第22話 盗賊風情が

「はぁ。おい。盗賊風情が俺達の仲間を寄越せだと? ふざけるんじゃねぇ。渡すわけねぇだろうが!」


「なんだと? ゴブリンエンペラーに勝ったくらいでいい気になるなよ!?」


「全員掛かってこい。俺達が始末する」


 手をクイッとして挑発する。


「ガキが舐めやがってぇ! やっちまえぇぇぇぇぇ!」


「「「おぉう!」」」


 俺も後ろを向いて声をかける。


「俺達もやるぞ!」


「行くんだな!」


「僕も行くよ!」


「やってやるわよ! 私を寄越せなんて二度と口にできないようにしてやるわ!」


 みんな意気込んでいる。


「よっしゃ! 俺もデカいの行くわ」


「ちょっ! 程々にしなさいよ!?」


 以前の事があるので皆に警戒されているようだ。


 手を前に翳して空気を圧縮して行く。


ギューーーーン

 

 貫通力を上げるために飛ぶ方向に大して横の回転を付ける。


「エアキャノン!」


ドオオォォォォ


 盗賊達の真ん中に吸い込まれていく。


「爆ぜろ」


スゥゥゥ……ドォォォォォンッッッ


「うわあぁ!」


「なんだ!?」


「何が起きた!?」


 混乱に乗じて駆ける。


「シールドバッシュなんだな」


「急所突き!」


「一閃!」


 それぞれで暴れている。

 それを横目に見ながら自分も盗賊と対峙する。


「フッ!」


 向かってくる盗賊を右上からの切り払いで切り裂く。

 斬りかかってきた男を蹴り飛ばす。

 胸を突きトドメを刺す。


「エアパリィ」


 風の渦の鎧を発動する。

 物理攻撃はもう効かない。


「うおっ! なんで……ぐあぁ!」


「身体にとどかな……いてぇぇ!」


 次々と盗賊を切り捨てていく。

 しかし、数が多かった。

 四人で一時間相手をしてもまだ盗賊達は残っている。


「オデは、魔力が切れそうなんだな」


「私ももう少ししたら切れちゃうかも……」


 マリアの剣はどうしても魔法がかかっているため魔力を消費するのだ。

 所謂、魔剣の類なのだ。


「そうか……!?」


 突如魔法が切れた。


 まさか。

 今まで気にしたこと無かったけど、魔力切れか?

 魔力が多すぎて魔力量の計算した事ない。

 こんな時に……。

 魔力消費が激しい魔法をずっと使ってたからなぁ。


「クーヤ、大丈夫!?」


「魔力切れだ……」


「えぇ!? クーヤって魔力切れるの!?」


「初めてなんだな」


「クーヤの魔力、切れることあるのねぇ」


「俺も初めてだ。参ったな……」


 小さい声で話していると、盗賊達が様子を伺っている。


「おやおやぁ? もしかして、魔力切れかぁ?」


 盗賊達はニヤニヤしながらコチラに進んでくる。


「大丈夫なのかぁ? 魔力がなくて?」


「得意の魔法が使えないだろう?」


「観念したらどうだ?」


 盗賊達が口々に煽ってくる。


 まぁ、魔力が無くなったところでやる事は変わらねぇ。

 久々の魔力無しの戦闘だ。

 腕が鳴るねぇ。


「クーヤ、大丈夫?」


 アークが心配そうな顔をしている。

 ドンガとマリアも暗い顔をしている。


「ハッハッハッハッハッ! なんて顔してんだよ! お前ら!」


「いきなり笑いだしてコイツおかしくなったんだじゃねぇか!?」


「何笑ってやがる!」


 盗賊達が狼狽えている。


「あぁ。お前達に俺の剣術を教えてやるよ。魔法を使わなくても戦えるようにこっちはスパルタ教育されてんだ。覚悟してかかってこい」


 盗賊達が怪訝な顔をしている。


「クソガキがぁぁぁ!」


「スゥゥゥ」


 剣に件を添えて受け流す。

 そして相手の剣の上を滑らせて肩口から首を切り裂く。


「枝垂れ裂螺(しだれざくら)」


 バッと桜のように血が舞う。


「クソガァァ!」


 最上段の構えからの打ち下ろしが来る。


 下から切り上げてリィィィンッと剣を弾き、ガラ空きの胸を突く。


「凜胴(りんどう)」


ズシュッッ


 胸から即座に抜くと血を払う。


 三人が同時に斬りかかってきた。

 身をかがめる。

 身をひねり力を溜める。


 そして、力を解き放つ。

 回りながらの切り上げが三人の下から上までを同時に切り裂く。


「斬輪(きり)」


ザシュザシュザシュ


 倒れていく三人。

 動かなくなった。


 盗賊達は少し後退りする。


「ふぅぅぅ。どうした? ガキ相手だろ? 来いよ」


 盗賊達は、見合ったまま動かない。


「お前、一体どこのもんだ?」


「んー? 何処のもんでもないさ。あー、ただ俺を育ててくれたのはダンテって人だ」


「ダンテだと!?」


「ダンテ!? ダンテってあの、狂人のダンテかよ!?」


「あの狂人に育てられた? 強いわけだ」


 盗賊達は騒がしくなっている。


「知っているのか?」


「十悪会含めて悪さをしてる奴なら誰もが聞いたことがある名さ。ダンテは悪さをする奴らに虫唾が走るとかで、尽く潰されたからな」


「ふんっ。潰されて当然だろうが」


「こっちもそう簡単にやられる訳には行かねぇんだよ。覚悟しろよ。あのダンテの弟子なら放っては置けねぇ」


「安心しろ。お前達は、俺が始末する」


 剣を腕と共にダラーンとして自然体で構える。


「ふぅぅぅぅ…………ふっ!」


 目の前の盗賊に肉薄する。

 キョトンとしている首を切り裂く。


 次に、目に入った奴の足を切りつけ胸を突き刺す。

 抜いた剣をそのまま対面にいた男に投げる。


ズシュッ


「うっ!」


 駆けて体当たりをしながらその剣を引き抜く。

 引き抜いた力を利用してくるりと回り真横に真っ二つに切り裂く。


 目の前に大男が立ち塞がった。


「お前じゃ俺を切る事はできねぇ!」


 回転斬りを放つ。


シュッ


 筋肉に阻まれて浅く切れる。


「無駄だ。俺の筋肉はそう簡単には切れねぇぞ!」


 最上段に構えて引き絞る。


「不知(ふじ)」


ズバッッッッッ


 一瞬の切り下ろしで相手は切られたことに気付いていない。


「空振りか?」


「だから不知って名なんだ。切られたのを知ることができないんだ」


「なにいっ────」


ブシューーーーッ


 脳天から血を吹き出して左右に別れていく。

 そいつが負けるとは誰も思ってなかったようだ。


「うわぁぁぁ!」


「不死身のガジが殺られたぁぁ!」


「おい! こんなの聞いてねぇ!」


「あいつは負けないからって言ってたじゃねぇか! だから、話に乗ったんだぞ!」


「う、ううるせぇ! ううう狼狽えるな!」


 リーダー格の男が声を震わせながら叫ぶ。


「おい。どうした? 逃げんなよ?」


「十悪会の十悪を倒したってのは本当だったんだ! こんなに強いなんて聞いてねぇ!」


「ふーん。噂になってたんだ?」


「お前ら逃げるな! 俺を守れ!」


 誰も守ろうとはせず、街から逃げていく。


「さっきのやつにすがりついて生きてきたのか? 滑稽だな」


「俺には俺のやり方があんだよ! クソガァァ! やってやるよ! オラァァァァ!」


 むちゃくちゃな切り下ろしが放たれる。


「そんなんじゃおれは切れねぇよ。行残去(ゆきざさ)」


 スッと男の後ろに通り過ぎる。

 通り過ぎざまに、行きと帰りで二回の斬撃を放っている。


 胴と首を切り裂かれ、血を流して倒れる。

 その場に動いているものは居なくなった。


 遠くに逃げ惑う盗賊達が見えるが、追うことはしない。

 追っても意味が無いからだ。

 また襲われたら、切るまで。


 こうしてこの街は正真正銘の廃街になった。


「クーヤは流石だね!」


「魔力切れても強いなんて反則なんだな!」


「クーヤ、剣だけでも強かったのね……」


 アークとドンガが褒めて?くれている。


 マリアは呆れているが。


「あー疲れた。なんか飯探して来るか。腹ぁ減ったわ」


「そうね」


 この街の盗賊はロストライブの手によって滅亡した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る