノン!」


ドゴォォォンッ


 開けた扉の外に走り出る。


 浮遊感に襲われた。


「キャーーーーッ!」


「おちるーーーー」


「やばいんだなぁぁ」


「エアウォーク!」


 三人を何とか受け止めて地面に降り立つ。


チュドォォォォォォォンッッッ


 崖の上で大爆発が起きる。


「ふぅ。危なかったな」


「ビックリしたわよぉ」


「死ぬかと思ったぁ」


「助かったんだな。ありがとうなんだな」


 周りを見る。

 なんか見たことがある景色な気がしたのだ。


「ここは……」


「あれ? ここって……」


「そうなんだな。ここは……」


「何よ? みんな分かるの?」


 マリアが不思議そうに首を傾げる。


「そっか。マリアはフォースのにんげんじゃないもんな」


「僕達はフォースから追放された人間だから……」


「ここは、フォースとフリーダムの国境の断崖絶壁なんだな。下がフリーダムなんだな。本来は回り道なんだな……」


「って言う事は、さっきの建物はフォースだったってこと?」


「あぁ。そういう事だな。そして、国境近くといえば……」


 そう言って歩き出す。


「何よ? どこに行くの?」


 小屋のような小さな建物が見えてきた。


 ガチャッと開ける。


 酒瓶がそこかしこに散らかっている。

 ソファーに男が寝ていた。


「師匠!? 掃除してくださいよ!」


「うおっ! なんだ!?」


 飛び起きて眼をパチパチしている。


「その人が、クーヤの師匠なの?」


「あぁ」


「なんだ? 夢か? コイツがいるわけない。そうだ……ガァァァー」


「師匠!」


「うおっ!? 本物!?」


「本物ですよ! 十悪会のボスを倒してきたところです」


「あぁ、あの悪さばっかりしてる奴な。よく場所をわかったな? ここ数年で出てきた組織でボスの居場所がつかめなかったんだわ」


「そうなんですか? たまたまですけど、転移の魔道具を渡されたんですよ」


「ほう。なんともへんな展開だな」


「あっ。コイツらが仲間です」


「マリアです!」


「僕はアークです!」


「オデは、ドンガなんだな!」


 それぞれが挨拶をする。


「俺は、こいつの師匠のダンテだ。宜しくな。で? 今日はどうすんだ?」


「ここに泊まりますよ。せっかくですし……」


「そうか。それはいいんだが……」


「片付けます」


「はははっ。わりーな」


 みんなで部屋を片付けてご飯を食べることにした。

 もちろん作ったのは俺だ。


 師匠から話を聞いたところ、フォースのウインド家は当主の民から回収した金の着服がわかり、代替わりさせられたようだ。

 それから噂を聞かなかったが、組織を立ち上げてフリーダムを力で牛耳っていたということだ。


「これからどうするんだ?」


「んー。まとめる人っていうか、なんかフリーダムの象徴! みたいな人が必要だと思うんっすよ」


「なるほどな……」


「で、マリアがいいかなって……」


「えっ!? 私!?」


「あぁ。女王様には丁度いいかなって。十悪会の討伐報告と、倒したのは女王様のおかげだと言うことにして、崇めてもらおうって訳」


「良いんじゃねぇか? 効果はあると思うぞ」


「ありがとうございます!」


 その日はこれまでの話に花を咲かせて寝たのであった。


◇◆◇


「では、また落ち着いたら戻ってきます」


「おう。行ってこい」


「では!」


 クーヤ一行は再び旅に出た。


「俺の目に狂いは無かった。行ってこい。俺の自慢の息子」


 その後、マリアを女王としてフリーダムは平和な国になっていったのであった。

 

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転生したらハズレ属性で無双する ゆる弥 @yuruya

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