第24話 強さを求める者

 新たな街に着いた四人。

 そこは普通の活気ある街だった。


「らっしゃい! 兄ちゃん達、もしかしてこの街初めてかい?」


「あぁ。初めてだよ」


「そうかい。頑張んな」


「?……ありがとう? これ、四つ頂戴!」


「はいどうもね」


 スープとパンのセットを頼んで食べる。


「うん! 美味しいじゃない!」


「あー。なんか普通の街に来れた気がするなぁ」


「美味しいんだな」


「美味いな。美味いけど、頑張れってどういう意味だ?」


 不思議に思っていると、何やらゾロゾロと装備を整えた男達がやってきた。


「お前達は既にエントリーされた。明日決闘があるから闘技場に来るように。来なかったり逃げようとしたら奴隷になるから気を付けろ?」


 そういうと帰って行った。


「なんだったんだ? あいつらは」


「なんだったのかしら?」


「僕達何かにエントリーされたってこと?」


「闘技場に来いって言ってたんだな」


 首を傾げていると周りにいたおっちゃんたちが教えてくれた。


「この街にはいったらなぁ、ここの戦闘狂と戦わないといけねぇんだ」


「なんでです?」


「さぁな。そいつが考えたルールだ。だけど、強いもんだから誰も反対できないのさ」


「なるほど……強いんですね」


 周りのおっちゃん達もウンウンと頷いている。


「じゃあ、明日に備えて飯食って寝よう!」


 屋台へ駆けて行きたくさん食べた。


◇◆◇


 次の日。


 四人は渋々闘技場へ向かった。


「昨日やってきたのはお前達か。なかなかいい面構えだ。俺と決闘だ。負けたら俺の部下になること」


 そういったのは筋肉隆々で至る所に傷のある男であった。


「何を勝手なことを。そっちが負けたらどうする?」


「ハッハッハッ! そんなの考えてなかったぞ。負けたことがないからな」


「そうか。で? どういう決闘だ?」


「魔法は無しの拳で勝負」


「そうか。わかった。後ろの三人は武器での戦闘はできるが、拳での戦闘はできない。俺が代表して戦う」


 驚いたように目を見開くと後ろの三人に問いかけた。


「お前達はそれでいいのか?」


 コクリと頷く三人。


「いいな。お前達。青髪のお前。信用されてるんだな」


「あぁ。それなりに腕には自信がある」


「そうかそうか! 楽しみだな!」


 円形のステージの真ん中に移動する。

 審判のような人がいるようだ。


「両者、準備はいいですか?」


「ああ! 良いぜ! たぎってきたぁぁ!」


「はい。いつでもどうぞ」


「それでは、始め!」


 無理矢理始めさせられた決闘が始まった。


「うぉぉぉらぁぁぁ!」

 

 相手の男は飛び上がり拳を振り下ろしてくる。


 サッとバックステップでよける。


ドゴォォォォォォンンッッッ


 闘技場にヒビが入りクレーターができる。


 何が魔法無しの拳で勝負だよ!

 思いっきり身体強化魔法使ってるじゃねぇか!

 コイツ!


 魔力を体全体に行き渡らせる。


「まだまだぁぁ!」


 殴ってきたところをわざとタイミングを合わせて殴る。


ドンッッッッッ


「ハッハァ! お前気付いたか!? だが結果は変わらねぇ!」


「それはどうかな」


ドドドドドドッ


 両手の拳で滅多打ちである。

 両者一歩も引かないが、徐々に相手に届き始める。


「ぐっ! クソッ!」


「どうした?」


「なぜ!? 俺が押し負ける!?」


「んー? 出力が足りないんじゃないか? もう少し上げようか?」


 相手の男の被弾が増え、徐々に下がっていく。


「ぐっ! くっ! クソガァァァァ!」


 グワァァと魔力が溢れだしてくる。

 目が血走ってフーフー言っている。


「これでどうだぁぁぁ!」


 こちらに駆けてくる。


 振り下ろされた拳を受け止める。


ズンッッッ


 衝撃波が広がっていく。


「なに!?」


「よいしょぉ!」


 受け止めた拳を引っ張ってもう片方の拳で顔面をぶっ飛ばす。


ボゴォォォォンッッッ


 一瞬で闘技場の壁にめり込み蜘蛛の巣状のヒビを入れる。


「終わりか?」


 そう呟いてステージから降りる。


「クックックッ……ハッハッハッハッハッ!」


「おお。生きてたか。まだやるか?」


「いや。俺の負けだ。お前強いな。名前は?」


「クーヤ」


「クーヤ……ふむ。お前ならもしかしたら……」


「ん? 何の話だ?」


 壁からはい出て来ると。


「あぁ。俺達のボスの話だ」


「ボス?」


「そうだ。十悪会のボスなんだが、あの人を止めてくれないか?」


「なぜ止めたいんだ?」


「あの人は自分で自分を破滅に導こうとしてる。見てられねぇ」


「自滅したらいい」


「まぁ、そう言うわな。けど、あの人が自滅する時は、大勢を巻き込むと思うぞ? あの人タチが悪いからな」


「最低ヤローだな。俺達が始末する」


「そうか。それはそれでいいかもな」


「良いのか? お前達のボスだろ?」


「いいんだ。別に俺は強いヤツと戦いたいだけだ。ボスがどうなろうと知ったことじゃねぇ。ほら。これ使えばボスのところに行けるぜ?」


 魔道具を渡してきた。


 ホントか?

 罠か?


「ふっ。まぁ、任せるわ。俺はお前の子分だ。何なりと言ってくれ」


「じゃあ、この街の人たちを解放して好きにさせろ」


「いいぜ。いいかぁぁぁ! 俺はもう子分は持たねぇぇぇぇ! みんな好きにしろぉぉぉ!」


「「「「おぉぉぉぉぉぉ!」」」」


 みな飛び跳ねて喜んでいる。


 どうするかな。

 明日にでも突撃してみるか。


 この街は開放された。

 残るはこの国の解放だ。

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