第2話


 もう全部、嫌になった。


 何一つ不自由なく生まれたはずなのに。


 もらえるものは全てもらい、この世の全てが自分に与えられて当然だという態度に。


 それが間違っているのだとは誰一人として教えない世の中に。


 ただひとつ、周りを見れば自分で気づけたはずなのに。


 それすらしなかったことに。


 なのにまだ、自分が可哀想だと思っていることに。


 自分だけでは生きていけないのに。


 たった一人の存在だけは否定しようとすることに。


 それなのに。


 いなくなったら


「ひどい」


 ということに。



 いてもないくても


「ひどい」


 というその人格に


 ひどいと思ってもどこかで許してしまえている自分に。


 だって。


 それを作り上げたのは世の中なんだから。



 あなたの存在も

 私の存在も

 

 ――すべて世の中が■■■だから。


 じゃあ、だれを憎めば良いんでしょうか。




「なんで、あたしじゃなっかたの?なんで、お姉ちゃんだったの?」


 目を涙で濡らして、なんで、なんで、ひどい、と妹は言う。

 そして、一番言ってはいけないことを思ってしまう。


 ――わたしだって、なりたくなかった。


 それが、言い訳でしかないことを私はよく知っていた。

 天使のように無垢で純真な妹を見るほど、私の心の醜さが浮き彫りになっていく。

 貴女が悪いわけでもないのに。

 それすら、取り繕った綺麗事でしかないことも分かっていた。


 ――なんであんたじゃなかったの?


 そう言えば、無垢で純真で優しい妹はこう言うだろう。


『代われるものならかわりたかった。お姉ちゃんのためにも。なのに、そんな事言うなんて』


 ひどい、と。


 でも、私は知っている。

 すべてを手に入れられて、全て願いが叶う貴女が耐えられるはずもない。


 生きていれば何でも手に入って、無条件に愛されて。

 すべてを取っていた妹に、ひどいと言う資格はないのだと。


 そして、私が手に入れたものは決して、羨ましがられるものではない。


 でも、妹は手に入れたがるだろう。

 そして、やっぱり言うのだ。


『なんであたしなの?なんでお姉ちゃんのままじゃだめだったの?こんなの――』


 ひどい、と。


 すべていった人に、そんな事言われたくない。でも、妹は思っている。私が、全てをもっていた者だと。


「なんでお姉ちゃんだったの……?」


 ――なんであんたじゃなかったの。


 それでも、手にしてしまった。




 

 ――すべて世の中が理不尽だから。





 

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真実を知る者 るんるん @koguma1105

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