第23話 廃街の後始末
廃墟の中を探すと盗賊達が溜め込んでいたであろう食料が出てきた。
建物が四十棟程あり、全てを使っていたと思われる。
魔物が使っていたと思われる家があったが色んな物が散乱していたため素通り。
魔物が何をしていたかなんて考えたくもない。
全て燃やしてしまおう。
「クーヤ、僕もうこの街出たいよ。気味悪くてさ」
「オデも居たくないんだな」
「なんか怨念が漂っていそうよね」
「そうだな。火を放つか」
「えっ!? 焼くの?」
アークが驚いたようにいう。
「後々魔物が住み着いてみろ? これ以上に被害が出るかもしれない」
「たしかに……」
「まずは、建物を崩していこう」
「オデがやるんだな。アースクエイク」
ゴゴゴゴゴゴッ
見事に建物画崩れた。
「なぁ、ドンガ、全部壊せるのか?」
「…………ちょっと無理そうなんだな」
「だよな」
周りの家を見渡す。
この世界の家は木造だ。
柱を折れば崩れる。
へし折って回る。
だいたい崩したあたりで火をおこし、崩した家を燃やす。
着火した火はあっという間に燃え広がりゴウゴウと音を立てて燃えていく。
「ここで、一体何人の人が犠牲になったんでしょうね?」
「さぁな。でも、ゴブリンエンペラーもいた事を考えるとかなりの人数が酷い目にあって死んで行っただろうな」
「僕、この国嫌い」
アークが怪訝な顔で言う。
「オデもこの国嫌いなんだな。悪いことする奴らはみんな居なくなればいいんだな」
ドンガも賛成のようで息を荒くしながら怒っている。
「そうだな。十悪会以外にも悪さをしてるヤツらはいる。悪さをしているヤツらを全部は潰せないかもしれない。でも、悪さをすることが普通になっているこの国の現状をどうにかしたい」
「うん。そうね。モーリー達の街のように」
マリアが微笑みながらこちらに視線を送る。
「そうだな。モーリー達の街がそのまま国の形に出来たら一番いいよな」
自然と笑みがこぼれる。
「ここの犠牲になった人と今後のこの国が良くなるように祈るか」
「まぁ、祈りを捧げるなんて珍しいわね?」
「クーヤって神に祈ることあるんだ?」
「珍しいんだな」
口々に祈りを捧げることに珍しいことだという。
「なんか祈りたい気持ちになったんだよ!」
両手を組んで祈る。
ここで死んだ者達よ、仇はとった。
安らかに眠ってくれ。
あの世が楽しいといいな。
目を開くとキラキラとした光が街一面から天に昇っていく。
「なんだ?」
「どうしたの? クーヤ?」
マリアが不思議そうに聞いてくる。
この光景は俺にしか見えていないんだろうか。
死者達が何かを伝えようとしているのだろうか。
キラキラとした光はしばらくすると消えた。
「いや、なんか光が見えた気がしてな。気の所為かもしれない」
「クーヤ、神様の使い? 死者の光が見えるとしたらそれは神の使いと言われる神官になれるわよ?」
「ならねぇよ。俺は神の使いじゃねぇ」
「そう? たまに思うのよね。クーヤはこの国を良い国にする為に神様が送り込んできた使者じゃないかなって」
人差し指をピンと立て、自分の考えていた事を話す。
「僕もそう思う時あるよ? だって、僕とドンガ、マリアは追放された身、それを救ってくれたクーヤも同じ境遇。これってそうそうある話じゃないと思うんだよね?」
「オデも運命感じるんだな。クーヤと会えたのは神様が引き寄せてくれた気がするんだな」
皆が口々に奇跡だと、神のおかげだと口にする。
たしかに、何故俺が転生したのかは分からない。
別に転生前に神にあった訳でも無いからな。
何か意味があるのか。
なんの意図があるかは分からないが、再び命を授けて貰えた。
その事には感謝し、悔いのないように生きようと思う。
この機会に話していなかったことを話そう。
「神の使いかどうかは俺には分からない。けど、皆に話してないことがある……俺は、前世の記憶を持って生まれた」
「へぇ。前世が神様だった?」
マリアが首を傾げて言う。
「いや、ただの普通の一般人だった。ただ、趣味で空気力学という学問を知識として蓄えていた」
「クウキリキガク?」
アークが片言でいいながら怪訝な顔をしている。
「聞いたことないよな? 空気に関して研究してきた事を纏めてある書物って感じかな」
「あっ! それが前世の知識であるから空気属性でもあんなに強いのね!?」
「そうだな。どんな事が出来るか。それは師匠との修業をしながら確かめていた」
アークとドンガは納得したようにウンウンと頷いている。
「そっか。だから、僕達の知らないことを知ってたんだ」
「地震に関しても詳しいのはそのせいなんだな?」
「あぁ。そうだ。前世では地震は身近にあった。地震で何万という死者が出る事もあったんだ」
目を見開いて驚くドンガ。
「地震ってそんなに被害がでるものなんだな? この世界では地震は無いからなんにも知らなかったんだな」
「地震は最大級の災害として知られていた。地面が割れることもあるんだ。だからドンガには知識として教えて魔法で使えるように教えこんだんだ」
「なんでそんなこと知ってるのかと思ってはいたんだな」
「皆……隠しててごめんな」
バシッ
「いてっ!」
マリアに肩を引っぱたかれた。
「何でもっと早く言わないのよ!? 別に私達は、クーヤが前世の知識があろうが、元が神様であろうが気にしないわ!」
「そうだよ。クーヤはクーヤ!」
「オデ達の仲間であることにはなんのかわりもないんだな!」
「皆……ありがとう。そして、これからも宜しく頼むな」
みんなコクリと頷いてくれた。
話している間に火はもう消えたようだ。
「消えたみたいだし、俺達は次の街に行くか」
クルリと振り返り次の街を目指す。
「次の街がまともな街だといいよね?」
アークが心配そうに言うと、それに賛同したのはドンガ。
「オデも普通にご飯食べて普通に寝れる街に行きたいんだな」
「あんた達ねぇ、この国にそんな平和な街があると思ってんの?」
マリアがフンッと鼻で笑って答える。
まぁ、たしかに。
この辺の現状を見るにこの先の街でまともな街があると言うことはないだろうな。
「えぇー! 普通にご飯食べたいなぁ……」
「普通に良く寝たいんだな」
「はぁ。だから、そういう国にしようってさっき話してたでしょ!?」
マリアのお説教が始まった。
始まると長いんだよなぁ。
今日は寝るまでお説教かな?
新たな街をめざして賑やかに進む。
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