第21話 壊滅した街
「ねぇ、あそこの街、ホブゴブリンが見張りしてるよ?」
「だな。やっぱり魔物にやられたんだな。街の中の魔物は片付けるか」
近くの茂みに隠れながら様子を伺っている四人。
その時、信じられない光景を目にする。
街に人間がいるのだ。
「おい。なんで街に人間がいる?」
歩いていたのは強面の男達。
普通に飲み食いしながら話してどこかへ歩いていく。
「魔物を従えてるのかしら?」
「そうかもな。協力関係にある事は確実だな」
「虫唾が走るわね。あんな害にしかならない魔物と協力するなんて……」
「一緒にいる奴らもそういう奴らだってことだろう? どっちにしろ駆除が必要だ」
「そうね。でも、どうする? 数が多そうよ?」
「そうだなぁ。じゃ────」
ドォォンッ
目の前が火で覆われた。
「何だ!?」
「さっきオデ見てたんだな! あっちの方向から火の玉が飛んできたんだな!」
「ちっ! ゴブリンマジシャンもいるのか。1回下がるぞ」
隠れていた茂みから出ると、デジャブである。
「囲まれてるわ!」
「こっちの動きを監視されてたんだな」
「どうしよう! クーヤ!」
周りを見ると街の入り口近くに身体の大きなゴブリンがいる。
その横に人と同じ形をしたゴブリン。
「やっぱりいやがった……エンペラー」
「あれがエンペラーなの? なんか弱そうだね」
アークが不思議そうに話す。
何故あんなのがAランクなのか分からないだろう。最大の理由が人間と話せること。
これは、魔物にとってはかなりのアドバンテージなのだ。
「バレちゃしょうがねぇ。やるか」
四人とも武器を構える。
「やるんですかぁ? 条件を飲んでくれれば見逃して差し上げますよ?」
「条件だぁ?」
「そこの麗しい女性を渡しなさい」
「ゲスが誰が渡すかよ。エアバレット」
前にホブゴブリンが盾になりエンペラーまでは魔法がとどかない。
「やれやれやるんですねぇ」
クックックッと嘲笑ってくる。
「笑ってられるのも今のうちだぞ?」
「アースクエイクなんだな!」
ゴゴゴゴゴォォォ
魔物達が、飲み込まれていく。
「ミスト」
アークの濃霧が広がる。
「私をなめるなぁぁぁぁ!」
ズバァァァァンッ
数体のホブゴブリンが巻き込まれた。
「おい! マリアあぶ────」
「私を置いていけって!? 物じゃないんだよ私わぁぁ!」
ズバァァァンッッ
また数体のホブゴブリンが倒される。
おいおい。
霧の中でそんなに振り回してたら俺達も近づけねぇじゃねぇかよ。
「しゃあない。俺もチマチマやろう」
見つけたホブゴブリンを片っ端から切り倒していく。
「それじゃあ、君達も行きなさい」
横にひかえていたキングが出てきた。
「「グゲッ!」」
一際大きな巨体を揺らしながらこちらに向かってくる。
霧が濃いが、大体の方向が分かるため位置が分かるのだろう。
「私が片付ける!」
「オデがやる!」
二人共前に進む。
こうなったら、霧は邪魔でしかない。
「アーク!」
霧が晴れていく。
ボウッ
また火の玉が飛んできた。
あそこか!
指で銃の形を作り狙いを定める。
「エアスナイプ!」
タァァァンッッ
銃弾の形に固めた空気を放つ。
空気の塊は見事に胸を撃ち抜いた。
ゴブリンマジシャンは魔素に変わる。
すると、焦ったようでマジシャン全員で撃ち込んできた。
ボボボボボッ
冷静に避ける。
そして反撃する。
「エアスナイプ」
タタタタタァァァァァンンッッ
次々とゴブリンマジシャンの胸が撃たれる。
「なにやってる! お前達行きなさい!」
マリアにキングが迫る。
「はぁぁぁぁ!」
ギィィィンッッ
マリアの打ち下ろしが防がれた。
ニッと笑っているキング。
ここからがマリアの真骨頂だ。
クルッと回って遠心力で剣を再び叩きつける。
ギイイィィィンッッ
再び回って叩きつける。
これを永遠に繰り返すのだ。
俺は、弱点がわかって攻略したが、キングはどうか。
ギィィィィンッギィィィィンッギィィィィンッ
段々と受け止めるのが辛くなってきたようだ。
マリアが決めに行く。
クルッと回って来ると見せかけ、切りつけずに逆回転する。
「はぁぁぁぁ!」
ズバァァァァァンッ
ゴブリンキングの胸に一直線の赤い線ができる。
ズズッとズレたかと思うと魔素に変わっていった。
「よっしっ!」
マリアは終わった。
次はドンガの番だ。
「フンッ」
ドンッッッ
ドンガとキングが当たる衝撃が辺りの空気を震わせる。
「負けないんだな! シールドバッシュ!」
ズドンッッッ
キングのショルダーチャージと激突する。
余りの重さに少しよろめいてしまうドンガ。
「ドンガ! 組手を思い出せ!」
ドンガに声をかける。
ドンガは盾だからこのような事態になる事が予想出来ていたのだ。
だから、その時に教えたことを思い出せば勝てるはずだ。
ズドンッッッ……ズトンッッッ
キングはあくまでも力で負けさせたいようだ。
そこを利用する。
ドンガは盾を前に出して構える。
キングがチャージを仕掛けてきたところで、縦に触れた瞬間。
クルッと回ると体制を崩して地面に倒れ込む。
「今なんだな! アースクエイク!」
ゴゴゴゴゴゴッッ
地割れにキングが飲み込まれていく。
「ウォォォォォッ! オデやった!」
「おぉ! 良くやったな! ドンガ!」
「私も褒めてよ!」
「あぁ。良かったよ! 力ずくでの倒し方」
「なんでそんな言われようなのよ!?」
マリアが地団駄を踏んで悔しがる。
マリアなんか、吹っ切れた?
剣を持たせると性格が変わるんだよな。
「まだ、壁はいるのか?」
エンペラーに向かって聞く。
「ぐぬぬぬっ! こうなれば私が! ファイアーボール!」
「エアスラッシュ」
ザンッ
空気の斬撃が飛んでいき、魔法を切り裂く。
次々と火球、水球、風球、土球が飛んでくるが尽く切り裂いていく。
「これだけじゃないですよ!」
踏み込んで右ストレートを放ってくる。
スッと左に少し身体を沈ませて避ける。
そのまま右足でハイキックを放つ。
ズドンッ
少し体制を崩したエンペラー。
クルッと逆回転。
バックスピンキックを放つ。
「震脚」
ズゥゥゥゥゥンッッッ
エンペラーが吹き飛んでいく。
ズダァァァァンッ
建物に身体を打ち付ける。
「やってくれましたねぇ」
話せばするが、動けないようだ。
「私にはなかまが─────」
ズシュッ
横から胸を一突きされるエンペラーの姿が目に入る。
「なぜだ……?」
エンペラーが魔素に変わっていく。
「ははははははははっ! コイツら魔物のくせにホントに仲間だと思ってたのかよ! ははははははははははははははっ!」
「バカですよねぇ!」
「見張りまでしてくれちゃってさぁ!」
「女も食いやがるし、最悪だったんだよな!」
ゾロゾロと出てきたのは盗賊の風貌の男達。
「ここは俺達の街だ。あぁ。入りたいなら女置いてけ」
魔物以上の悪が立ち塞がった。
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